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メグデンって誰?

 本ブログではこれまで時々クラシック音楽界にはびこる「なんだかなあ」についてブツブツ言ってきましたが(以前の分はこちらの文末にまとめて紹介してます)、また新しい「なんだかなあ」を発見してしまいました。

 

 ここ数日ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」の曲目紹介を書くために資料に当たっていました。手元にある『ON BOOKS SPECIAL 5 名曲ガイドシリーズ 管弦楽曲(下)ベルク→ワルトトイフェル』(音楽之友社 1984;以下「音友資料」という)と『Kleine Partitur No.23 交響詩曲「禿山の一夜」』(解説 溝部国光 日本楽譜出版社;以下「日譜資料」という)、"The Musician's Guide To Symphonic Music - Essays from the Eulenburg Scores" (Ed. Corey Field, Schott Music Corporation 1997;以下「オイレンブルク資料」という)だけでなく、Wikipedia の日本語版英語版等ネットの情報も参考にしました。

 

 これらの資料の多くがこの曲の作曲のきっかけとして「妖婆」という戯曲への付曲を挙げているのですが、問題はこの「妖婆」の作者の名前。音友資料、日譜資料、Wikipedia 日本語版など日本語の資料ではいずれも「メグデン」となっていて、日譜資料は「メグデン(Megden)」と綴りまで出しています。ところがオイレンブルク資料や Wikipedia 英語版など英語の資料ではいずれも Mengden となっていて、発音は「メングデン」ないし「メンデン」でしょうか。音も綴りも日本語の資料と一致しません。何じゃこりゃぁー!?

 

<オイレンブルク資料。下線のとおり Mengden と書かれています。>
 

 この人物に関しては、日本語も英語も含めて資料のほとんどが下の名前(メグデンまたは Mengden)しか出していないのに対して、Wikipedia 英語版は Baron Georgiy Mengden, a military friend of the composer(作曲者の軍隊での友人ゲオルギィ・メングデン男爵)とやや詳しく紹介しています。また「妖婆」への付曲についても、「原曲はメグデンの戯曲「妖婆」の情景に着想を得たもので」(音友資料)「彼がこの曲を着想したのは1860年で、メグデン(Megden)の戯曲「妖婆」(The Witch)の為の劇音楽を計画した時であったが」(日譜資料)「原型はメグデンの戯曲『魔女』に基づき構想されたオペラ『禿山』である。」(Wikipedia 日本語版)と、さらりとしかし断定的に言及している日本語資料に対し、英語の資料は「It is possible that these 'materials' had originated a year or two before in connection with a projected opera on Gogol's story St. John's Eve, but nothing is known of them or of Mengden's play. / この際に書かれた「音楽」がその1, 2年前に計画されていたゴーゴリの物語によるオペラ「聖ヨハネ祭の前夜」のためのものに遡る可能性もあるが、これらの音楽についても、またメングデンの戯曲についても、何もわかっていない」(オイレンブルク資料)「it is unknown whether any materials were written down, and, if so, whether they were transferred to subsequent projects. / その音楽が実際に書かれたのかどうか、また書かれたとしてもそれが以後の創作に転用されたかどうかは不明である」(Wikipedia 英語版)と、その音楽の存在を(譜面として)実際に確認していないことを率直に書いていて、信頼が置けそうです。なんだか日本語資料のメグデン Megden よりも英語資料のメングデン Mengden の方が確からしく思えてきました。

 

 しかしロシア人の名前のメグデンとメングデンのどっちが正しいかを、日本語と英語であれこれやっていても仕方がない。最終的にはロシア語(キリル文字)の原綴を確認しなければ決着はつきません。私はロシア語は全然わかりませんが、そこはネットの有り難さで、Mengden に相当する Менгден と Mussorgsky に相当する Мусоргский の二つのキリル文字をコピペして検索かけたら、出ましたよ。たとえばこちらИстория создания という項目に  Г. Ф. Менгден (1836-1902) という人物名が出ています。アルファベットに直すと G. F. Mengden。どうやらこの人、ゲオルギィ・フョードロヴィッチ・メングデンという方らしい・・・それ以外の内容は全くわかりませんが(笑)。

 というわけで、戯曲「妖婆」(Ведьма)の作者の名前は Менгден=Mengden=メングデンで決まりですね。もっとも「ロシア語の нг(アルファベットの ng に相当)の н(アルファベットの n に相当)は発音しないのである」といういささか例外的な規則でもあるのならカタカナ表記の「メグデン」は合ってることになるのですが、どうなんでしょうか?ロシア音楽の専門家の方々のご意見などお伺いしたいところです。

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