J.S.バッハ「音楽の捧げもの」のケーゲル盤
 バッハの器楽作品の中で、私はこの「音楽の捧げもの」にはあまり注意を払ってきませんでしたが、ヘルベルト・ケーゲル(1920-1990)という旧・東ドイツの指揮者による演奏ということで購入。20世紀の音楽を得意とするこの人の演奏には特色のあるものが多く、以前から注目しています。

<私が購入したのは写真にあるとおり国内盤。ヘルベルト・ケーゲル指揮ライプツィヒ放送交響楽団他による演奏で、Weitblick SSS0060-2。輸入代理店は東武ランドシステム(株)。日本語帯と許光俊氏の日本語解説付き。>

 私がこれまでに聞いている「音楽の捧げもの」はカール・リヒターがオットー・ビュヒナー(Vn)、オーレル・ニコレ(Fl)他と録音した1963年のアルヒーフ盤と、ラインハルト・ゲーベル率いるムジカ・アンティクァ・ケルンによる1979年のアルヒーフ盤で、前者はモダン楽器、後者はピリオド楽器による演奏という違いはありますが、いずれも清く正しい原典版準拠の演奏です。これに対して今回のケーゲル盤は Neufassung: Hermann Börner(ヘルマン・ベルナーによる新版)とあり、曲順も楽器編成も新旧のバッハ全集などの原典版とは全く違うもの。とりあえずその中身を紹介いたしますと、こんな具合。なお( )内は新バッハ全集の曲番号です。

1   (I/1)      3声のリチェルカーレ(サンスーシ宮のジルバーマン製フリューゲルピアノフォルテ)
2   (III/2)    2つのヴァイオリンのための同度のカノン (Vn, Viola da Gamba)
3   (III/1)    2声の逆行カノン (Oboe d'amore, AltFl)
4   (III/3)    反行による2声のカノン (フラウロイトのジルバーマン製オルガン)
5   (III/6)    フーガ・カノニカ (Fl, Oboe d'amore, Fg)
6   (III/7)    王の主題による無限カノン (Viola d'amore, Viola da gamba, Vc, Cb)
7   (II/1-4)  トリオ・ソナタ (Fl, Vn, Vc, Cembalo)
8   (III/4)    拡大と反行による2声のカノン(パウル・デッサウ編曲)
9   (III/8)    無限カノン(パウル・デッサウ編曲)
10 (III/5)    諸調を経過する2声のカノン(パウル・デッサウ編曲)
11 (III/9)    2声のカノン(パウル・デッサウ編曲)
12 (III/10)  4声のカノン(パウル・デッサウ編曲)
13 (I/2)      6声のリチェルカーレ(アントン・ウェーベルン編曲)
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リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く:2.火の危機(火の消えた街)
 本ブログ上で「リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く」というプロジェクトが進行中、というか、長ーい中断をはさんで時々思い出したようにぽっつらぽっつらと進んでおります(まだ2回目ですが)。リヒャルトのオペラ全15作を作曲順に聞いていくというこのプロジェクト、ベースノートはこちらで、第1回の「グントラム」はこちらです。で、今回は第2回「火の危機(火の消えた街) Feuersnot」なのですが、ベースノートのアップが今年の3月3日、第1回の「グントラム」のアップが3月7日、そして第2回の今回が11月ですよ。この半年に1作、1年で2作というペースだと、15作品聞くのにはなんと7年半かかるという長期プロジェクトになる計算・・・。これからそんなにブログ続けてられるのか?という自分へのツッコミも含めて、もうちょっとペース上げたいところではあります。
 しかし前回の「グントラム」と今回の「火の危機」の2作品については少々事情がありまして、まず両方ともマイナーな作品であるために歌詞対訳が手に入らなかったことに加えて、「グントラム」については録音がまさかの改訂・短縮版だった上、リヒャルトのワグネリアンからの転向に関する関連資料を探したり英語読んだりしたために時間がかかったし、今回の「火の危機」についても、実は関連資料を探したり英語読んだりしなければならないトピックがあったのです。「サロメ」とか「エレクトラ」といった世間一般に知れ渡っている作品ならおそらくこんなことしなくて済むだろうから、ペース上がると思います。

<写真は「火の危機」のCD。紙ジャケットは他の作品と同じく簡潔なものですが、CDの方にはドイツ・グラモフォンの黄色いマークの下にオレンジ色の帯状の部分があり、白抜きの字で Deutschlandradio Kultur と表示してあります。ドイツ・グラモフォンの自前の録音ではなくRIAS(Rundfunk im Amerikanischen Sektor:アメリカ軍占領地区放送局の略称。東西ドイツ併合後は Deutschlandradio に改組)が1978年に録音したものを使用しているためこの表示があります。>
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| リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く | 09:24 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
筑波海軍航空隊記念館とその周辺
 「筑波海軍航空隊記念館」(左は開館時のポスター)はJR常磐線の友部駅から南に2kmほど行った「県立こころの医療センター」の敷地内にあります。戦争関係の記念館が病院の敷地内にあるのは不思議ですが、実は順序としては逆で、病院の方が筑波海軍航空隊の跡地に作られたのです。

 ここはもともと大正7(1918)年に農林省(当時)の友部種羊場として開かれた所で、その後茨城県種畜場、日本国民高等学校として使われた後、昭和9(1934)年に霞ヶ浦海軍航空隊友部分遺隊が置かれ、練習機による操縦基礎教育を開始しました。その後友部分遣隊は昭和13(1938)年に筑波海軍航空隊(以下「筑波空」)として独立し、この年に司令部庁舎(ポスターに移っている建物で、現在記念館となっている)が完成します。
 筑波空は1945(昭和20)年の敗戦により解体されましたが、跡地と建物等の施設は旧制水戸高等学校、宍戸中学校、茨城師範学校に転用された後、昭和35(1960)年に茨城県立友部病院(現・茨城県立こころの医療センター)が開設されて現在に至っています。

<写真は昭和22年頃の筑波空跡地の空中写真。直角三角形と長方形などが組み合わさった白い図形状の部分は訓練用の滑走路で、大部分が現在も道路として残っています。筑波空はこの滑走路の左上側に展開していて、司令部庁舎を含む建物群が写っています(筑波海軍航空隊記念館のガイドブックから転載)。>

 県立友部病院の管理棟等に利用されていた筑波空の司令部庁舎は、県立こころの医療センターが平成23(2011)年に新病棟に移転した後も取り壊されず、敷地内にある号令台や供養塔等の筑波空関連の施設と一緒に残されました。またセンターの敷地の周囲には地下戦闘指揮所跡(土・日・祝日のみ公開)、無蓋掩体壕跡(見学不可)があり、当時の滑走路も道路になって利用されていますし、さらにJR水戸線の宍戸駅方面から開かれた「海軍道路」とその記念碑も現存しています。この一帯には筑波空に関連する戦争遺跡が多く残っているのです。

 ここが筑波空の遺跡として注目されるきっかけとなったのが平成25(2013)年12月21日に公開された映画「永遠の0」。「ALWAYS 3丁目の夕日’64」(平成24(2012)年1月21日公開)のロケでこの旧・司令部庁舎を使ったことがあった山崎貴監督が、「永遠の0」の撮影に当たって、作中の主要人物の宮部久蔵の実際の職場であった筑波空の旧・司令部庁舎でロケ(平成24(2012)年6月)を行い、それがきっかけとなって旧・司令部庁舎が「筑波海軍航空隊記念館」として公開されるに至ったのです。オープンは映画「永遠の0」公開初日の前日の平成25(2013)年12月20日。理由や事情は承知していませんが、今のところ平成27(2015)年3月31日までの期間限定公開の由。管理運営は筑波海軍航空隊プロジェクト実行委員会です。

 上述のとおり筑波空の前身は霞ヶ浦海軍航空隊の友部分遣隊でしたが、その本隊があった阿見町には航空隊内に置かれた予科練(海軍飛行予科練習生)の遺品展示を中心とした「予科練平和記念館」(平成22(2010)年2月オープン)があり、私も見学して、展示された「実物」の迫力に圧倒されました。
 しかし「予科練平和記念館」の建物は新しく建てられたモダンな建物です。これに対して「筑波海軍航空隊記念館」はその建物自体からして「実物」なわけで、これはぜひ見たい!しかも来年3月いっぱいまでの期間限定ですよ。早く行かなきゃ!
 というわけで、2014年10月29日(水)に、見学に行ってきました。
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| 地域とくらし、旅 | 14:12 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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