経理部長の愚痴 〜ワタクシ篇〜
 先日「お仕事篇」を書いてみたら何となく気分がさっぱりしたので、二匹目のドジョウを狙って「ワタクシ篇」も書いてみる(笑)。

 「お仕事篇」から察せられるとおり、昨年の会社は給与の支払もままならぬ状態だったから、私の年間の手取り額は住宅ローンの支払額にも満たず、当然暮らしは楽ではなかった。貯蓄を取り崩し親類縁者の援助も受けたし、もちろん支出も切り詰めた。
 たとえば車への給油。以前はだいたいいつも満タンにしていたが、昨年はガソリンの値段に敏感になったし、給油するときは満タンでなく定額で給油するようにした。こうするとガソリンが高いときは少しだけ入れ、安いときに多く入れることになり、平均単価が抑えられる。財形や従業員持株会でよくやる「ドル・コスト平均法」の応用だ。ただし高くて少ししか入れられないとすぐ空になり、結果として高いときほど頻繁に給油するから、実際の節約効果はそれほどでもないかも知れない(汗)。根本的には車に乗らなければいいわけだが、通勤が車なのでそうそうは抑えられない。せめてもの自衛策である。たまに金回りのいい時に満タン入れると、それだけで贅沢をしたような気分になれる。

 ところで、金が思うように使えないと、おもしろいことに(と言ってしまってよいかどうかわからないが)最初のうちは「今は我慢しよう(状況がよくなったら買おう)」と思っているが、そのうち「別になくてもいいや」と思えるようになってくる。所有欲・消費意欲が減退するのである。以前なら「あ、おもしろそう!」と思ったに違いない本やCDやDVDやいろんなモノに対しても「それを読んでも/聞いても/見ても/手に入れても、それはそのとき楽しいだけで、結局人生や社会がよくなったりはしないじゃないか」と自然に感じてしまう。さすがに若干の葛藤と躊躇はあるものの、結局はそんなものに金使ったってしょうがないや、と素直に気持ちを収められるのだ。求不得苦(ぐふとくく:求めても得られないことによる苦しみ)を合理化によって抑制しているだけとも言えようが、この抑制は対象物を見つめているだけでほとんどオートマチックに発現し、「欲しいけど我慢しよう」というほどの気持ちのざわめきもない。「消費インポ」とでも言おうかね(^^;;;
 そのうち給与の未払い分が入ってきてお金が使えるようになったら消費意欲が猛然と湧き上がってくる(リバウンド?)のかも知れないが、今はまだわからない。実は後述のように自分の楽しみのためにある程度金を使っていたから、自分に限っては激しいリバウンドはないかも知れない。
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経理部長の愚痴 〜お仕事篇〜

 いつもお気楽なことばかり書いているが、今回は愚痴のひとつも書いてみる。昨年はとにかくひどい一年だったのだ。


 私が経理部長として勤めていた会社(半導体製造装置ベンチャー)は一昨年の後半から絶不調だった。仕事が取れず売上がないから、金がどんどん減っていった。金繰(かなぐ)りの基本は「入(い)るを図り出(いず)るを制す」である。「出る」を制するため、会社は昨年1月から給与を2割カットし、希望退職者を募った。退職者の退職金はなんとか工面して支払った。しかし社員の給与が払えない。相変わらず仕事がなく、肝心の「入る」方がなかったからだ。


 そんな中、政府の緊急経済対策に乗って中小企業向けの緊急支援融資の話が出てきた。金はノドから手が出るほど欲しい。しかし当社に仕事がないことを知っているメイン銀行は、すでに貸している金の返済を猶予するのが精一杯で、新しい金は貸せないと言う。従来あまり取引のなかった地元銀行をなかば強引に説き伏せて融資限度枠いっぱいまで借り、一週間遅れで給与を支払った。昨年の5月の初め頃である。給与を満額支払ったのは、これが最後だった。

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| その他のできごとあれこれ | 01:17 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
「女学生」って誰?
 

女学生 以前ちらっと触れましたが、ワルトトイフェルのワルツ「女学生」という曲名は誤訳であろうという件について。
 ワルトトイフェルはストラスブール出身のフランスの作曲家。しかしこの曲の原題は Estudiantina で、スペイン語です。なぜフランスの作曲家の曲がスペイン語の曲名を持ち、しかもそれが誤訳されるに至ったのか、調べてみました。
<図は「現今女学生の遊戯」。本当にこういう曲なのか?ちなみに本論のテーマには全く関係ないが、この二人の女学生の間に角帽をかぶった男子学生の上半身のシルエットが現れている点にも注目すべし!>

曲名がスペイン語なのはなぜ?
 実はこの曲、ワルトトイフェルのオリジナルではなく、 こちらにあるように Paul Jean-Jacques Lacômeというフランスの作曲家の、スペインの旋律による二重唱曲 Estudiantina が原曲で、ワルトトイフェルは出版社 Enoch の求めにより、この曲を Lacômeの他の作品やスペイン民謡とつなぎ合わせて1曲のワルツに仕立てたらしい。つまり、Estudiantina というスペイン語の曲名はワルトトイフェルがつけたものではなく、本歌(もとうた)のそれだったのですね。

Estudiantina って何?
 それでは Estudiantina とはそもそも何なのか。手元の「プログレッシブ スペイン語辞典 第2版」(小学館 2000)に「(伝統的な衣装でセレナーデを歌い歩く)学生の一団」となっていることは以前書きましたが、これだけではあまりイメージがわかないのでネットでググってみたら、面白い記事がありました。これはスペインではなくメキシコの Estudiantina ですが、辞書の訳語ともほぼ合ってるし、Lacômeの曲に歌われていたのもおそらくこういうものだったのではないでしょうか。それにしてもこれ、すごく楽しそうですね!
 というわけで、ワルトトイフェルのこのワルツは、Estudiantina と呼ばれる学生バンドが、同名の曲をはじめスペイン風の曲を次々と演奏しながら流していく、その楽しげな様子をワルツのシークエンスで表現したものと見てよろしいのではないでしょうか。


なぜ「女学生」に?
 ではこの Estudiantina がなぜ「女学生」になってしまったのか。おそらく中途半端にスペイン語を知ってた誰かが、推測を交えて「作曲」してしまったのだと思う。試みにその思考プロセスを辿るならば、多分こうだったのでは。
 1. Estudiante は「学生」という意味である
 2. スペイン語には -ino(-ina)という縮小辞がある
 3. この語は -a で終わっているから女性名詞である
 4. よって Estudiantina は可愛い女の学生、すなわち「女学生」である
 ・・・確かに上の1, 2, 3, すなわち個々の前提はそれぞれ間違ってないんですけどね〜、これが「合成の誤謬」ってやつですか・・・いやいや、本来一語である Estudiantina を、たまたま知っていた Estudiante に引きずられて Estudiante + -ina に分けたところで勝負はついてしまったわけで、「不思議の国のアリス」に出てくる公爵夫人ふうに言うなら、「ええと、その教訓はね ― 『辞書はまめに引け』よ!」
 ちなみに Wikipedia の英語版によると、英語では「学生バンドのワルツ」(Band of Students Waltz)と訳されていて「女学生」なんて誤訳は犯してないのですが、面白いことにアメリカではこのワルツに歌詞がついて Rheingold Beer jingle、すなわち Rheingold (ラインの黄金:え、それって「ニーベルングの指輪」に出てくる、あれでっか?)という銘柄のビールの歌として知られているんですと。

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 22:19 | comments(7) | trackbacks(1) | pookmark |

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