最近読んだ本:『1960年5月19日』(日高六郎編 1960 岩波新書青版395)
 書名の「1960年5月19日」は、1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約とともに結ばれ在日米軍の駐留を可能にした日米安全保障条約に、日米共同防衛の明文化、在日米軍の配置・装備に関する事前協議制度の導入などの改定を加えた新安保条約の国会承認をめぐり、当時の岸信介内閣が衆議院の特別委員会と本会議で強行採決を行った日です。この日の前後に起こったデモ・スト等一連の大規模な安保改定反対運動は一般に「60年安保闘争」と呼ばれています。
 本書は主にこの「60年安保闘争」、すなわち反対運動の経緯と内容について書かれたもので、新安保条約の内容や政府側の主張などは安保闘争の叙述に必要な場合・必要な内容に限って触れられているだけですので、この一冊で60年安保改定問題の全体像をつかむことはできません。「あとがき」にはこの点について次のように述べられています。

「 1960年5月19日は、日本の大衆運動の歴史のなかで、象徴的な意味をもつ日付となった。戦前戦後を通じて最大の規模となった国民運動は、この日を契機に展開された。もちろん足かけ2ヵ年にわたる安保条約改定反対闘争の蓄積こそが、この日以後の一大国民運動を準備したことはいうまでもないが、同時にこの日をきっかけに、運動は保守政権の専制独裁に反対する民主主義擁護闘争としての要素を強く加え、5月・6月、日本をゆり動かしたのだった。『1960年5月19日』という書名は、5月19日以後の運動だけに力点をおいて、「安保改定反対・民主主義擁護」の闘争を評価すべきだと考えてつけられたものではない。前後2年間にわたる闘争を象徴する日付として、5・19を歴史のなかに刻印したかったということにつきる。」(p.257)

 本書の内容を概観するために目次を転載します。本書の目次ページには大きな章立てしか載せていませんが、それでは本書の内容を伺うには大まかすぎるので、その下のレベルの見出しと小見出しも加えました。

前史
1 戦後日本の支配過程
戦後日本の国家と国民/日本の官僚制と官僚政治家
2 戦後日本の抵抗運動の過程
戦後の「自然状態」と私生活主義/戦後の民衆運動の構造
3 5月19日まで
5月19日以前の安保闘争の概略/安保改定の問題点/
※本章の末尾に1960年1月19日締結、6月23日批准交換・発効した新安保条約と、それに関する交換公文、さらに改定前の安保条約の前文が掲載されています。

I  5・19と議会政治
5月19日/議会政治/院内多数を支えるもの/岸信介の行動原理―官僚政治家の典型―/与党内の反対派/野党と「院外大衆」
※本章の末尾に「新安保条約賛否議員一覧表」が掲載されています。表のタイトルからは賛成した議員と反対した議員に分けて対照させた表が想像されますが、実態は選挙区ごとに議員名を列挙し、それぞれに賛成と反対を表示したものです。ただし衆議院本会議で行われた採決は投票ではなく起立採決によって行われ、欠席議員も多かったため、本表では「個々の出欠賛否は正確を期しがたい。」としながらも、自民党議員は「賛成」と見なし、特に不参加を明らかにした自民党反主流派と野党の欠席議員を「反対」としています。

II  市民は起ち上がる
市民は起ち上がる/新しい組織/動いたものと動かなかったものとのあいだ/学者・研究者の動き/「安保批判の会」/政党・組合と市民組織

III デモとスト
「空前のデモ、国会を囲む」/デモと職場/国民会議と全学連主流派/6・4ストの反響/6・15ストと6・22スト/企業別組合とスト

IV  ハガティ事件とアイク招待中止
5・19運動の国際性/U2機事件/ハガティ事件/アイク招待取消にいたる経緯/新しい外交の可能性/アイク訪日中止と世界の動き

V   海外の反響
先入見の歴史/アメリカと前進基地/自由主義諸国/アジア・アフリカ諸国の反響/ソ連・中国/国際語としての日本人の言葉/外交術の変化/むすび

VI  6・15と7社共同宣言
事件とその背景/右翼の襲撃/警察権力と警察官/学生と全学連/「暴力」と「言論」

VII 「自然承認」以後
「自然承認」から池田内閣まで/〈平和〉と〈民主主義〉/多様性と統一/自主独立の民

あとがき
日録

なお「あとがき」によると、本書の執筆分担は次のとおりです。
前史 1および2 藤田省三
   3     荒瀬豊
I        石田雄
IIおよびIII   日高六郎
IV       鶴見良行・日高六郎
V        鶴見俊輔
VI       荒瀬豊
VII       日高六郎
 
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