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まちぶせて待つわ

 このところ Facebook での情報発信が増えて、本ブログへのアップが少なくなる傾向にあります。Facebook での情報発信は手っ取り早いし反応もすぐに返ってくるのが利点です。その一方で一度発信した内容は、すぐに消えてはしまわないもの、保管や検索の面で不安や不便を感じることがあります。

 今回の記事は以前 Facebook で発信したもので、保管と検索の便のためにこちらに書き込んでおくものです。記事の日付は Facebook での発信日に合わせておきます。

 

 

 先日オーケストラの練習に向かう車の中でラジオを聞いていたら、あみんの「待つわ」がかかりました。
 あみんは名古屋の椙山(すぎやま)女学園大学で同級生同士だった岡本孝子と加藤晴子が結成したユニットで、1982年ヤマハのポプコンに「待つわ」(作詞・作曲:岡村孝子)で出場してグランプリを獲得。同年日本フォノグラムから発売された「待つわ」は大ヒットとなり、あみんはこの年の紅白にも出場しました。
で、さっそくですがこの歌のサビの歌詞はこうなのです。

 

  私  待つわ いつまでも 待つわ
  たとえあなたが ふり向いてくれなくても
  待つわ いつまでも 待つわ
  他の誰かに あなたがふられる日まで

 

 初めてこの歌を聞いた時「怖ぇ」と思いました。オトコの子はばかだから、いろんなシチュエーションを次から次へと妄想はするものの、大抵はどれも現実性も実現可能性もない偶然頼みの夢物語みたいなのが多い。しかしこの歌詞は違います。「あなたがふられる日」にぴたりとピントが合っている。今日がその日であるかどうかを判断する指標が具体的で明確である。マーラーは「いつか私の時代が来る」と言ったそうですが、岡村さんは「あなたがふられた日に私の時代が来る」と言ったわけで、その違いは歴然。ひょっとすると既にこの時点で「あなたがふられた日」から後の具体的な戦略も立てられているのではないだろうか。

 ここでふと、別の歌の歌詞が思い浮かびました。

 

  あの娘がふられたと 噂にきいたけど
  わたしは自分から 云いよったりしない
  別の人がくれた ラブレター見せたり
  偶然をよそおい 帰り道で待つわ

  好きだったのよあなた 胸の奥でずっと
  もうすぐわたしきっと あなたをふりむかせる

 

 「まちぶせ」(作詞・作曲 荒井由実)です。この場合ふられたのは「あの娘」で「あなた」はふった方なので「待つわ」の状況とは主客が入れ替わってはいますが、とにかく「あなた」がフリーになったという状況は同じです。で、何度でも言いますが(笑)オトコの子はばかだから、もし意中の女子がフリーになったら「見よ、私の時代が来た!」とばかりに舞い上がってしまうことでしょう。しかしこの歌詞は違います。「わたしは自分から云いよったりしない」のです。ド真ん中直球勝負はしないで、緩急自在の変化球でじわじわと周りから攻め、外堀を埋め、既成事実を積み重ねた結果として「あなたをふりむかせる」という戦略が描かれております。これもある意味「怖ぇ」です。

 

 ところで私がこの「まちぶせ」を知ったのは石川ひとみ盤(1981年)でしたが、多くの方がご存知のとおりこれはカバーで、オリジナルは1976年発売の三木聖子のデビュー・シングルなのですね。作者の荒井由実(当時)はこの曲を三木聖子にアテ書きしたらしい。そこで改めて三木聖子盤を聞いてみると、イントロやオブリガートをはじめ全体のアレンジがほぼ同じ(編曲は両方とも松任谷正隆)なのにまずびっくり。三木聖子という方はまったく存じ上げないのですが、とてもしっかり歌っていますね。そして感情移入が石川ひとみよりストレートで素直な感じがします。
 逆に言うと、石川ひとみ盤の方がこの曲の歌詞にこもっている「ずるさ」みたいなものが表に出てきているのです。そう、彼女なら「気のないそぶりして」話に加わったり、「偶然をよそおい」帰り道で待ってたりしそうだな、と思える。「もうすぐわたしきっと あなたをふりむかせる」にしても、三木聖子盤はその決意と強い思いが素直に表れているのに対して、石川ひとみ盤ではどこか「ふふふふ、見てらっしゃい。もうすぐあなたは私にふりむかずにはいられなくなってよ」とほくそ笑む感じが漂っている気がするのです。さらに石川ひとみ盤では最後のリフレインの「胸の奥でずっと」の最後で一瞬声がかすれるのですが、それすらも偶然ではなく計算の上ではないかと思えてしまう。しかもそういう一歩間違うとあざとい厭味ととられそうなところが逆に魅力的なのが不思議なところで・・・歌い終わった後に微笑む口元からのぞく、倉田まり子との識別ポイントといわれるあの八重歯のせいか?(笑)とにかくそうした小悪魔キャラをちゃんと演じられる人だったのですね石川ひとみという人は。
 そういう石川ひとみ盤で「まちぶせ」になじんでしまうと、三木聖子という人は「まちぶせ」よりむしろ「待つわ」の

 

  かわいいふりしてあの子
  わりとやるもんだねと
  言われ続けたあのころ
  生きるのがつらかった

 

というキャラの方が近いのではないのだろうか、なんて思えてしまって・・・

 

あ、戻った(笑)

 

 しかし「待つわ」にしても「まちぶせ」にしても、歌詞がいいですね(怖いけど)。
特に「待つわ」の1番の

 

  青く広いこの空 誰のものでもないわ
  風にひとひらの雲 流して 流されて

 

なんて、すごい!わたしとあなたのどろどろスタグネーションから一気に突き抜けてもう異次元。この歌詞はきっとこのまま天から降ってきたのではないでしょうか。
 私見ではこの1番に比べると2番の歌詞はありきたりの景色で頭の中だけで書けそうだし、「おどけて見せる道化者」や「涙なんかいらない・・・そっと涙を流す」で同語の反復使用が見られるなど推敲労作の面でもちょっと落ちるなぁ、と思われ、「誰も私の心 見ぬくことはできない」なんて厨二病のオトコの子みたいで全然いかさないのですが、それに続く「だけど あなたにだけは わかってほしかった」は、相変わらず厨二レベルのままのいかさなさなのに、歌になると不思議に生々しく訴えの迫力があって、ここだけで2番が救われていると思います。1番の歌詞の力はエピソードの具体性の迫力と天来の神力、2番のは厨に徹しきった末の底力か。

| 聞いて何か感じた曲、CD等 | 14:18 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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