シベリウスの交響曲第1番に対するアプローチの変遷
 先日の「冬の音楽」の最初にシベリウスの交響曲第1番を挙げたところ、偶然とは恐ろしいもので来年自分のオケの定演でこの曲を演奏することになってしまいました。先月いささか準備不足で本番に乗ってしまったのでそのリベンジができるのはありがたいのですが、少なくとも聞いて想像するよりもはるかに難曲であることを身にしみて知ってしまったので、実は密かに戦(おのの)いています。
 しかしただ戦いていては何の対策にもならないので、まずは自分に活を入れようと、比較的新しい演奏を聞いてみることにしました。いつもは渡辺暁雄/日本フィル(1981年 日本コロムビア)とベルグルンド/ヘルシンキ・フィル(1986年 EMI)の録音を聞いていますが、いずれも内容に不満はないものの前世紀の録音なので、この際21世紀のシベリウスを聞いて覚悟を新たにしてみよう、なんて思ったわけです。そこで入手したのがサカリ・オラモ/バーミンガム市響(2002年 ERATO)とヴァンスカ/ラハティ響(1996年 BIS)による録音。おっと、ヴァンスカ盤は21世紀じゃなかった(汗)・・・でも私はこのコンビによるシベリウスを既にいくつか聞いていて、私の中ではこの人はじゅうぶん新しい世代なので、よしとしましょう。

 ちなみに、今回はいずれの録音もiTunes Storeで買いました。今年になってから小曲の一曲買いを中心に、CD現物ではなくデータで買うことが増えています。小曲は一曲150円で買えるので、いらない曲も一緒に入っているCDを買うより割安ですし、買いに行ったのにモノがない!ということもありません。今回はカップリング曲(オラモ盤はシベリウス3番、ヴァンスカ盤はシベリウス4番)も含めてそれぞれCD1枚分のアルバム単位での購入。これで買うと当然解説も付かないし、私の場合は家の中を無線ルータで飛ばしたデータをノートPCで受けて、ホームセンターで買ったノーブランドのCD-ROMに焼くので、販売されているCDと比べて音質の面ではどうかな…という気がしないではないのですが、もし音質的に多少遜色があったとしても、自分の中で音楽を組み立てるための参考にする、材料に使う、という私の目的にとっては気にならないし、実際のところ個人で普通に鑑賞するには特に問題ない音質だと思います。
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 00:05 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
近所のカモたち
並木公園 穏やかに晴れ上がった三連休初日の11月23日(金)の朝、近くのつくば市並木の並木公園の池へカモを見にでかけました。2週間ほど前にたまたま近くを通ったらカモが来ているのが見えたので、今回は双眼鏡持参です。
 朝10時ごろで100〜120羽ほど、見えた範囲では♂はオナガガモが1羽いた以外はヒドリガモばかり。♀はどのカモも似ているので識別していません(図鑑持って行かなかった…汗)が、♂の比率から推測するにほとんど全部ヒドリガモと思われます。(写真は並木公園のヒドリガモたち)


 並木公園の西約2kmには洞峰(どうほう)公園の洞峰池、南約3kmには乙戸沼(おっとぬま)公園の乙戸沼というカモの来る場所があります。両方とも並木公園の池より大きいので見られるカモの種類も増えるのですが、洞峰池は圧倒的にオナガガモが卓越し、乙戸沼は主にハシビロガモとオナガガモが棲み分けていてコハクチョウも来る、というふうに、お互いに近くにあるにもかかわらずそれぞれ特徴があります。一言で言うなら並木公園の池は「ヒドリガモの池」、洞峰池は「オナガガモの池」、乙戸沼は「コハクチョウの沼」といったところです。
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| 身近な自然 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
上海土産の中国菓子

 勤め先の製品(半導体製造装置)が上海の半導体メーカーに納品されたので、エンジニアが現地へ装置の立上げに行っています。で、帰国するときに現地のお菓子類をお土産に買ってきてくれるのですが、食文化史的に興味深いものがあるので、書き留めておこうと思います。

如意ス表
吉祥コウ表

 おぉーっと、いきなりファンキーなやつの登場です。キャラクターがどこか「キ○ィちゃん」や「くまの○ーさん」に似ているようにも見えますが?・・・いやー、きっと気のせいでしょう(苦笑)。ネコのキャラクターの「如意酥」はフルーツ風味の固めのジャム状のものが入っているもろいクッキーのようなもので、外観は正方形のカロリーメイト、食感も似ています。クマのキャラクターの「吉祥」の方は粉を押し固めただけの崩れやすい落雁のような感じのものです。
 続いてそれぞれの中味を見てみましょう。

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| 飲み食い、料理 | 19:23 | comments(0) | - | pookmark |
最近の演奏会:バレエコンサート36
バレエコンサート 天気予報を裏切って穏やかな好天となった11月18日(日)、土浦市民会館で地元の3つのバレエ教室合同の発表会「バレエコンサート」が行われ、特別出演として私を含む土浦交響楽団のメンバー約30名が「くるみ割り人形」の伴奏として参加しました。私はコントラバスを担当、指揮は「隊長」ことトランペットの宮田さんでした。

 今回のバレエとの共演は、昨年行われた土浦市文化協会主催の「花盛りかぶきもの」中の「花のワルツ」が好評だったため、今年さらに曲目を増やして行うことになったものです。「バレエコンサート」は三部構成で、「くるみ割り人形」はその第一部、すなわちオープニングを飾ります。演奏曲目は次のとおりですが、「小序曲」(後半のみ演奏)は幕が上る前の演奏でバレエは付きません。
- 小序曲
- スペインの踊り(チョコレート)
- 中国の踊り
- ロシアの踊り(トレパック)
- アラビアの踊り(コーヒー)
- 花のワルツ

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| 自分が出演した演奏会 | 23:27 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近の演奏会:小平中央リハビリテーション病院ハートフルコンサート
ハートフルコンサート掲示 一日中冷たい雨が降ったり止んだりの11月10日土曜日の午後、わが東京サロンオーケストラは東京都小平市の小平中央リハビリテーション病院にて、入院患者さんとご家族の方々を対象にした「ハートフルコンサート」に出演しました。会場にできるだけ多くのお客様が入れるよう、演奏者の人数を抑えて総勢20名。私は簡単な司会と指揮を担当しました。

 会場は病院内のリハビリテーション室。けっこう大きな部屋なのですが、正面に床にテープを貼って仕切ったエリアがあり、その中で演奏してほしいとのこと。20名のアンサンブルがようやく収まるか収まらないかくらいの絶妙な広さなので、正直「そんなにお客さん入るの?」と思ったのですが、幕を開けてみると100人以上の患者さんとそのご家族の方で会場はいっぱいになり、我々はほとんど三方から囲まれて演奏しているような感じになりました。

 病院ならではの配慮だなと思ったのは、リハーサルの直前に職員の方から「あまり大きな音を聞くと具合が悪くなる患者さんもいらっしゃるので、まず一番大きな音が出るところをやってみてください」とご依頼があり、一度聞いていただいて、その結果一段控えめな音量で演奏することになったことです。なるほど、「音を楽しむ」はずが「音(おん)が苦(く)」になっては台無しですからね。

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| 自分が出演した演奏会 | 19:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ピアノ四手版ブラームス交響曲第2番の第四楽章コーダで
ブラームス交響曲第2番(2台ピアノ版) ブラームスは自作の管弦楽作品や室内楽作品の多くを自らピアノ四手用に編曲しています。音が持続せず音色の変化やダイナミクスの幅の点でオーケストラに及ばないというピアノの機能上の制約がある反面、全ての声部が均質に聞こえるので音楽全体の見通しがよくなり、ときどき「あ、こんなことやってるんだ」という発見もあるので、私は機会があれば交響曲などの管弦楽作品のピアノ四手版もなるべく聞くようにしています。
 そんなわけで先日交響曲第2番の2台ピアノ版を聞いていたら、第四楽章のコーダで発見がありました。
<交響曲第2番と「大学祝典序曲」のピアノ2台版のCD。今ではブラームスのピアノ四手用編曲の録音はNAXOSでも出ているのでぐっと入手しやすくなりました。>


 問題の箇所をオーケストラ用スコアで示します。
第四楽章コーダ
<第四楽章の385小節から391小節。赤枠は2台ピアノ版でカットされているパッセージ。青枠は第一主題に由来する動機。>
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
冬の音楽
フィンランドピアノ名曲コレクション 今日は立冬。地球温暖化と言われながら、それでも冬と呼ばれる季節が始まります。そこでいささか唐突ですが、今までに聞いたことのあるクラシックの曲の中から、私が「冬」を感じる曲を並べてみようと思い立ちました。ただしヴィヴァルディやチャイコフスキーの「四季」の中の冬の部の曲のように今さら挙げる必要もない超有名曲は省き、その代わり「冬」を意識して作られたわけではない曲でも、私が「冬」を感じたら独断で入れちゃいます!(というか、結果としてはそっちの方が多い・・・苦笑)あぁ限りなく自己満足。
<写真は「粉雪」(パルムグレン)を含むアルバム「フィンランドピアノ名曲コレクション」(ポニーキャニオン)>

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 23:49 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
「くるみ割り人形」小序曲の「小(miniature)」
 今月の18日(日)に土浦交響楽団が地元のバレエ教室合同の発表会で伴奏をすることになっていて、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」からの数曲を練習しています。幕が上る前にまず「小序曲 Ouverture miniature(仏)/Overture in Miniature(英)」を演奏し雰囲気が盛り上がったところで幕が上がりバレエが始まる、という演出ですが、今回はオケの演奏会ではなくあくまでもバレエの発表会なので、踊りがつかない幕前の音楽は短い方がいいのではと考え、メンバーと相談して「小序曲」を半分にカットすることにしました。
 実はこの「小序曲」はトロンボーン以下の金管楽器とチェロ以下の弦楽器、つまり低音楽器はみんなtacet(休み)なので、コントラバス奏者の私はこれまで「おーおーみんながんばれやー」と高みの見物をきめこんでいたのですが、今回「小序曲」を半分カットするために改めてスコアを眺めてみて、初めてこの曲がソナタ形式(ただし展開部がない)で書かれていることに気がつきました。
 これまでは漠然とA-B|A-B-コーダという形と思っていたので、「踊りがないならお客さんが退屈しないように後半だけにすれば〜」とお気楽に提案したのでしたが、Bに相当する部分(45〜89小節と134〜終わりまで)の調性が前半はヘ長調(主調の属調)、後半は変ロ長調(主調)であることに気づき、そこでようやくAが第一主題部(主題は1〜8小節/90〜97小節)、Bが第二主題部(主題は45〜56小節/134〜145小節)であり、前半が提示部、後半が再現部という「展開部を欠くソナタ形式」の楽式にあてはまることに思い至ったというわけ。そう思ってよく見ると主題の提示、確保、推移などの細部も短いながら一通りそろっているのです。あらら、今まで何を聞いてたんでしょうか。

 ごく短く平明な曲なので楽式なんて何でも構わないようなものですが、ソナタ形式とすればこの序曲のタイトルにminiature、つまり「実物そっくりでとても小さい」という形容詞が使われている理由がわかります。つまり楽式としては大序曲「1812年」や幻想序曲「ロミオとジュリエット」と同じくソナタ形式をとっていて、ただ展開部もなく全体がとても簡潔で短いという構成ゆえ「ミニチュアの序曲」というタイトルになっている、と考えられるのです。漠然と小さいのではなくて、虫眼鏡で見ると大規模な序曲と同じパーツがきっちりそろってるよ〜、というわけ。マニアですね(笑)。
 思えば「くるみ割り人形」はおもちゃやネズミたちの身の丈の、小さな世界での物語。とすれば「ミニチュアの序曲」こそがこのバレエにはふさわしい。これはチャイコフスキー晩年の円熟ぶりをうかがわせる「小さな傑作 Chef-d'oeuvre miniature/Masterpiece in Miniature」だったのです。
| オーケストラ活動と音楽のこと | 20:44 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
酒の肴にしたい本
 高校から大学時代にかけての学問に燃えていた頃に大きな影響を受け、今でもその跡を慕っている学者が何人かあります。もともとは万葉集研究を志望していた私を民俗学へと宗旨替えさせた折口信夫(おりくち・しのぶ)は別格として、民俗学の宮本常一(みやもと・つねいち)、食物史・風俗学の篠田統(しのだ・おさむ)、中国文学の青木正児(あおき・まさる)と数え上げてみると、この人たちはみなひ弱でない骨太な学風を持ち、また学問の奥深さや楽しさをたっぷりと伝えてくれたのでした。
 中でも青木正児の著作からは学問することの楽しさを直截かつ強烈に印象づけられました。その業績は「青木正児全集」全10巻(春秋社)にまとめられていますが、それとは別に文庫本などの比較的入手しやすい形で出版されているものは専門家でない一般の読者を対象としており、中国の文物に興味を持つ人ならば比較的気軽に楽しめます。すなわち『華国風味』『酒の肴・抱樽酒話(ほうそんしゅわ)』『隋園食単』(いずれも岩波文庫)、『江南春(こうなんしゅん)』『琴き*書画(きんきしょが)』『中華名物考』(いずれも平凡社東洋文庫)などがそれ。特に岩波文庫の3冊はいずれも中国の飲食に関する考察や随筆を集めたもので、これらを肴にいくらでも酒が飲めること請け合いです。
 ところが、酒の肴にもってこいの著作でかつては単行本で出版されながら、いまだに文庫化もされないまま入手しにくくなってしまったものがあります。これは酒徒として実に残念なことと言わなければなりません。

*「き」は「碁」の字の「石」の代わりに「木」

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| 飲み食い、料理 | 10:22 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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