リコーダーのサークルで今練習中の曲の中に、16世紀フランスの作曲家 Pierre Passereau ピエール・パセローの "Il est bel et bon?" という曲があります。原曲は歌詞のついたシャンソンで、これをリコーダー四重奏に編曲した譜面の邦題は「私のいい人」となっています。原題を直訳すると「彼はイケメンで性格がいい?」といった感じなので、「私のいい人」という邦題は、私のような昭和おやじには演歌の某曲を強力に連想させる点と、「イケメン」に当たる bel が訳されていない点を除けば、ほぼ問題なさそうです。それにしてもついつい「雨雨」とか言いたくなるんですよねぇ。
ところで前述のとおりこの曲はもともと歌詞がついているのですが、リコーダー用の譜面には歌詞はついていません。これまでは曲をさらうのでいっぱいいっぱいで全く気にしてませんでしたが、やや余裕が出てきたので「これってそもそもどんな歌なんだろう」と思い、ネットで検索してみると、小杉元雄氏の仏和対訳がヒットしました。この対訳から、ここには和訳だけを引用します。
うちの亭主はお人好し
うちの亭主は男前でお人好し
同じ地方の二人の女が話している
御亭主はいい人なの?
うちの人は怒ったりぶったりしないのよ
家の仕事はなんでもするし
にわとりにえさもやる
おかげで私は楽しいことができるわけ
にわとりの鳴き声がまたおかしいのよ
コケット、コケット(浮気女)だって
何の意味かしら?
「何の意味かしら?」って、奥さ〜ん(笑)楽しいことができるんでしょ?(笑)しかも日本には瓜子姫のお話のように「鳥が鳴いて悪事をバラす」という伝承がありますが、彼の国にも同様な心意があるらしい・・・まあそれはおいといて、この歌詞の内容から原題の il(彼)は話者の夫をさすのであり、原題 Il est bel et bon は「うちの亭主は男前でお人好し」という意味なのであることがわかりました。
しかしそうだとすると、例の譜面の邦題「私のいい人」というのはちょっとどうなんだろうか?と思えてきました。「雨雨」じゃないけど(あ、ほんとの曲名は「雨の慕情」です、念のため ^^;)「私のいい人」という時はふつうは自分の夫「じゃない」人をさすのではないかと思うのですよ。「私のいい人」というと、少なくとも私のような昭和おやじは「そこはかとなくいけない・どことなくあぶない」感じを抱いてしまうのでありますね・・・まあ確かにこれはいけないあぶない歌らしいのではあるけれど・・・と考えているうちに、私の妄想スイッチが入ってヒラメキました。ひょっとするとこの「私のいい人」という邦題は「誤読」によって偶然生まれたのではないだろうか!?