最近読んだ本「偽善の医療」(里見清一 新潮新書)
偽善の医療−表 今は医師をやっている高校のときの同級生が紹介してくれた『偽善の医療』(里見清一著 新潮新書 2009年3月)を読みました。
 まず思うのは、元同級生の彼も言ってますが、ちょっとこのタイトルは良くないですね。何となくスキャンダラスな暴露本・告発本みたいな内容を連想しませんか? 告発本的な面もなくはないし、(偽善ならぬ)偽悪的な調子の表現も多いので、「週刊新潮」のノリでこういうタイトルになったのでしょうか?
 でも私は、この本の力点は単なる告発本よりもう少し別のところにあると思います。
偽善の医療−裏
<表表紙と裏表紙。そう思って見ると帯の惹句も週刊誌風?>


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「水上の音楽」の枯葉進行
ハレ版4 「夏の音楽」で、ヘンデルの「水上の音楽」について「ちょっと古風で切ない感じの和音が多用されていて」と書きましたが、後から考えてみると、その正体は私の大好きな「枯葉進行」らしいのでした。しかも枯葉進行が連続して「枯葉シーケンス」になっている箇所を発見。それは原典版(ハレ版、クリュザンダー版など)の第一組曲(ヘ長調組曲)の第4曲 Andante、ハーティ版なら第5曲のニ短調の曲の終わり近く。いま参考のためにその箇所をハレ版で出し、ツー・ファイブを示してみましょう。
<写真は第一組曲の第4曲 Andante の終わり近く。23小節からのバスラインは(レ)−ソ−ド−ファ−シ♭−ミ−ラ−レ;(ここから音価が半分になって)ソ−ド−ファ−シ♭−ミ−ラ−レ;ソ−ド−ファ−シ♭−シ♭(和音の根音はミ)−ラ;ファ#(和音の根音はレ)−ソと延々と四度で進行し、赤字のようにヘ長調(F: )とニ短調(d: )の II--V--I (--IV) の進行が連続して「枯葉シーケンス」化している。>

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
デリック・クックによる「ニーベルングの指輪」ライトモチーフ集
An Introduction to Der Ring des Niebelungen 来月26日に土浦交響楽団の定期演奏会でワーグナーの「ニーベルングの指輪」から3曲を演奏するのですが、「指輪」といえばライトモチーフ(示導動機)。ライトモチーフとは1小節から3小節程度の短い、しかし特徴的な音型で、基本的には歌でなくオーケストラで演奏され、それが割り当てられた「人物」「(指輪とか)」「できごと(神々の没落とか)」「感情(怒りとか)」等を表します。たとえば舞台上にウォータンがいるときに「ウォータンのフラストレーション」というモチーフが演奏されると、たとえウォータンが 「わしはフラストレーションがたまってるぞー!」と歌っていなくても、彼がフラストレーションを抱えていることが暗示される、という具合です。歌や演技では示されていないことを象徴的・暗示的に表現するのがこのライトモチーフなので、「指輪」をより深く楽しむにはライトモチーフの理解が不可欠であると言われているし、CDやDVDを買うと必ず「ライトモチーフ一覧表」が付いているのです。
<「指輪」ライトモチーフ集 "An Introduction to Der Ring des Nieblungen" ( DECCA 443 581-2 ) 2枚組で193の譜例を140分かけて解説する。>

 しかしライトモチーフをただ一覧表にまとめてあるだけでは、実際にはあまり役に立たないのです。まず楽譜が読めないとダメだし、たとえ読めても読むのがめんどくさいし、たとえ読んでも音として頭に残りづらい。 しかもライトモチーフそのものが(数える人によって違いますが)数十とか百いくつとかある上に、一口にライトモチーフと言っても幕や楽劇をまたいで繰り返し登場するものから数回出て終わりというものまで、その重要性に濃淡があるのに、出てくる順にずらずらっと並べただけの一覧表ではその辺もわからない。さらに、実際に演奏の中で出てくるときにはオーケストラの多種多様な音で出てくるわけだし、調やテンポが変わったり他のライトモチーフと組み合わさって出てきたりするので、聞いてるうちにもうどうでもよくなっちゃうんですね。

 それで思い出すのが「赤尾の豆単」。旺文社から出ていた(今も出ている?)英単語集で、数千語の英単語がアルファベット順に並んでいて、例文もない。昔の高校生はこれを丸ごと頭から覚えたらしい。このアルファベット順というコンセプトをひっくり返した画期的な英単語集が「出る単」こと青春出版社の「試験に出る英単語」で、収録対象を試験に頻出する英単語だけに絞り、それらをアルファベット順ではなく重要度順に並べたもので、私らが受験生の頃はこれがバイブルでした。その後の英単語集は、単語単体ではなく文章やフレーズで覚える方向へとさらにパラダイムシフトしたらしいが、その辺になるとおぢさんはよくわからないよ(汗)。
 要するに、出てくる順にライトモチーフをずらずらっと並べただけの「ライトモチーフ一覧表」は、コンセプトとしては「赤尾の豆単」なわけで、今の世の中にはちょっとそぐわないんじゃないかと。
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 23:29 | comments(12) | trackbacks(0) | pookmark |
夏の音楽
星めぐりの歌CD 今年は5月5日が立夏でしたし、名実ともにもう夏ですね。梅雨の前の今の時期は、夏とは言いながらまだ太平洋高気圧の高温湿潤な気団に覆われてはいないので、陽射し(と紫外線)は強くなってきているけれど、しばらくの間はさわやか。大陸から冷涼で乾燥した風が吹き込み始める秋の初めとならんで、日本の一年の中で最も快適な時期です。
 「冬の音楽」「春の音楽」と書いてきたので、この際「夏の音楽」もやっちゃうかんね(笑)。まぁ例によって交響曲が多いようだけども。

<写真の「宮沢賢治 メンタル・サウンド・スケッチ 星めぐりの歌」は、宮沢賢治が作詞または作曲またはその両方をした曲を、いろいろなアーティスト(クラシック系ではない)の演奏で集めたコンピレーションアルバム。皆さんいろいろ趣向をこらしていて、それが気に入るのもあり入らないのもあり・・・って感じですが、「宮沢賢治の音楽を聴こう!」と思って聞くCDじゃないことは確か(苦笑)。「星めぐりの歌」は3種類(裕木奈江 & 細野晴臣、近藤達郎、Bruce Cockburn)収録されている。>
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 22:36 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
自分が出た演奏会:東京サロンオーケストラ第37回シンフォニックコンサート
 東京サロンオーケストラが新しい指揮者を迎えて最初の定期演奏会が、5月16日(土)に板橋区立文化会館で行われました。昨年は私がワンポイントリリーフで指揮をしましたが、今年はいつものとおりコントラバス奏者。やっぱり一奏者の方が気分が楽だわ(笑)。

東京サロンオーケストラ第37回シンフォニックコンサート
日時:2009年5月16日(土) 13:00開場 13:30開演
場所:東京都板橋区 板橋区立文化会館
曲目:だったん人の踊り(ボロディン)
   ピアノ協奏曲第2番(ラフマニノフ)
   交響曲第6番「悲愴」(チャイコフスキー)
    アンコール曲として
   組曲「仮面舞踏会」より ワルツ(ハチャトゥリアン)
指揮:野宮敏明
ピアノ:風間優子
(敬称略)

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| 自分が出演した演奏会 | 20:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ヘンデル「アルキーナ組曲」の謎
 4月26日に行われた「土浦音楽院創立50周年記念演奏会」で、ヘンデルの「アルキーナ」組曲を演奏しました。この演奏は日本楽譜出版社(通称「日譜」)発行のスコアに基づいて行いましたが、このスコアと組曲にはちょっと不思議な点がいくつかあるんです。

スコアのタイトル
スコア表紙 まず日譜スコアのタイトル「アルキーナ」ですが、原題は「Alcina」で、イタリア語では「アルチーナ」と発音するのが普通。組曲のもとになったオペラは1735年にロンドンで初演されているので、英語で「アルキーナ」または「アルスィーナ」と呼ばれた可能性はありますが、オペラそのものは当時の習慣に従ってイタリア語で書かれているので、舞台では「アルチーナ」と発音されていたでしょう。ネットで検索しても一般的なのは「アルチーナ」。わざわざ英語読み(たぶん)をタイトルにするなんて、日譜さんお茶目。

スコア裏表紙 <左はスコア表紙、右は裏表紙に貼られたヤマハ池袋店のラベル。ヤマハじゃ「アルチーナ」で通ってるらしい?>

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 00:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
金と銀(キンランとギンラン)

 「この時期の阿見町のフィールド」の続編。キンランを発見した工業団地内の調整池でギンランも発見しました(ここでレハールのワルツ「金と銀」がBGMで流れる・・・つもり)。


ギンラン2<明るく開けた所に咲いているキンランに対して、ギンランは薄暗い木陰に生えている。花もキンランほどは開かないらしい。でもいじけたところがなくすっくりと伸びていて素敵。>

ギンラン









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| 身近な自然 | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
アツミゲシ 通報から駆除まで
アツミゲシ葉  「この時期の阿見町のフィールド」の一枚目の写真にナガミヒナゲシ(オレンジ色の花)と一緒に写っている紫色のケシ。アツミゲシっぽいなぁ、と思いつつ横目で見ながら通勤してましたが、先週末に現地へ行って確認したら、葉の形などからしてやはりアツミゲシでした。
<茎を抱くように付いている粗い鋸歯のある葉がポイント。すぐ右側にナガミヒナゲシの葉が写っていますが、明らかに形が違う。>

駆除後 アツミゲシはナガミヒナゲシ同様帰化植物ですが、厄介なことにあへんの成分を含むため、日本では栽培はもちろん、たとえ野生であっても存在すること自体が許されず、発見したら保健所か警察に通報することになっているらしい。アツミゲシと知ってしまった以上は仕方がないので、週明けの月曜日に土浦保健所へ 通報。翌日の火曜日には駆除されていました。
<右の写真が駆除後。花がほとんど見えないのでアツミゲシと一緒にナガミヒナゲシも駆除されてしまったように見えますが、ナガミヒナゲシは花期がほぼ終わっているので、実になって残っている。>
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| 身近な自然 | 21:16 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ベーコン・・・
 私が子供の頃慣れ親しんだベーコンというと、やや茶色がかって固く締まった肉とこってりと分厚い脂が層になっていて、縁はちょっとチリチリして飴色、塩辛くて冷蔵庫内のヤワな食品には匂いが移ってしまうくらい燻香が高い。発色剤だの増量剤だのといった余計なものは加えず、豚バラ肉を塩漬けして燻煙して、乾燥と塩分で保存性を高めた食肉製品でした。

 いっぽう最近のベーコンは発色剤でピンク色、しっかり燻製せずに燻液(燻製の匂いのする液)に漬けたり注射するので、肉が締まってもいなければ縁が飴色にもなってない。だいたい脂が少ないし、白いところもコラーゲンが主で脂肪分が少ない。柔らかいけど旨味が薄いし、塩分も脂肪分も足りなくて使い勝手がまるで違っちゃう。ベーコンというよりハムに近い気がします。昔のベーコンが鰹節だとすれば、今のベーコンはツナ缶たいなもんで、とにかく似て非なるものですね。
 
 今風のハムっぽいベーコンもそれはそれで使い方があるけど、空炒りすれば塩気と脂がたっぷり出てきて、キノコでも野菜でも一緒に炒めて黒コショウを粗挽きでバリっと一振り、ビールやバーボンのアテが速攻で一丁あがりぃ!みたいな昔風ベーコンは、最近まで行きつけの食品スーパーで扱ってたのに、連休明けてからはその姿が見えません。やばい(汗)。
 柳田國男が「明治大正史 世相篇」だったかで、食物はだんだんと温かく柔らかく甘くなる方向へ変化してきた、みたいなことを書いてましたが、ベーコンも例外ではないようです。ちょっと寂しい。
| 飲み食い、料理 | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
この時期の阿見町のフィールド
 フィールドとは言っても、要するに「昼休みに散歩する場所」のことですが、会社が移転した関係で、昨年から茨城県稲敷郡阿見町が主なフィールドになりました。私の行動範囲内でこの時期に目立つ植物や動物を紹介します。基本的にまっ平らなつくばと違って、地形が台地と谷津田にまたがって立体的に展開するので環境も多様になります。なお、各写真はクリックで拡大します。

ナガミヒナゲシ1 まずは通勤ルートで見られるナガミヒナゲシの群落。つくばでもそうだったように、道路沿いに繁殖しているのをよく見かけます。ところで元気に繁殖してる のはいいけど、一緒に咲いている紫色の花はひょっとしてアツミゲシ?連休明けまで駆除されずにいるようだったら、もう一度調べてみよう。
ナガミヒナゲシ2 こちらは安全な(笑)ナガミヒナゲシだけの群落。逆光に透ける花びらが美しい。ここは道路から3mくらい引っ込んだ、民家の近くの畑脇の空き地。その辺 にいくらでもあるのでわざわざ植えはしないでしょうが、邪魔にもならないし花の時期は華やかでかわいいので放っておかれて増えたのでしょうか。
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| 身近な自然 | 12:08 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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