その雪が降っていた午前中に仕事の都合で外に出たら、なぜか頭の中でモーツァルトの「レクイエム」の Rex tremendae majestatis (「恐るべき御稜威(みいつ)の王」)が鳴っていました。威厳に満ちてはいるが曲調としては単調な音楽が、降り続く雪の感じと合っていたせいでしょうか。以前は雪の日というとブルックナーの交響曲第9番第一楽章の第二主題(こりゃまたマイナーな!)を思い浮かべることが多かったです。いずれにしてもせっかくのナマ雪・リアル雪なのに、「♪雪やこんこ あられやこんこ(童謡「雪」)とか「♪雪が激しく降り続ける(高田三郎「雪の日に」)なんかは全く思い浮かびません。
もう雪が降っただけで嬉しくて心が弾むような年でもなく、白ゆえに汚れやすいにも関わらず人からは純白と信じられてしまう雪の心の切なさへの感受性も漸く鈍磨して、ただ単調に降り続ける雪を見ては永遠とか超越的とからしきものを呆然と思うともなく思う、という感じですかね・・・うーん、それ何だか体温低いぞ(苦笑)。
<左:モーツァルトの「レクイエム」より「Rex tremendae majestatis」の一部。冒頭からでなく途中からですが、ピアノ伴奏譜なので曲のつくりが見やすくなってます。要するに女声(譜面の上2段)・男声(中2段)・ピアノ(原曲は管弦楽)の3つのグループがそれぞれ厳格な2声カノンを展開するように書かれているので、威厳に満ちてはいますが曲調の変化はほとんどありません。>
<右:ブルックナーの交響曲第9番第一楽章の第二主題の最初の動機とその確保。やはり音楽のつくりが見やすいよう、ブルックナーの弟子フェルディナント・レーヴェによるピアノ用編曲で示します。左手のゆったりとした歩み、右手の中声部の民謡のような穏やかな動き、上声部の息の長い歌。単純で展開も変化もしないが、美しい。>