最近読んだ本:『背信の科学者たち(W.BROAD, N.WADE著 牧野賢治訳 化学同人 1988)』
 中学生の頃だかに読んだ岩波新書の、たぶん確率か何かに関する本の一節を今でも覚えています。それは何かの試行のまとめの部分に書かれた「結果は「意地悪く」判定した」というフレーズです。この「意地悪く」とは、立証したい仮説を支持するとも支持しないとも取れる結果は仮説を支持しないと解釈する、ということで、平たく言えば「疑わしきは被告人の利益に」みたいな感じですかね。中学生の私はこの「意地悪く」という表現が大変気に入って、これぞ科学の真髄!と感動したものでした。そして当時の私が描いていた科学者像はというと、苦労して苦労してようやく得られた実験の結果を今度は徹底的に疑って疑って、意地悪く意地悪く解釈して、それでもなお疑いきれないもの、叩いて叩いて削って削ってなおも厳然と残るもの、それをおもむろに取り上げて「ごらん、これが真実だ」と静かに差し出すという――くあぁーかっこえぇ〜!(笑)ま、そういうものに憧れる年頃って、ありますよね。

<写真の左は今回読んだ『背信の科学者たち』。本来はカバーがかかっているのでしょうが、図書館で借りた本なのでこんな姿です。右は数か月前に読んだ『論文捏造』(後述)。付箋がいっぱい入ってます。『背信の・・・』にも付箋をいっぱい入れながら読みましたが、図書館に返すので全部取りました。>
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清華寮(続報)と切支丹コース
 ふと思い立って、1年3ヵ月ほど前に本ブログで報告した東京メトロ茗荷谷駅近くの廃墟「清華寮」を起点に、小日向から茗荷谷界隈を1時間ほどさまよってみたら、また濃い物件に出会いました。

  今回は立ち回り先の地図を付けました。少々考えるところがあって、ベースの地図には現代のものではなく、明治16(1883)年測量・明治19(1886)年製版の参謀本部陸軍部測量局作成の五千分一東京図を選びました。これは近代的な三角測量によって製作された東京中心部の最初の大縮尺図で、現在一般に市販されている大縮尺の地形図は一万分一なので、現行の地形図より詳しいのです。しかもこの時期は建物が混んでいないので地図上で地形がわかりやすいし、またこの地域の道路網は東京メトロ丸ノ内線の敷設に関するものを除いては大きな改変を受けていないので、現況と引き合わせるのも難しくありません。そして今回この地形図をベースに選んだ最大の理由は、この地域にたくさんある坂のいくつかに名前が入っていることです。この坂の名前が今回の散歩の大きなポイントなのです。
<クリックすると大きくなりますが、一回のクリックで十分大きくならないときはもう一度クリックしてみてください。>

 地形図を出したので、大まかにこのあたりの地形の説明をしておきましょう。図の全体を見ると、図の左やや上から横へ走り向きを変えて図の右下へ走る、等高線の束で縁取られた地形が目に入ります。これが茗荷谷という谷で、この谷をはさんで図の左下側が小日向茗荷谷町などを載せる小日向台地、図の右上側が竹早町や春日通りを載せる小石川台地です。つまり元々は一塊の台地であったのが谷によって断ち切られた形になっているので、どちらかの台地からもう一つの台地へ行こうとすると、どうしても一度坂を下って谷に下り、また坂を上らなければなりません。それでこの谷の両側には坂、それも結構な急坂が多いのです。

 梅雨の晴れ間の6月21日(土)の夕方5時前に、東京メトロ茗荷谷駅から歩き出しました。地図では左上の楕円で囲んだ所が現在の茗荷谷駅です。ここから細い道を南下して、赤下線を付けた獣医黌(原図は旧字・右書き)の脇を通ります。今は拓殖大学がある所です。その少し先の一番低くなったところが茗荷谷の谷底で、そこから等高線の束で表現された崖の斜面をへずるようにして小日向台地の上に出た所に「清華寮」の門があります。清華寮は昭和2(1927)年に建てられたので、当然のことながら明治の地図にはありません(桑畑と普通の畑になっている)から、地図には赤でおおよその範囲を示しました。実際の敷地は長方形ではなく北側の崖に沿って張り出した三角形のようですが、その辺は、まあ、ね(笑)。
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| 地域とくらし、旅 | 19:57 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近読んだ本:『造形感情』(今 和次郎 1952 早稲田大学出版部 早稲田選書)
 今和次郎(こん・わじろう)の名を知る人はあまり多くないのではないでしょうか。本書の「著者略歴」を転載すると「明治二十一年青森県に生る。東京美術学校図案科卒業。建築学専攻。早稲田大学教授、東北大学講師。主なる著書――日本の民家、考現学、住生活、服装研究、家政のあり方」ということになります。私が柳田國男の線から日本の民家研究者としての彼に、また赤瀬川原平・藤森照信の線から考現学の創始者としての彼に近づいたのは「今和次郎 採集講義展」を見た記事に書いたとおりですが、例によって「つちうら古書倶楽部」の本棚を眺めていたら本書を見つけました。昭和27(1952)年の出版でもともと紙質がよろしくないのと、おそらく元の所有者が長らく本書を左手で持って読んでいたためでしょう、カバーの背中と背表紙が大変傷んで、しかも汗や皮脂がしみ込んで変性しているのか、現在も崩壊が進んでおり再生不能です。幸い背中を固めている糊は持ちこたえているので本としての形は保持していますが、内容はともかく形態的にはもはや商品価値がないと言わざるを得ず、本書の最期は私の書棚で看取ってやることになりますね。

<写真はカバー付きの状態。向かって右側の背の部分が傷んでいるのがわかります。早稲田選書という叢書は現在は出版継続していないようですが、カバーの表見返しに「刊行のことば」がありますので、参考のため転載しておきます。
「刊行のことば
 早稲田大学は、この秋創立七十周年を迎える。そこで記念事業の一環として、この「早稲田選書」の刊行を企てた。学園の教授陣を動員し、政経・法・文・商・理工等のあらゆる部門を網羅し、学術書・教科書・一般啓蒙書・教養書等々、ヴァライティを豊かにして逐次刊行する予定である。大学における研究と思索の成果をひろく世にわかち、文化の興隆と発展とに寄与することを念願とする。(昭和二十七年十月)」>

 なぜ本書を購入したかと言うと、私がこれまで見ていた民家研究者と考現学者という姿ではない、造形者としての今和次郎の姿が本書からうかがえるのではないかと思ったからです。上記の略歴からもわかるとおり今はもともと東京美術学校(現・東京芸術大学美術学部)図案科を卒業しており、当然造形者としての顔も持っているはずなのに、彼の「作品」で現存しているのはもっぱら著書ばかりで、造形作品は数少ない、というか、ほとんどないらしいのです。
 藤森照信氏の『建築探偵の冒険・東京篇』(筑摩書房1986・ちくま文庫1989)によると、今は「本業は早稲田の建築の先生ということになっていたが、家の設計や物のデザインに一度も手を染めていない。美術学校(芸大)の図案科(デザイン科)をトップで出ながら、なぜか一度も物を造らない幻のデザイナーとして知られていた。」(ちくま文庫版p.34)というので、私が見ることを得た今の造形作品はこの『建築探偵の冒険・東京篇』に出ている渡辺邸(旧・スリランカ大使館邸)関連のものだけです。しかも考えてみると建築関係のデザインというものは施主の注文があって初めてできるもので、じっさい渡辺邸の場合も施主である渡辺甚吉の「チューダー様式で揃える」という意向が最初からあったため、出来上がった作品に今らしさがありありと現れているかというとそんなことはないわけです。そして渡辺邸関連の物件以外に今が残した文章以外の作品は、彼の著書のあちこちに見られるスケッチや図表くらいしかありません。そこで私は今の造形者としての目つき顔立ちを見ることはおそらくできまいと、半ば諦めていたのです。そんな中で出会ったのが本書だったので、商品としては100円(税別)でも私にとっての価値はとてもそんなもんじゃない。寧ろ私にとって貴重な本がこんな安値で手に入るというのが古書のありがたさです。ちなみに本書は筑波大学図書館には収蔵されていませんが、同館所蔵の『今和次郎集 第9巻 造形論』(ドメス出版 1972)に収録されているようです。
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| 本のこと | 22:24 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
自分が出た演奏会:ピアッツァ・アルテ音楽教室発表会2014
 一昨年から加わっているピアッツァ・アルテ音楽教室の発表会が、今年も6月7日(土)・8日(日)の2日間にわたって開かれました。私は7日は茨城大学管弦楽団のサマーコンサートのトラに行っていたので、8日の方にバード・リコーダー・アンサンブルのメンバーとして参加しました。一昨年前の発表会2012と、昨年のピアッツァ・アルテ音楽教室25周年記念発表会に続いて3回目の参加です。

ピアッツァ・アルテ音楽教室発表会2014
日時:2014年6月7日(土)13:00開演
2014年6月8日(日)12:00開演
場所:エスカード生涯学習センターホール(茨城県牛久市)

 今回のバード・リコーダー・アンサンブルはJ.S.バッハのオルガン曲「レグレンツィの主題によるフーガ」BWV574のリコーダー四重奏へのアレンジと、ベートーヴェンの音楽時計用の作品と思われる小品の、やはりリコーダー四重奏のためのアレンジを演奏。私はバッハではバスリコーダーを、ベートーヴェンではソプラニーノリコーダーを担当・・・なかなかチャレンジングな持ち替えだ(笑)。
 フーガは本番前のリハーサルで通らず、4人で別室で秘密の練習を行い、本番はなんとか止まらずに最後まで通り、めでたくベートーヴェンまで演奏することができました。いやースリリングだこと・・・

 例年通り今回の発表会も7日(土)は16の個人・団体、8日(日)は22の個人・団体が参加し、ジャンルも独唱、合唱、シャンソン、ゴスペル、リコーダーアンサンブルと多岐に亘り、それぞれ特色のある発表で楽しかったです。その雰囲気に乗せられて、私も次回はアンサンブル以外にソロでも参加してみようか、などと妄想しちゃいました。
 しかしこれだけの数の個人・団体を指導して発表会に参加させるピアッツァ・アルテ音楽教室の堀部先生の手腕と守備範囲の広さ、おそるべし!
| 自分が出演した演奏会 | 21:53 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
自分が出た演奏会:茨城大学管弦楽団第38回サマーコンサート
 昨年の茨城大学管弦楽団サマーコンサートは日程が合わなくてお断りしてしまいましたが、今年は土浦交響楽団の定期演奏会から2週間ほど間があいているので出演できました。

茨城大学管弦楽団 第38回サマーコンサート
日時:2014年6月7日(土)14:00開演
場所:ひたちなか市文化会館 大ホール(茨城県ひたちなか市)
曲目:「コリオラン」序曲(ベートーヴェン)
   抒情組曲(グリーグ)
   交響曲第2番(シベリウス)
    アンコールとして
   ノルウェー舞曲より第2曲
指揮:松元 宏康
 
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| 自分が出演した演奏会 | 21:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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