段ボール箱一杯のCD・DVD
 以前 DECCA SOUND MONO YEARS 1944-1956 全50アイテム53枚の感想文をアップしたご利益でしょうか、大学オケ時代からの友人の青木医師から段ボール箱一杯のCD・DVDが送られてきました。そのうちいくつかはご恵贈いただけるとのことで、大変ありがたいことです。それ以外は聞いて感想文をアップせよということであろうと思いますが、土浦交響楽団の榊原さんから拝借しているアバド / ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全集のDVDもまだ全部見終わっておらず、宿題が終わらないうちに次の宿題が出てしまったようなもので、もう嬉しい悲鳴です。

<写真が問題の段ボール箱。ご恵贈いただけるものはさっさと取り分けてしまったので(笑)スカスカに見えますが、送られてきたときには文字通りぎっしり詰まっていました。>

 ご恵贈いただいたのはカラヤンのモノラル録音のボックス2つ、クレンペラーの1950年代の録音のボックス、コンヴィチュニー / ライプツィヒ・ゲヴァントハウスのボックス、さまざまな指揮者によるベルリン・フィルの1930年代から1950年代のモノラル録音のボックス、ウィーン・フィルの100年ベストと銘打った6枚組で、まさにピンポイントでツボを抉られました(笑)。さらにベートーヴェンのヴァイオリン‥ソナタのCDが1枚。これたちは後々ゆっくり時間をかけて聞いていきましょう。

 問題はそれ以外の、いずれお返ししなければならないものたちで、これがまたすごいメンツです。
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アバドのベートーヴェン第5番第三楽章(2001年2月 サンタ・チェチーリア音楽院ライブ)
 土浦交響楽団でご一緒させていただいている榊原さんから、アバド指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全集のDVD(2001年2月、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院でのライブ)を貸していただき、今日は2番と5番を視聴しました。
 ところでこのアバドの5番は第三楽章のトリオが終わった後に曲の最初の方まで戻り、トリオを2回繰り返しています。今日一般的にはトリオ終了後は繰り返さず、スケルツォ−トリオ−スケルツォという3部構成で演奏しますが、このアバドの演奏ではスケルツォ−トリオ[−スケルツォ−トリオ]−スケルツォというふうに[ ]内が繰り返され、5部構成になるわけです。これはこの曲と並行して書かれていた兄弟曲である交響曲第6番「田園」の第三楽章と同じ形です。

 交響曲第5番の第三楽章の5部構成説は東ドイツ(当時)の音楽学者ペーター・ギュルケが校訂して1977年にライプツィヒのペータース社から出版されたスコア(通称:ギュルケ版)で有名になったもので、これに基づいて5部構成での演奏や録音もいくつか出ました。ピエール・ブーレーズ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団盤(1968年)はギュルケ版以前に5部構成で演奏していますが、1980年代になってホグウッド、ノリントン、アーノンクール、ジンマンなど、主に古楽系の人が5部構成での録音を残しています。
 ブーレーズ盤がギュルケ版に先立って5部構成を採用していることからわかるとおり、これはギュルケが新たに言い出したことではなく、ベートーヴェンの自筆スコア、初版の版下(印刷用原稿)用に写譜されたスコア、初演のためのパート譜等を丹念に調べると、実はベートーヴェンが最初に意図したのは5部構成であったことが明らかなのです。しかしその後上述の[ ]内の繰り返しが削除され、現在では3部構成が一般的になっています。

 私が拝借しているアバドのDVDの解説には、この演奏でアバドは「ジョナサン・デル・マー校訂の新しいスコアを採用した。」とあります。「ジョナサン・デル・マー校訂の新しいスコア」とはいわゆるベーレンライター版と呼ばれているもので、プロ、アマ問わず今日一般的に使用されているものです。しかしベーレンライター版のスコアは、実は5部構成を斥けて3部構成を採用しているのです。5部構成を採用しているスコアは上述のギュルケ版の他にクライヴ・ブラウン校訂のブライトコプフの新板があり、私は未見ですがイェンス・ドゥフナー校訂のヘンレ版も5部構成を採っているそうです。

<左が5部構成を採用しているブライトコプフ新板のスコアの該当箇所。1番カッコ(1. ad libitum とある)の後にリピートマークがあり、曲の最初の方まで戻り、再びここまで演奏してきたら2番カッコへ入って先へ進む。右はベーレンライター版のスコアの該当箇所で、1番カッコやリピートマークがなくそのまま先へ進むため、全体は3部構成になる。>
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「KARAJAN 2008」を読んで聞いて見て
 オーケストラの友人の榊原さんから「KARAJAN 2008」という豪華アルバムを貸していただきました。「帝王」と呼ばれた伝説的な大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの生誕100年を記念して発刊された縦215mm横281mmのハードカバー、本文47ページ。写真集・年譜(英・独・仏)と著名アーティストらの短い回想文(ミレッラ・フレーニ、バーバラ・ヘンドリックス、クリスタ・ルートヴィヒ、アンナ・トモワ=シントウ、ホセ・カレーラス、ジョセ・ファン・ダム、ジェイムズ・ゴールウェイ、マリス・ヤンソンス、小澤征爾の各氏)が収められ、CD2枚とDVD1枚がついています。CDとDVDの内容は以下の通り。

CD
1. リスト:ハンガリー狂詩曲第5番(CD初出)
2. J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 BWV1043(初出)
   クリスチャン・フェラス、ミシェル・シュヴァルベ(Vn)
3. ブラームス:交響曲第4番

DVD
1. レオンカヴァッロ:歌劇「道化師」より
  前奏曲
  「衣装をつけろ!」(第1幕第4場)
   ジョン・ヴィッカース(T)
   ミラノ・スカラ座管弦楽団
2. スッペ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
3. ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」より 第4場終結
   ゲルト・ニーンシュテット、カール・リーダーブッシュ、ルイ・ヘンドリクス
   ペーター・シュライアー、トーマス・ステュアート、ブリギッテ・ファスベンダー
   エヴァ・ランドヴァ、エッダ・モーザー、リゼロッテ・レープマン(以上歌唱)
4. ブラームス:「ドイツ‥レクイエム」より
  第4曲「なんと愛しいことでしょう、あなたのお住まいは」
   ウィーン楽友協会合唱団
5. チャイコフスキー:交響曲第4番 第3楽章
6. ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 第3楽章
   アレクシス・ワイセンベルグ(Pf)
7. ベートーヴェン:交響曲第5番

ボーナスCD
1. ベートーヴェン:交響曲第7番より 第2楽章(1962年録音)
2. ヨアヒム・カイザーとの対話〜ベートーヴェンの交響曲全集について(1977年)
  ※ドイツ語
3. ベートーヴェン:交響曲第7番より 第2楽章(1976年録音)
4. リチャード・オズボーンとの対話〜ベートーヴェン交響曲全集について(1977年)
  ※英語
5. ミシェリーヌ・バンゼとの対話〜ブラームス交響曲第2番のスタイルと解釈について(1964年)
  ※仏語、ピアノによるプレゼンテーションつき
6. ブラームス;交響曲第2番より 第1楽章
7. ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」の「春」より
  第1楽章のリハーサル
  第1楽章
   ミシェル・シュヴァルベ(Vn)

以上、演奏はDVDの1.(ミラノ・スカラ座管弦楽団)を除いてベルリン‥フィルハーモニー管弦楽団。指揮は言うまでもなく全てカラヤンです。
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 13:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ワインガルトナーとクナッパーツブッシュ 〜ベートーヴェンの交響曲第8番をめぐって〜
 別の本を探していて「あ、こんな本持ってたっけ」と再発見。往年の大指揮者フェリックス・ワインガルトナーがベートーヴェンの交響曲の各曲の演奏上問題になる箇所を取り上げて自らの対応方法を述べた 'Ratschläge für Aufführungen der Symphonien Beethovens' (1907) その他2篇の英訳本 "On the Performance of Beethoven's Symphonies and Other Essays"(『ベートーヴェンの交響曲の演奏について 他』 Dover Publication, 1969)。 ワインガルトナーがこれを書いたのはもう100年以上前ですが、経験豊かな大指揮者の実践的なアドヴァイスは歴史的な意味も含めて貴重で、数年前に必要に迫られて第6番「田園」の項を読んだ時には「なるほど!」と納得する点もありました。
 今のところ私はベートーヴェンの交響曲というと第5番(5月30日本番)と第8番(6月7日本番)に取り組んでいて、中でも第8番はベートーヴェンの交響曲の中で1番か2番めに・・・あー3番めかも・・・とにかく大好きな曲なので、ワインガルトナー大先生はこの名曲のあそこやあそこをどのようにさばいていらっしゃるのかなと、ぱらぱらとページをめくってみました。

 ベートーヴェンの第8番の第一楽章でしばしば問題になるのが再現部冒頭、小節番号では190小節、練習番号Dからの8小節間。ファゴットとチェロ、コントラバスによって第一主題が全曲中最も強い fff fff はここともう一箇所しかない)で演奏されますが、問題は他の楽器も全て fff で、しかも比較的高い音域で音を伸ばしているので、全員が譜面通りに fff で演奏するとファゴット・チェロ・コントラバスは音量面で他に対抗できず、肝心のテーマが聞こえなくなるのです。

<譜例が問題の8小節間。赤枠で囲ったのがテーマを演奏するファゴット(上)とチェロ、コントラバス(下)。ファゴット、チェロ、コントラバスが束になってかかっても他の楽器の方が人数が断然多いし、楽器の音量自体もトランペットやホルンといった金管楽器にかなわない。ここは緑の丸で囲ったとおり全ての楽器に fff が指定されていて、もし全員がそのとおりに演奏するとテーマはほとんど聞こえなくなってしまう。>
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最近読んだ本:『現代政治学の名著』(佐々木 毅編 1989 中公新書918)
 しばらく前から Facebook をやっているのですが、SNS の世界にも現実の世界同様いろんな方がいて、中にはわりと右寄りというか、嫌韓・嫌中・反朝日・反反辺野古の書き込みをコトとする方々がいらっしゃいます。で、元の書き込みそのものはピンキリながら中には考えて書いていらっしゃるものもあるのですが、それに対するコメントが大抵いけません。思考停止の情緒・感情垂れ流し、ボキャブラリー一杯々々の悪罵の陳列と「どや顔」、仲間ウチでの舐め合いノミ取り毛づくろい等々のオンパレードで、衆人環視中の集団オナニーみたいな劣情紛々たる有様が見るに堪えないこともしばしば。長らく積ん読であった本書を読もうと思ったきっかけは、自分自身がそうした見っともない状態に陥らないよう、現今の社会情勢について「考える」ためのとっかかりを得ておきたいと思ったからです。具体的な問題意識としては、右傾化していると言われる現政権に対する危機感と全体主義への予感がありました。

 ところで、本書を手に取った時に、その出版年次が既に四半世紀前であることから「この「現代」ってのはどれくらいの「現代」なんだい?読んでイマドキの役に立つのかい?」という疑問がなかったわけではありません。確かに本書の出版当時においては9.11や3.11、今日のような日本と中国・韓国との間の緊張関係や ISIS による無差別的国際テロといった事態は想定されていませんでしたから、2015年の今日にこの書名で一冊を編むとしたら、ひょっとしたら国際テロに関する増補がなされるかも知れません。しかしそれ以外の点においては、本書で紹介された15冊は今日でも十分に「政治について考え、判断するに際して生き生きとした知的刺激を与えてくれる作品」(「編集にあたって」p.ii)でした。
 本書には政治学に関する古今東西の著書15冊が取り上げられ、それぞれの内容がコンパクトに紹介されています。その性質上最初から最後まで順に通読しなければならないものでもなく、全部読めば「現代政治学」が系統的・網羅的に分かるというようなものでもありません。私自身も読んでいて面白かったものもあり、つまらなかった=今読まなくてもいいやと思ったものもありました。巻頭の「編集にあたって」に、本書で扱った15冊がどのような問題意識で選ばれたのかが書かれていますので、自分自身改めて確認する意味で、ここに書き出しておきます。なお本書での配列順はこのとおりではなく、概ね出版年順(厳密ではない)です。

《政治とはいかなるものであるか》
・ウェーバー 『職業としての政治』(1919年)
・アーレント 『人間の条件』(1958年)
・モーゲンソー 『国際政治:権力と平和』(1948年)

《民主主義とは何か》
・ダール 『ポリアーキー』(1971年)
・ローウィ 『自由主義の終焉』(1969年)

《民主主義と人間的制約》
・ウォーラス 『政治における人間性』(1908年)
・リップマン 『世論』(1922年)
・ラスウェル 『権力と人間』(1948年)

《エリート・権力・正統性》
・ミヘルス 『政党の社会学』(1911年)
・ラスウェル 『権力と人間』(上掲)
・メリアム 『政治権力;その構造と技術』(1934年)
・ローウィ 『自由主義の終焉』(上掲)
・ハーバーマス 『後期資本主義における正統化の諸問題』(1973年)
・ハイエク 『隷従への道』(1944年)
・ロールズ 『正義論』(1971年)

《日本での議論の原点》
・丸山真男 『現代政治の思想と行動』(1956・57年(旧版)1964年(増補版)1982年(追補))
・辻清明 『日本官僚制の研究』(1969年(新版))
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