無限花序の花
ヘラオオバコ

 毎年5月になるとこの花が見られるようになります。最初は何の仲間の花なんだか見当もつきませんでしたが…

――鮮やかな真紅の大きな花びらを持ったその花は日の出の直前に開くが、朝日が当たると花びらは眩しい光を発して一瞬のうちに昇華してしまい、この部分だけが残る。散る寸前の、朝日を浴びて光り輝くこの花をたった一人で見た者は幸せになると信じられている――

 というのは真っ赤な嘘(ごめんなさい)で、こいつはヨーロッパ原産の帰化植物でヘラオオバコといい、その名のとおりオオバコの仲間です。「ヘラ」というのは、根元にある葉(ここには写っていません)がヘラのような形をしているためです。なるほどそう言われてみるとオオバコの花に似ていますが、日本のオオバコに比べるとやたらと背が高い(花茎が30cm以上ある)上に、天使の輪っかみたいなものができるのがとても印象的で、ほんとは赤や黄色の大きな花びらがまわりにあったんじゃないか?という気もしますし、逆になんとなく間抜けで飄々として、なぜか突然「レレレのおじさん」を連想したりもします。
続きを読む >>
| 身近な自然 | 23:06 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
今年初めてのホトトギス
 今日の昼休みのこと、例によって近くのパン屋さんまでお昼を買いに行った帰り道、かなたの木立から切れ切れにですが、ホトトギスの声が聞こえてきました。「おお〜今年初めてだ〜」と気分よく職場に戻り、買ってきたパンを食べていると、今度はすぐ近に来たらしく、開いた窓から「キョッキョキョキョキョ!キョッキョキョキョキョ!」と大きな声が聞こえてきてびっくり。さっきのと同じ個体かどうかはわかりませんが、いよいよつくばにもトケン(杜鵑)類がやってくる季節になりました。(トケン類=カッコウ科の鳥)
 つくばの街中まで来るのはホトトギスとカッコウ。今年はカッコウはまだ聞いていませんが、そのうちちょっとした公園の木立や電線に止まって鳴く姿が見られることでしょう。
 鳴いているうちにどんどんテンションが上っていってしまうジュウイチや、鳴き声を聞くと必ずドヴォルザークの「新世界」の第四楽章のティンパニ(321小節〜324小節)を思い出してしまうツツドリなどはさすがに街中には来ませんが、どこかで聞けるといいなぁ。夏の山、行きたいなぁ。
| 身近な自然 | 21:20 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近の演奏会:東京サロンオーケストラ 第35回シンフォニックコンサート
 雨が降ったり止んだりの5月19日(土)の午後、私が所属する東京サロンオーケストラの第35回シンフォニックコンサートが、東京都の板橋区立文化会館で行われました。
 今回のテーマは「国民楽派」ということで、演奏曲目は次の通りです。

交響詩「モルダウ」(スメタナ)
スペイン奇想曲(リムスキー=コルサコフ)
交響曲第9番「新世界より」(ドヴォルザーク)

アンコールとして
スラブ舞曲 第2番(ドヴォルザーク)
「ひき潮」(マクスウェル)※フランク・チャックスフィールド・オーケストラの演奏などでおなじみのポピュラーの名曲

指揮:佐藤 迪
続きを読む >>
| 自分が出演した演奏会 | 21:12 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
桃井知子 木版画遺作展
 先週の土曜日(5/26)、都内某所でオケの練習後にメンバーの何人かで呑んでいると、そのうちの一人が「すごく良かったですよぉ」と言いながら「桃井知子 木版画遺作展」のリーフレットとカードを見せてくれました。ちょっと不思議な絵柄、一味違う色使いに惹かれました。たまたまその翌日に池袋の芸術劇場へ行く用事があったのと、この展覧会の会場が芸術劇場のすぐ近くだというので、行ってみることにしました。

 その翌日の日曜日(5/27)、正午過ぎに会場へ行ってみますと、そこはこじんまりとした明るいギャラリーで、お客様もけっこういらっしゃったし、さらに桃井さんのご家族の方が何人か会場にいらっしゃって、お茶を勧めてくださったり、気さくにお話をしてくださったり、またお客様もあちこちで静かにあるいは楽しそうにお喋りしていたりして、会場が和やかにくつろいで、何だか桃井さんのお宅のホームパーティーのような雰囲気だったのです。さらに、展示してあるもの以外の作品や習作を収めた大型のクリアブックが会場の4箇所ほどに分けて置かれていて、それらをひとつひとつ見ていると、前の晩までお名前も知らなかった桃井知子さんという方が見たものや感じたことと素直に向き合えて、不思議に充実したひと時を過ごすことができました。
 この方の作品にそれくらいすっと近づくことができたのは、作品自体の中にテーマというかモチーフというか、とにかく作品を通じて訴えたいこと大事なことがしっかりとわかりやすく描かれていること、さらに展示作品の配列とクリアブックの配置もそれに基づいて、効果的によく考えてグルーピングされていたためであろうと思われました。また習作の余白に鉛筆で書かれたメモのようなものの中に、黒と白の比率が同じくらいだと面白くない、黒っぽいか白っぽいかだ、という内容のものが複数あって、ジャンルは異なっても同じく表現活動に携わる者として、それはとてもとても示唆に富みinspiringでした。
 とにかくこの展覧会は、私にはとても居心地のよい時間であり空間であったのです。

 ところでこのオレンジギャラリーでの遺作展は、私が行った5月27日が最終日だったので、この記事を読んで「じゃあ行ってみようか」と思ってももうやっていないのですが、リーフレットに「桃井知子のWEB SITE」のURLが載っていましたのでご紹介します。作品をじっくり楽しめるのがうれしいです。

http://www.eonet.ne.jp/~momoi/

 私はどの絵を見ても「しあわせ」について考えたくなります。じかに「しあわせ」を感じるものもありますし、そうでないものもやはりそれぞれの仕方で「しあわせ」についてまじめにひたむきに問いかけたり、訴えたりしているように思います。
| 美術に関すること | 23:35 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
スズメの子
 昼休みに近くのパン屋さんまでお昼を買いに歩いていると、公園の向かいの寮のフェンス(高さ約1.5m)の上に何やら茶色い毛っぽいものが…見るとスズメの子です。羽は一応生えそろってはいますがまだボサボサしていてあちこちけば立っているし、足腰もまだしっかりしていないのか止まり方が平らにへちゃっとしていて(つまり立ってないでしゃがんだ状態)、遠目には柔らかい茶色の固まりを上からぼたっと落としたように見えます。おそらく親が餌を運んできてくるのをおとなしく待っているところだったのでしょう。
 少し離れてしばらく見ていると、居心地悪そうに首をかしげたり辺りを見回したりしていましたが、やがて「ぷるるるる…」と羽ばたきながら、2mほどむこうの、高さ2m半くらいの棒杭の上に飛んで行きました。杭の上に止まるときに勢い余ってちょっとのめりましたがすぐに体勢を立て直し、さらに親を待つ様子。毛はボサボサでも止まり方はへちゃっとしていても、飛べるんだからたいしたものです。元気でね〜。
| 身近な自然 | 23:15 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
登美ヶ丘とナガスネヒコ、ニギハヤヒ
 私が幼稚園から小学5年生までを過ごした奈良市の鶴舞団地の北側に、登美ヶ丘(とみがおか)という地域があります。今では近鉄けいはんな線の終着駅「学研・奈良登美ヶ丘」によってその名が全国に知られるようになりましたが、地名としては登美ヶ丘に加えて東登美ヶ丘・西登美ヶ丘・南登美ヶ丘・北登美ヶ丘が全て揃い、さらに中登美ヶ丘まである(白・發はないの?<こらっ)という広大な地域で、けいはんな線の駅は北登美ヶ丘の街区に隣接しています。鶴舞団地は集合住宅ですが登美ヶ丘は(鶴舞団地と同じ集合住宅の中登美団地を除いて)整然と区画された街路に沿って一戸建てが果てしなく建ち並んでいて、団地っ子の私は登美ヶ丘に住んでいる人はみんなお金持ちだと信じていました。

 この登美ヶ丘はかなり広い地域にもかかわらず、いかにも「造成したときに新しく作ってつけました」という雰囲気の「登美ヶ丘」とそのヴァリエーション以外に地名が見当たらないことから、もともとは山林で集落がなかったところを大規模に造成して宅地にしたと考えられますが、最近になってなぜそんな名前をつけたのかが気になってきました。「…ヶ丘」は振興住宅地名の定番ですが、その前についたのが、たとえば「夢」とか「希望」でなくて、なぜ「登美」なのか。せめて「富」だったらいかにもお金持ちが住みそうだけど…。
 調べてみると、「登美」は古事記・日本書紀の昔にこの辺りを支配し、高千穂の宮から東征して大和に入ろうとする後の神武天皇の一行を一度は撃退しながら後に討たれたナガスネヒコという人物にちなむ地名であるらしいことがわかりました。奈良では新興住宅地の地名もなかなか侮れません。
続きを読む >>
| 地域とくらし、旅 | 22:39 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
七五調における七音句冒頭の休拍の有無による表現内容の違いについて

 タイトルからは何のことかわかりませんので、話をわかりやすくするために、まずは文例をご覧ください。

 文例1
 まだあげ初(そ)めし 前髪の 
 林檎(りんご)のもとに 見えしとき
 前にさしたる 花櫛の 
 花ある君と 思ひけり (島崎藤村「初恋」より)

 文例2
 富士の高嶺に 降る雪も
 京都先斗町(ぽんとちょう)に 降る雪も
 雪に変わりは ないじゃなし
 融けて流れりゃ 皆同じ (作詞者不詳「お座敷小唄」より)

 両方ともいわゆる「七五調」といわれる形をとっていますが、音読してみるとこの二つは拍節構造が違います。最近私は七五調の文章においては、文章全体の調子が最初の句の冒頭の休拍の有無に反映される傾向があることに気づきました。文例1の「初恋」のような個人的、内省的、シリアスな内容の文章の最初の句の冒頭には休拍が来ない傾向があり、逆に文例2の「お座敷小唄」のように(個人性を捨象したという意味での)匿名的集団的、開放的、C調(死語(汗)「調子いい」をひっくり返した俗語です、念のため)な内容の文章の最初の句の冒頭には休拍が来る傾向があるのです。これを知っていると知らないとでは七五調の文章を作るとき差が出るぞ〜。(そりゃいいけど、だいたい七五調の文章なんて作るのか?(笑))以下詳述します。

続きを読む >>
| 国語・国文 | 22:46 | comments(2) | trackbacks(1) | pookmark |
オオヨシキリ
 一昨日の朝出勤のため車を走らせていると、全開にした窓から「ギョシギョシギョシ、ゲゲゲゲ…」という声が飛び込んできました。声の主は間違いなくオオヨシキリ。先週の連休に田植えをしたばかりの水田の畔の木の上で鳴いているようです。

 十数年前の初夏のある朝、つくば市の洞峰公園(どうほうこうえん)でバードウォッチングをしていた私は、不思議な声を聞きました。田んぼで鳴くカエルの声に耳障りな高周波成分を加えたような「ゲゲッゲゲッゲゲッ、ギシギシギシキキキキー」というその声は、どうしてもカエルか、そうでないとしても何か両生類系のものに違いないと思われましたが、不思議なことに沼のほとりの木の上から聞こえてくるのです。正体を見極めようとしてその木に近づき双眼鏡をそれと思しき方向に向けると、何とその声はヒバリほどの大きさの、茶色い地味な鳥のものだったのです。それがオオヨシキリとの最初の出会いでした。あの声は知らないで聞くと、ちょっと鳥の声とは思えません。

 俳句・俳文の方では「行々子」(ぎょうぎょうし)と呼びますが、何のことはない鳴き声そのままに漢字を宛て、最後を「子(し)」の字にして擬人化したものです。「よしきり」なら四音節ですが「ぎょうぎょうし」なら五音節になるので、俳句に読み込みやすくなりますね。

ところでつくば市の隣の土浦市の「市の鳥」はヨシキリとウグイスなのですが、鳥類図鑑的に言うとヨシキリという鳥はいなくて、いるのはオオヨシキリとコヨシキリです。土浦市のホームページによると「ヨシキリは霞ヶ浦周辺のアシ原などにに(ママ)生息し,その鳴き声は湖面に響きわたり,初夏の水郷情緒を盛り上げています。」とのこと。鳴き声を聞けばオオヨシキリかコヨシキリかの判別はできますが、広い葦原なら両方が共存している可能性もありますから、土浦市のホームページはわざと区別しないで「ヨシキリ」としているのかも知れません。現地へ行って確認したわけではないので本当のところはわかりませんが。

 梅雨の前ですが、いよいよ夏が始まるという気分になりました。
| 身近な自然 | 07:42 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近の花たち
 ゴールデンウィークが明けて、新緑の美しい時期になりました。会社の昼休みに散歩を兼ねて近くのパン屋さんまでお昼を買いに行くと、道端にいろいろな花が咲いています。4月中はさまざまなスミレ(白、薄紫、濃い紫、葉っぱの丸いの、長いの…)や地面に落ちた星のようなハナニラが盛りでしたが、4月下旬あたりから顔ぶれが変わってきて、季節の移り変わりを感じます。
 そんな会社のまわりの旬な花たちをいくつか紹介します。

1.マツバウンラン(松葉海蘭:ゴマノハグサ科)
並んで咲くマツバウンラン

 北アメリカ原産の帰化植物。30cm以上もある細くてまっすぐな茎を伸ばし、写真では白っぽく写ってしまいますが、実際にはやさしい青紫色の小さな唇形花を咲かせています。数十本まとまっているところに風が吹くと青紫のシグナル灯のような花がゆらゆら揺れて幻想的でもあります。背が高いわりに葉はごく小さくまばらで、ほとんど茎と花だけの、ちょっと浮世離れした姿ですが、そのせいで1cm程度の小さな花でも引き立ってゴージャスな感じがします。

マツバウンラン唇形花
マツバウンランの花は唇形花という独特な形をしています。花の後側には距(きょ)と呼ばれる、袋状に長く突き出した部分があります。
 ゆらゆら動きやすいこの小さな花に、コンパクトタイプのデジカメのオートフォーカスでピントを合わせるのは至難の業(というかほとんど無理)で、まず間違いなく背景にピントがいってしまうのですが、花の直後にハンカチをかざしてそこにピントを合わせ、撮影直前にハンカチを除いてやって、ようやく撮ることができました。


2.ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟:ケシ科)
ナガミヒナゲシ

沿道のナガミヒナゲシ
 地中海地方原産の帰化植物。つくばの中心部では、なぜか大通り沿いの植え込みや中央分離帯に群れて咲くのですが、こうした分布は種のばら撒き方によるのだと思われます。風に乗せて飛ばすわけでもなく、鳥や獣に運んでもらうわけでもなく、文字通り芥子粒状の小さい種が転がったり雨に流されたりしながら、道沿いに広がっていくのでしょうね。
  乾いた感じのオレンジ色がいかにも地中海です。うつむいたつぼみや紙より薄い花びらなど見た目は可憐ですが、排気ガスにもめげず咲いているところを見るとけっこう性の強いやつかも知れません。でも数年前に自宅の玄関の脇に移植してみたらいつの間にかなくなってしまいました。日当たりがもうひとつだったのかな?きっとこいつはオーソレミオな花なのでしょう。なんたって地中海生まれですから。


3.ブタナ(豚菜:キク科)
ブタナ

 これも帰化植物で、ヨーロッパ原産。なんでもフランス語では「豚のサラダ」と呼ばれているらしいのですが、そのおかげでついた和名が「豚菜」。ぶたぁ?…ドイツ語とかイタリア語とかスペイン語とかで、日本語にしてもう少しなんとかなりそうな名前で呼ばれてはいなかったのでしょうか。
 でもブタナちゃんはなんと呼ばれようとまるで気にするようすもなく元気そのもの。花はタンポポに似ますがタンポポよりもっとこってりとした濃い黄色で周りも明るくなるようです。しかもタンポポと違って花茎が途中で分かれて高く伸びるので、その明るい花がいやが上にも目立ちます。「えぇえぇあたしゃブタナでけっこうよ〜」とか言いながら、虫がたかろうがなんだろうがケセラセラ、明るく強くたくましく笑って生きるブタナちゃんです。

<ブタナちゃん大好き〜>
ブタナちゃん大好き〜


4. 種を飛ばす気満々のタンポポたち(西洋蒲公英:キク科)
飛ぶ気満々のタンポポ
 ブタナよりも花期が早いタンポポはもうほとんど花が終わっています。種をできるだけ遠くまで飛ばせるように、タンポポの茎は花が終わってからどんどん伸びます。
 今日は朝からよい天気になったので、タンポポたちはもう飛ばす気満々。なんだか運動会で出番を待ってる子供たちみたいではありませんか?

| 身近な自然 | 23:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

CALENDAR

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< May 2007 >>

SELECTED ENTRIES

CATEGORIES

ARCHIVES

RECENT COMMENT

RECENT TRACKBACK

MOBILE

qrcode

LINKS

PROFILE

SEARCH