モーツァルト:ピアノ・ソナタ集(グリーグによる2台ピアノ版)のCDを聴く
<収録曲>
ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545(第15番)
幻想曲 ハ短調 K.475
ピアノ・ソナタ ヘ長調 K.533+494(第18番)

 以前にも書きましたが、私は小学生の頃団地に住んでいました。つまり今から40年近く前のことですが、当時は家庭用エアコンというものはまだなかったか、あったとしても団地住まいのサラリーマン世帯には普及していませんでした。冬はコタツとストーブ、夏は扇風機と風鈴というのが当時の主な冷暖房だったのです。だから寒い間は閉め切りっぱなしですが、初夏から夏、初秋までの天気のよい日はみんな基本的に窓を開けたもので、テレビの音声とか掃除機の音とか、家の中のいろんな音が外から聞こえました。ピアノを練習している音もよく聞こえてきたものです。
 集合住宅でのピアノの音はその後「ピアノ殺人事件」(1974年)を引き起こすに至るのですが、小学生だった私にとって、ピアノを弾く同級生やお姉さんたちは眩しい存在でした。そんな眩しいリツコちゃん(仮名)やミナコお姉さん(仮名)がよく弾いていたのが「どそみそどそみそ…」という左手の伴奏に乗って「どーみそ|しーどれど|らーそど|そーふぁそふぁそふぁそふぁみ(ふぁそふぁそ…はトリル(汗))」という旋律が流れる曲でした。後にこの眩しい後光に包まれた天来の音楽がモーツァルトのピアノソナタ第15番ハ長調K.545という曲であると知ったそのとき、長年の謎が解けたうれしさと一緒に、何かが終わったような、何とはない不思議な寂しさがわいてきたのでした。

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 22:54 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
ミュンシュのブランデンブルク協奏曲
 最近シャルル・ミュンシュがボストン交響楽団を指揮したバッハのブランデンブルク協奏曲全曲(1957年録音)のCDを入手しました。今では交響楽団のような大きい編成のオーケストラがバッハを演奏する習慣は管弦楽組曲第3番の「エア」(「G線上のアリア」の原曲)や「マタイ受難曲」などの一部の例外を除いてほとんどなくなってしまいましたが、1960年代頃までは「管弦楽組曲」や「ブランデンブルク協奏曲」などがオーケストラの演奏会で演奏されることがあったのです。
 バッハを始めとするバロック音楽の演奏主体はここ数十年の間に大編成のオーケストラから室内管弦楽団のような小編成のアンサンブルへ、さらに作曲当時の楽器や編成による古楽専門の団体へと移ってきたのですが、私見ではこうした経過をたどるうちに古楽というジャンルは次第に学問的な色彩を強め、演奏者も聴き手もともに高度に専門化し、テクストがどうの楽器がどうの演奏様式の細部がどうのという能書きが重視され、「ふつう」のクラシック音楽からの差別化が進んでいきました。そして「ふつう」からの差別化が先鋭化した結果、ノン・ヴィブラートに象徴されるような古楽特有の美しさ・美意識を「ふつう」のクラシック音楽のそれに対置し並立させようとする「擬古楽派」が生まれてきて今日に至る、というのが今のところの私の古楽受容史理解の大筋です。そうした流れを踏まえて、古楽専門ではないオールラウンドの指揮者とオーケストラによるちょっと昔の演奏を聞いてみると、まだバッハやヘンデルが「ふつう」のクラシック音楽の文脈の中にあって、今日の古楽の演奏様式からすればあり得ないような、おおらかなやり方で演奏されながら、「ふつう」のクラシック音楽の聴き手を楽しませていた様子がうかがえて興味深いのです。ミュンシュ/ボストン響のブランデンブルク協奏曲も、やはりおおらかな演奏で楽しめるものでした。

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| オーケストラ活動と音楽のこと | 21:06 | comments(0) | trackbacks(1) | pookmark |
最近の演奏会:つくば学園都市オーケストラ第39回定期演奏会
 4月15日(日)の午後、つくば市のノバホールでつくば学園都市オーケストラ第39回定期演奏会が行われ、例によってトラで参加しました。私にとってはこの演奏会が今年の春夏シーズンの幕開けです。これを含めて7月1日までに本番が6回、場合によってはその翌週にももう1回、先は長いぞ〜。

 今回の演奏曲目は
- 交響詩「モルダウ」(スメタナ)
- 「交響的舞曲」(ラフマニノフ)
- 交響曲第4番(ブラームス)
アンコール曲として
- 「リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲」より「イタリアーナ」 
指揮は児玉貴子氏でした。

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| 自分が出演した演奏会 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
叩きたくない指揮者、止めたくない指揮者の悩ましさ
 先週の土日、私の所属する東京サロンオーケストラの合宿で河口湖に行ってきました。常任指揮者が行けないので、合奏は私が担当、また今回は弦と管に分かれての分奏を取り入れて、コンマスが弦分奏、私が管分奏を見ることになり、けっきょくずっと棒振ってました。おかげで日曜日は腕と脇が筋肉痛でつらかった。

 この合宿の直前にここに「叩く指揮者、止(と)める指揮者」なんていうのをアップしてしまったのは、タイミング的に最悪でした(苦笑)。東京サロンオケのメンバーでこのブログをチェックしていただいている方はごく少ない(はず)ですが、一応オオヤケにしてしまった以上、おおっぴらに叩いたり8小節ごとに止めたりはできない、というか自分の美意識が許しません。結果としては、ときどき一発だけ「ここ(小節の)頭ッ!」と叩いたり、分奏でリズムが不正確な奏者のために1拍ずつ叩きながら歌って見せたり弾いてもらったりはありましたが、それ以外は叩いたり頻繁に止めたりはほとんどなく、自分の言行不一致に深く悩むという事態にはならずに済みました。
 しかし実はそれとは別に、困ったことがあったのです。
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| オーケストラ活動と音楽のこと | 23:43 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
叩く指揮者、止(と)める指揮者
 と言っても、指揮者同士がけんかしているわけではありません。最近またトラに呼ばれて他のオケの練習に行っているのですが、このオケの指揮者(ここではA氏とします)が「叩く指揮者、止(と)める指揮者」なのです。下振りとしての自分自身への自戒のために、悪い練習の一考察として書いておきます。

<ムラヴィンスキーのリハーサル(非売品)>
ムラヴィンスキーのリハーサル
頼む止めないで〜(写真は「悪い練習」とは関係ありません。)


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| オーケストラ活動と音楽のこと | 23:31 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
HARIBOとタンパク質
 HARIBOというお菓子をご存知でしょうか。ドイツ製のグミキャンディーでフレーバーや大きさ・形が何種類かありますが、日本のグミキャンディーよりも歯ごたえがあって、私は好きです。
 実はこのHARIBOはグミキャンディーの元祖なのです。そもそも「グミ」という言葉自体がゴムに当たるドイツ語のGummiから来ています。果汁にゼラチンを加えてグミキャンディーを最初に製造・発売したのはボン出身のボンボン職人(しゃれではありません、ほんとにBonbonkocherだったのだ)ハンス・リーゲル。彼は1920年12月13日付でHaribo社(これはHans Riegel Bonnの頭文字を並べたもの)を設立し、グミキャンディーを発売したのですが、そもそもこのお菓子は子供に噛む力をつけさせて歯に関わる病気を防ぐために作られたため、硬くて噛みごたえがあるのだとか(以上はウィキペディア Wikipediaの日本語版・ドイツ語版によりました)。

HARIBOの袋の裏 先日、このHARIBOを一袋食べ終わって、空になった袋を呆然と眺めていました(あー、一度に一袋全部食べたわけじゃないです、念のため)。中身同様袋もドイツ製らしく全面ドイツ語で印刷されています。大学でドイツ語の単位を取ったのでところどころわかりますが、何せ「あ〜ぁ食べちゃった」という一種の虚脱感に浸っているので辞書を引く気などわくはずもなく(そういえば独和辞典てどこにしまったかな…)、ただ呆然と眺めていたのです。

 袋の裏面に成分表示みたいな囲みがあり、100gあたりのカロリーいくつ(単位がkcalなのできっとそうだそうに違いない。しかしその前のkJって、ひょっとしてキロジュール?ヨーロッパってカロリーをジュールで測るんですかぁ?)の下に「Eiweiss: 6.2g」とあります(ssは本来はドイツ文字のエスツェット)。んー、確かEiは「卵」、weissは「白い」だよなー…と、ここで閃きました。うん、これは、タンパク質だぁ!
 タンパク質は漢字では「蛋白質」。この「蛋」という字は、中華料理で「皮蛋(ピータン)」とか「韮菜炒蛋(にらたま炒め)」などのこの字がつく料理が卵料理であることからわかるとおり、卵のことです。だから「蛋白質」とは「卵の白身の成分」ということなのですね。英語ではproteinですが、ドイツ語ではそのものずばりのEiweissだったんだ。

 と言うか、日本語の「蛋白質」の方がEiweissの訳なんだろうな、きっと。ちょっと昔はお医者さんの書くカルテはドイツ語だったし、医学衛生関係の学問は明治期にドイツの学問を取り入れたところから始まったのではないでしょうか。
 いやー、呆然と眺めていたHARIBOの袋から出発して、日本の栄養学の濫觴(らんしょう)まで想像を巡らせてしまいました。もう一袋食べよかな(おいおい)。

 ちなみに英語のproteinは卵とは関係なく、ギリシャ語の"prota"「最も重要な」という言葉から来たそうです。英語でもegg whiteという言葉はありますが、これは文字通り卵白すなわち卵の白身をさすので、料理書なんかでお目にかかります。しかしタンパク質はあくまでproteinなのでした。
| ことばのこと | 07:17 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ツバメ参上!
 本日(4月2日)の午前8時過ぎ、通勤途上の車で信号待ちをしていたら、すうっと目の端を横切る黒い影。「ツバメ?!」慌てて影を目で追うと、間違いなく今年初めてのツバメです。
 「早いな!」例年日付を記録しているわけではありませんが、今年は早い気がします。それに私のこれまでの経験では土浦で初認、それからつくばで見るのが例年のパターンでした。先につくばで見たのは記憶にある限りでは初めてです。この辺に巣をかけるのか、それともどこかへ行く途中の通りすがりなのか、いずれにしても春が進むことまた一歩。
| 身近な自然 | 19:33 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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