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ルロイ・アンダーソンの Plink, Plank, Plunk という曲名について
 アメリカの作曲家ルロイ・アンダーソン Leroy Anderson(1908-1975)の作品に Plink, Plank, Plunk という弦楽合奏のためのかわいい曲があります。弦楽合奏といってもこの曲は初めから終わりまで弦を指で弾くピツィカートという奏法が指定されているため、弓は全く使いません。
 この曲名、日本語では「プリンク、プレンク、プランク」「プリンク、プランク、プランク」「プリンク、プランク、プルンク」等の数種類の表記があります。英語の発音に近い表記として Plink はプリンク、Plunk はプランクでほぼよいのですが、真ん中の Plank が問題です。この a は [ae] みたいな発音記号で表される、中学校で初めて英語を習うときに(今では小学校から習うらしいが)「アとエの中間の音」みたいに教わる音、have とか can のあの発音です。
 ところで私は中学2年のときは名古屋市千種区(現在は名東区)の中学校にいたのですが、この中学校の英語のK先生は have を「ひゃぶ」と発音していらっしゃって、転校生の私(1年のときは岡山県倉敷市の木造校舎の中学校でした)は「さすがは名古屋だぎぁ」と思ったものです・・・ああ、これはもう半世紀以上昔の話ですから、今の名古屋市の中学校では勿論そんなことないと思いますよ (^^;;
 で、この have とか can の a の音ですが、日本語にするときには have だと「ハブ」、 can は「キャン」というふうに、概ね「ア」段を当てるのが通例になっていますので、このルールを Plank にすなおーに当てはめると「プランク」となるわけですが、これだと次の Plunk の「プランク」とかぶってしまいます。そこで Plank と Plunk を何とか区別しようとして、Plank の方をもちょっと蓮っ葉な(死語?)感じにして「プレンク」にしたり、逆に Plunk の方に遠慮してもらって「プルンク」とローマ字ふうに書いてみたりするために、いくつかのヴァリエーションが生まれているわけですね。ちなみにこれを K先生ふうに言いわけるなら「プリンク、プリャンク、プランク」となって、三つが明確に区別されるわけで・・・わーK先生ごめんなさい☆

 さて、この Plink, Plank, Plunk という曲名ですが、これはどういう意味なのでしょうか?ネット上にはたとえば

  • 曲名の Plink, Plank, Plunk! は、「ぽろん、ばたん、どすん!」といった擬音語を表す。(こちら

  • プリンク・プレンク・プランクとは物がカタン、ポトンと落ちる音のことだそうです。辞書には「Plunk」はそういう意味で載っていましたが「Plink」「Plank」は無かったです、動詞の活用形でもなさそうなので意味不明ですスラングかも知れません。(こちら

  • PLINK(プリンク)、PLUNK(プランク)ともに英語では弦楽器をポロンと弾くという意味、これにPLANK(プレンク)という語呂合わせと思われる言葉を加え洒落を効かせたこの曲は、あたかも弦楽器を一斉にはじく擬音語を捩って「プリン!プレン!プラン!」がもっとも原語の発音に近いのではないだろうか?(こちら


  •  

といった諸説が見られます。いずれもまずは辞書を引いて、それを取捨選択敷衍していらっしゃるようで、私も後述のとおり辞書で plink、plank、plunk の3語を引いてみて、それぞれの説にそれぞれの根拠があることがわかりました。
 しかしこれらの説は、この曲名が擬音語であるという点では大きく一致するものの、細部はなおまちまちであり、しかもなぜ似たようで微妙に違う擬音語が3つ、この順番で並んでいるのかということまでは説明されていません。私も以前から漠然と弦のピツィカートの擬音であろうなぁと思って済ませていましたが、一昨日の夜、風呂に入っているときに、なぜこの3語がこの順番で並んでいるのかという理由を「発見」したのです! まあ「発見」とは言っても内容は他愛もないことなので、「なに、そんなの今頃わかったの?」と呆れる方もいらっしゃるかとは思いますが、とにかく独力で「発見」したことではありますので、一応ここに書いておきます。
 まずは虚心にこの3語を英和辞典で引いてみますと、1番めの plink は「ポロンと鳴る / 鳴らす」、3番めの plunk は「ポロンと鳴らす /(重いものを)ドスンと落とす」という動詞で、おそらくいずれも擬音語(plunk が「ドスン」はいかがかとも思いますが、何せ犬がバウバウ吠える国のことですのでその辺は、まあ・・・)で、この曲にもうまく当てはまります。ところが2番めの plank は「板を張る / 板の上で焼く /(板の)上にドサリとのせる」といった意味の動詞で、ラテン語起源の古フランス語 planca(= board )から来た語らしく、plink、plunk とは明らかに毛色が違い、この曲ともなじみません。上に掲げた諸説もこの plank の扱いに困ったらしい様子が見て取れます。こいつ、なんでここにいるの!?みたいな。

 ところで私は一昨日の夜、風呂に浸かりながら虚心にこの3語をこの順番どおり唱えてみました。plink, plank, plunk...plink,plank, plunk...plink, plank, plunk... あれ、この音、何かに似ているな、と思いました。そうだ、drink, drank, drunk だ、こりゃきっと誰かが Drink, Drank, Drunk って替え歌(替え曲か)作ってそうだよな、とそこまで思って、はっと気がつきました。なんだ、この曲名は不規則動詞 plink の活用じゃないか!

 風呂から上がって辞書で確かめてみると、しかし動詞 plink には過去形・過去分詞形が示されていないので規則動詞のようです。規則動詞なら原形、過去形、過去分詞形は plink, plinked, plinked です。それに plunk もそれ自体が動詞の原形で、plink の過去分詞形ではありません。

 しかーし! そこはタイプライターとかサンドペーパーとか、さらには壊れた時計まで音楽にしちゃうほどいたずら心と洒落のきいたルロイ・アンダーソンです。おそらくウィスキーでも Drink しながら(かどうかは勿論わかりませんが)「ポロンと鳴らす」という意味の規則動詞 plink をちょっと斜め右後方あたりから見なおして、「弦楽器を弓を使わずに鳴らす」という意味の、そして drink と同様に plink - plank - plunk と活用する架空の不規則動詞 plink を創作したのではないでしょうか。そしてこの動詞の活用をそのまま使ったこの曲のタイトルを見た英語ネイティブが「おや、これは普通の plink(弦楽器をポロンと鳴らすという意味の規則動詞)とは違うのかな?」と訝(いぶか)しく思い、snap した弦が指板を叩く「パチン!」という音やピツィカートのグリッサンド、楽器の胴体を手のひらでこする「シュッ / キュッ」という音が入るのを聞いて、「なるほど、ただの plink(弦楽器をポロンと鳴らす)じゃないんだな」と納得するように仕組んだのではないかと思うのです。

 というわけで、この曲名「Plink, Plank, Plunk」は、「弦楽器をポロンと鳴らす」という意味の規則動詞 plink と綴りは同じだが「弦楽器を弓を使わずに鳴らす」という意味の架空の不規則動詞 plink の活用を示したものである」という仮説を提出させていただきます。

 ちなみにこの曲の替え歌(曲)としての存在が強く推定される「Drink, Drank, Drunk」ですが、もし私が作るとすれば、まず弦楽器はピツィカートとアルコ(弓奏)が半々くらいずつぐじゃぐじゃっと入り乱れて「ピツィカートだろ?」「うそぉ!」とか言いながらざわざわっと始まり、snap の指示は toast に置き換えてその都度乾杯、楽器を手でこする所は酔っぱらいの奇声等 ad lib. とし、da capo してからは酔っ払った管楽器も乱入、終わりに近づくにつれて辛抱できずに勝手に乾杯して飲み始める奴らが続出、結局最後はぐだぐだになってお客さんと一緒に「乾杯、乾杯!」の大合唱と拍手の中、曲が終ったのか終わらないのかもわからない・・・みたいな感じかなぁと(笑)。
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