土曜日は夜の練習で、ドヴォルザークの交響詩「真昼の魔女」とグリーグのピアノ協奏曲。
ドヴォルザークは「真昼の魔女」をライトモチーフを使って書いており、演奏前にお客様向けにライトモチーフの簡単な説明と何箇所か取り出し演奏をすることにしたので、その取り出し箇所の確認と試奏を行いました。実は今回の演奏会で取り上げるまでその存在すら知らなかった曲でしたが、分析していくといくつものライトモチーフを縦横に駆使し、母親の感情の起伏や心理を、執念深くといっていいほど緻密に描いています。この曲の仕掛けについて語ろうとすれば、間違いなく一時間やそこらはかかります。取り出し演奏を入れながらやれば、ちょうどバーンスタインの Young People's Concert の1回分になるんじゃないだろうか。すごい曲ですよ。
グリーグの協奏曲は、この日が本番のピアニストとの2回目の合わせでした。1回目はお互いなかなかいい感じでできたのですが、それからしばらく間が空いたせいか、この日はお互いもうひとつしっくり来なくて、私もピアノの走句の後にオーケストラを入れるタイミングがうまく取れなかったりして、不完全燃焼でした。練習が終わってからピアニストと「こういう日があって、明日(日曜日も合わせを予定している)があって、それで本番を迎えるので、前向いて行きましょう」と話しました。ベテランのソリストだったらこちらに合わせて何とでもしてくれるのかも知れませんが、オーケストラとの共演経験があまりない若いピアニストとアマチュアの指揮者だから、お互い一生懸命力を尽くして作り上げていかなければならないし、その過程と緊張感がまた楽しくもあります。気分は「戦友」です。
翌日曜日は午後から夜にかけて、最後の半日練習。演奏時間を測りながら全曲通し主体で…と思っていましたが、やはり最後となるとこちらも奏者もテンション上がってますから、私からも注文つけるしオケからもここはどうなんだと質問が来るし、どうしても譜面どおりできないのならこう変えて!といったやり取りもありました(お客様には内緒ね ^^;)。ピアノ合わせも昨日よりはうまくいき、これなら本番何とかなりそうだな、という感触は得られました。本番はいい意味での緊張感を持っていけると思います。
アンコール曲とメインの交響曲もやりました。アンコール曲は秘密ですが(笑)、プログラムの3曲とは何から何まで全然違う曲です。「青い感じで」とお願いしていい感じになりました。
メインのドヴォルザークの交響曲第7番は、第8番や第9番「新世界より」に比べるとあまり演奏されません。8番・9番は内容が明確で「こうやれば間違いない」という基本線がありますが、この第7番はそこまで内容が明確ではなく、かといって譜面をなぞって音にすればそれで形になるという曲でもなく、しかしたとえばダイナミクスの変化の細部まで彫琢されているところなどを見ると、ドヴォルザークがすごくシリアスに書いた曲であることは間違いありません。私は第四楽章の第二主題の扱いを提示部と再現部で変えることにして、その練習を時間をとってやりました。少なくとも私が聞いた6種類のCD+1種類の実演ではそういう解釈はしていないので、これは私の独自の解釈ということになります。でもドヴォルザークのスコアでも第二主題のダイナミクスや表情に関して、提示部と再現部で異なった指示がされていて、私の解釈はそこにつけこんで(笑)強調しているので、根拠のない思いつきのようなものではありません。ここから曲の終わりまで、自分の中ではあるストーリーがあるのですが、それは交響曲の場合自分だけが持っていればいいもので、誰にも明らかにしていません。
正直なところ、もっとやっておきたかった、確認しておきたかったという箇所はまだいくつかありますが、ちょっと微妙な問題もあって、このまま本番に持って行くつもりです。予定調和でない、と言えば聞こえはいいが、本番だけが持つ、本番だけに現れる「力」を信じて―。
二日間の練習のおかげで、今日は声かれてる(笑)。