ハチャトゥリアン「仮面舞踏会」の原作を読んでみた
「仮面舞踏会」全音スコア 来年5月17日(土)に東京サロンオーケストラの定期演奏会でハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」を演奏することになりました。以前この曲を他のオケのトラで演奏したときはとにかく譜面を音にしただけで、曲について思いをいたすということもなく、なんだか薄暗くてしかも躁・鬱の激しい分裂気味の妙な曲だくらいにしか思わなかった(恥)のですが、自分のオケで演奏するとなるとさすがに「妙な曲」ではすみません。この曲はレールモントフの戯曲「仮面舞踏会」のための劇音楽から5曲を選んで編まれたということなので、もっと曲と仲良くなるために当の戯曲を読んでみることにしました。
 ところがこの戯曲「仮面舞踏会」はレールモントフの代表作というわけではないらしく、単行本もないしナントカ文学全集の類にも入っていません。いろいろ探してようやく筑波大学の図書館情報学図書館にある「レールモントフ選集2」(光和堂 1974)に収められていることがわかりました。しかもネットで発見した「現実の仮面性と仮面の現実性 −レールモントフの戯曲に見るロシア社交界−」(木村 崇 1995)という論文*によると、どうやらこれがこの作品の唯一の邦訳(しかも現在は絶版)らしい。これでは原作を読もうと思ってもなかなか難しいわけで、この曲の解説の多くが、戯曲の内容に関しては全音楽譜出版社のポケットスコアの解説にある「妻のニーナが仮面舞踏会でなくした腕輪をきっかけに主人公のアルベーニンが嫉妬し、ついには毒殺するという悲劇」という非常に大雑把なあらすじの範囲を出ていないのも無理はありません。
 この曲に限らず、たとえば「ペール・ギュント」とか「アルルの女」のように大変よく知られている曲でも、その原作を読もうとするとちょっと苦労する、というケースは実はけっこう多いです。音○之○社あたりから「名曲の原作」シリーズなんて出してもらえませんかね〜。(写真は全音楽譜出版社版スコアの表紙)

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「ヴィブラート」という指示
 12月16日の土浦交響楽団第55回定期演奏会のアンコール曲としてブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」を演奏しました。これまでに何回か演奏したことはあったのですが、この機会にスコアも見てみるかと思い立って購入、さっそく見てみたところ見慣れない指示が…。
ハンガリア舞曲第1番冒頭

 図は冒頭の弦楽器セクションを取り出したもの。f はダイナミクスのフォルテ、espr. espressivo ですが、その次の vibrato という指示は今日ではまず見られません。ブラームスの時代にはヴィブラートは指示を必要とする特別な表現手段だったのですね。今では逆に「ここはノン・ヴィブラートで!」と指示されない限りヴィブラートはデフォルトでかかります。しかしいつでもどこでも同じヴィブラートを機械的に脊髄反射的にかけているのでは表現としての意味がありません。ヴィブラートの速さ、深さ、かける箇所などを意識的にコントロールして表現手段としてもっと活用してみたい気がします。

とは言いながら、既にヴィブラート全盛の時代になってから音楽に触れた私たちは、morendo ppp でノン・ヴィブラートにすることはできても、ふつうの音をノン・ヴィブラートで弾くのは実は「怖い」のです。表情のないのっぺらぼうな音で小学生が吹く「たてぶえ」みたいになるんじゃないか、音程が悪いのがばれちゃうんじゃないか…それでついついヴィブラートをかけちゃう、というのが現実なわけで、ヴィブラートの意識的・積極的活用はまずはベースとなるノン・ヴィブラートの音を再発見して恐怖感を克服するところから始めなければならないのかも知れません。古楽派・擬古楽派の演奏やリコーダーアンサンブルなどに積極的に触れて鍛えるかなぁ。
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最近の演奏会:土浦交響楽団第55回定期演奏会
55回定期演奏会 12月16日(日)の午後、わが土浦交響楽団の第55回定期演奏会がありました。演奏曲目は次のとおり。

- 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲(ワーグナー)
- 「チェコ組曲」(ドヴォルザーク)
- 交響曲第1番(ブラームス)
アンコールとして
- ハンガリー舞曲第1番(ブラームス)
指揮:直井 大輔
 お気づきの方はお気づきでしょう、実は今回のプログラムはドラマ版「のだめカンタービレ」にちなんだ曲で編成した、いわば「のだめプロ」だったのです。(ちょっと遅かったかな〜?)

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| 自分が出演した演奏会 | 22:04 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近の演奏会:大田翔裕園演奏会
 アップが遅くなってしまいましたが、すっきりと晴れ上がった12月1日(土)の午後、大田区南蒲田の老人ホーム「翔裕園」で東京サロンオーケストラによるボランティアコンサートが行われました。こちらでのコンサートは昨年に続いて2回目で、私も昨年に続き司会と指揮を担当。
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| 自分が出演した演奏会 | 23:14 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
ドヴォルザーク「チェコ組曲」私解〜通作組曲としての解釈の試み
 「のだめカンタービレ」(ドラマ版)を通じて人気曲となったドヴォルザークの「チェコ組曲」。全5曲の組曲のうちドラマで使われたのは第2曲の「ポルカ」と第5曲の「終曲(フリアント)」だけでしたが、最近全5曲を通してのストーリー的な展開を見取ることができるのではないかと思うようになりました。そのストーリーを一言で言うならば「ドヴォルザーク青年の初恋物語」ということになりましょうか。自分用の心覚えも兼ねてその概要を書いておきます。
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