しばらく前から、お客様のお宅に夕食用の食材やお弁当等を配達するパートを始めました。朝10時にセンターに出勤して食材やお弁当、保冷剤等を軽トラックの貨物車に積み込み、いくつかのルートに別れてそれぞれのルートで一日に40〜50軒程度のお宅に配達して回ります。
私が担当しているルートは霞ヶ浦湖畔や土浦市北部の農村地帯から新興住宅地、土浦の郊外から中心市街地までいろんなところを通ります。その中で気づいたこと、出会ったことをぽつぽつと書いていこうと思います。
6月下旬の晴れて暑い日のこと。土浦市郊外の板谷の谷津田(台地の間に谷状に入り込んだ低地を利用した水田)に接する斜面に展開する住宅地でキジを見ました。茨城ではキジは別に珍しい鳥ではなく、5月にはあちこちで声が聞かれますし、今はわかりませんが20年くらい前にはJAXAの筑波宇宙センター構内にいるのを何度か目撃しました。しかし奈良のシカじゃあるまいし、戸建てが密集する住宅地の目と鼻の先に出るというのは茨城でもちょっと珍しいと思います。
<以下の拙文だけではよくイメージできないと思うので、参考までに付近の地形図を示します。この図の下辺から赤い道が2本V字型に伸びていますが、左上へ走るのが国道125号で、一番左上の緑色のくりりんとしたのは常磐自動車道の土浦北インターチェンジ。一方右上へ走るのが国道6号(土浦バイパス)。その右に縦に走る黄色い道は旧国道6号(茨城でロッコクという)で、地図の下が土浦・東京方面、地図の上が水戸・いわき方面です。地図の中央を東西にほぼまっすぐ流れている川に沿って、南北を少し高い台地に挟まれながら伸びている水田が谷津田、四角い赤枠で囲ったのが問題の細道。>
今回の現場ですが、上の地形図に見られるとおり、この谷津田はほぼ東西方向に伸びており、谷津田の北側の台地、つまり谷津田への斜面が南向きで日当たりがよい方は比較的早くから(遅くても1970年代から)住宅地として開発されていました。一方谷津田の南側の台地の斜面には、北向きで日当たりが悪いためでしょう、宅地は全く見られず、現在に至るまで雑木やクズなどからなるヤブが残されており(特に地図の「都和(四)」という字のあたり)、自然度高いです。この日もホトトギスやウグイスの声が賑やかで、谷津田にはコサギかアマサギか、小型のサギが降り立って餌を漁っていました。昔はホタルがたくさん見られたそうです。
さて私の担当している配達ルートは、ここで一箇所だけ、元は田んぼの畦道であったろう上をアスファルトで簡易舗装した細道を通ります(地図上に赤い四角で囲った部分)。小さくて小回りのきく軽トラだから思い切って走れますが、自分の車(5ナンバーのミニバン)で踏み込む気には到底なれません。両側はすぐ田んぼでしかも途中で逆くの字に折れているという難所です。本当は軽トラでだってそんな所を通りたくはないのですが、この住宅地と近くを走る国道とを最短距離で結ぶルートなので、地元の方には徒歩や自転車でときどき利用されてますし、だからこそ簡易ながら舗装されたのでしょう。今日も反対方向から歩いてくる女性に細道のたもとで待っていただいて、先に通らせていただきました。人と人ならすれ違えますが、車と人がすれ違うのはこの道幅ではとうてい無理なのです。
<まずその細道がどれくらい細道かを見ていただきたいので、私が配達で運転している実車と問題の細道の関係を端的に示したのが右写真です。ご覧のとおり道幅は車幅プラスアルファ、というか、ほぼほぼ車幅ですね。で、軽トラとか軽自動車は一般的にタイヤが左右いっぱいいっぱいに付いていますので、ほぼほぼ車幅の道はほぼほぼタイヤ幅の道でもあるわけです。しかし降りて写真撮ってみて初めて気づいたのですが、私は右側(運転席側)がけっこうぎりぎりの状態で乗ってたんですね〜 ^^;;。これは車がまだ細道に乗り入れたばかりの、まだ左右が田んぼでない部分で撮ってます(そうでないと運転者兼撮影者の私が車から降りられない)ので、ちょっと踏み外したくらいならすぐ戻れますが、道を進むにつれて路肩がせまーくなっていくんですね〜、おー、こわ!>
<問題の細道その1。ルートとしてはこの道を先ほどの地図の右上から左下へ、つまり住宅地のある北側台地の南向き斜面から自然度高い南側台地の北向き斜面へ向かって走ります。そこで今仮に北側台地側をこの道の入口、南側台地側を出口としましょう。この写真はまさにその入口に立ったところ。先の方で左に折れているのがわかりますか?>
<問題の細道その2。入口からしばらく進むと、道はこのように左へと逆くの字型に折れ曲がっています。もっとなだらかにカーブしていてくれればおそらくそれほど抵抗感ないのに、割と「くきっ」という感じで折れ曲がっているので、緊張感高いです。普段ならまず思い出すことはない「内輪差」という語が突然頭の片隅をよぎったりします。ドキドキ〜!
しかもこの道全体にわたって、ご覧のとおり道の端から少し中心寄りのところにひびが入っていて、それが線状に続いています。これ、ひょっとしてアスファルトが軽トラの重さに耐え切れてなくて、ある日突然このひびから崩壊する!?私としてはそれは考えたくない事態なので、いつも考えずに通過しています。が ♪あーる日とつぜん♪(トワ・エ・モア「ある日突然」の節で・・・って、そのまんまやが!)なんてね〜・・・>
<問題の細道その3。逆くの字の屈曲を乗り越えると道の出口が見えてきます。出口の先の南側台地北向き斜面は、このようにヤブ状になっています。人の手はほとんど入らず、植物・ムシ・トリ・ケモノ(?)らが繁茂し蟠踞し闊歩し充溢する世界。>
<問題の細道その4。やっと細道を渡りきって、出口から来た道を振り返った図。つまり北側台地の南向き斜面が見えています。このように戸建住宅が建ち並び、谷津田を挟んで反対側の南側台地北向き斜面とは全く対照的に人の手ほぼほぼ100%(笑)の世界。>
<問題の細道から東側を望む図。奥へと伸びる谷津田の左側が北側台地の南向き斜面(人の手ほぼほぼ100%)、右側が南側台地の北向き斜面(人の手ほぼほぼ0%)。>
その日ここにさしかかると、その細道の上に何か大きな鳥がいます。あれ、何だろうと思ったら、それは緑色に耀くキジのオスでした。体の大きさからしてまだ若いオスのようです。こんなに人に近い所にキジが!と驚きましたが、配達の途中なのでゆっくり観察するわけにもいかず、車をそろそろと細道に乗り入れると、キジは少々あわてて脇へ逃げようとしますが、道の両脇は水田なので逃げられません。結局キジを追い立てるような形で細道を渡り切ると、キジは近くのヤブの方へ逃げて行きました。
比較的早くから住宅地となった北側台地斜面から谷津田をはさんでほんの数十メートルしか離れていない反対側の台地斜面が、人にほとんど利用されずにただ放置され続けてきたという状況が、高速道路のインターに接続する交通量の多い国道に近い住宅地にキジが出るという事態をもたらしているのです。
ちなみにキジは日本の国鳥です。いいね、茨城。