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「台北國立故宮博物院 神品至宝」と法隆寺宝物館
 東京国立博物館で6月24日から9月15日まで台北國立故宮博物院展「神品秘宝」が行われています。特に7月7日までは「翠玉白菜」が来ていたので大変な人気だったようです。混んでいそうなのであまり気がすすみませんでしたが、8月31日放送の「日曜美術館」(NHK Eテレ)で特集していたのを見て、やっぱり見たい気がしてきました。ちょうど夏休みも終わり、平日ならそれほど混んではいないだろうと考えて、9月3日(水)の午前中に見に行きました。

 さすがに入館時の行列はなかったものの、どこでも自由に見て回れるほど空(す)いているわけではなく、特に入口近くの展示室は混み合ってなかなか展示品に近づけませんでした。特に書や絵画はお客様の中にご自分でなさっている方が多いようで、最前列がなかなか動きません。また展示品の保護のために照明を絞っているので、絵画はみんなどよーんと薄暗く、人の肩越しでは図柄すらよくわからない。どうせ図録を買う予定にしていたので、書画については肩越しに見えればラッキーくらいの感じで、ほどんどまじめに見ませんでした。

<上写真は国立西洋美術館の前あたりから動物園方面を望む図。週末や夏休み中は子供も大人もごった返すこの辺りも、夏休み明けの平日なんてこんなもんです。左側の東京文化会館は6月1日から11月30日まで改修工事のため休館中です。>

 これに対して白磁の器や絵付の壺などの焼き物は照明が明るくてよく見え、書画に比べると人の動きもスムーズで、比較的近くから色合いや質感を楽しめました。また刺繍による絵画「刺繍咸池浴日図軸」の、絹の艶や影のつき方が光の向きによって変わり、まるで波がうねるように見えるさまはさながら3Dの動画で、これは図録では到底再生できません。実物を見ることができてよかったです。
 今回私が特に興味を持って見たのは、清(しん)の乾隆(けんりゅう)帝の「紫檀(したん)多宝格(たほうかく)」でした。高さ20僉幅・奥行ともに25僂曚匹了臙廟修了由僂と△任垢、四つの側面に仕込まれた回転式の引き出しや台座部に、古代から前代の元にまで及ぶ歴代王朝の宝物のミニチュアや装身具、文房具等が無駄なく整然と収められています。清朝は漢族ではなく満州族の王朝ですが、それにもかかわらず / それだからこそ、自分が歴代王朝の正当な後継者であることを形にして自ら確認したかったのではないかと思うと、感慨深かったです。

<上写真:多宝格の形状はちょっと文章では伝わらないと思うので、図録の写真でご覧ください。>

 この展覧会の図録がまた充実していて、なんと重さ約1.8Kg!(拙宅の体重計による計測)・・・いやいやそこじゃなくて、内容ですよ。縦約30儔L22.5僂梁膩燭糧酬燭407ページ+英文目録15ページ、展示物の写真と一点ごとの解説以外にも、序章総説で展示内容を概観し、主要な作品については21篇のコラムでさらに詳しく解説し、年表や書画釈文(書かれてある字を活字に起こしたもの)も付いている充実の一冊です。しかもカバーがリバーシブル。お洒落!。

<左写真は図録表紙。右写真は黄色のカバーをめくってみたところ。ご覧のとおり黄色いカバーの裏面が赤いカバーになっていて、その日の気分に合わせてカバーを掛け替えて楽しめます・・・って、そんなことせんやろ、普通(笑)。>

 さて、せっかく東博へ来たのだからと、続いて法隆寺宝物館を訪れました。法隆寺宝物館は今の新しい建物(左写真)になる前は毎週木曜日のみ開館、しかもその貴重な木曜日も雨だと休館という狭き門の難関博物館で、どちらかというと展観より保存に重点が置かれていたようですが、私にとっては数少ない東京の中の奈良空間だったので、時間を見つけては通ったものです。幸い建物が新しくなってからは他の館と同様に開館していて(ただし伎楽面を収める第3室は年3回、期間を定めての公開)しかも展示方法も以前より改善され、特に50数体の金銅仏は、以前は壁面の大きい展示ケースに並べて展示されていましたが、今は1体ずつ(対になるものは一対で)透明ケースに入り、お互いに間隔を空けて配置されているので、各像を四方から見ることができます。私はこの日が新しい建物になって初めての訪問だったので、初めて各仏像を背中から拝しました。背面は正面よりも飾りが少なくシンプルですが、頭部や衣紋が背面まで手抜きなく作り込まれていることがよくわかり、また数体には背部に光背を取り付けるための突起や台座などがあることも確認できました。また後ろから見るとお顔や装飾が見えない分全体のプロポーションがよくわかり、いかにもバックシャン(死語)なお像もありました。

 ところで、その木曜日のみ開館していた頃には展示室の中に自分一人だけということもよくあったので、いくら平成館が故宮博物院展で混雑していても、法隆寺宝物館は閑古鳥が鳴いているに違いないと高を括って来たのですが、実際にはそんなことはなく、一展示室に10人くらいいる瞬間もあって、びっくり(昔は人が10人もいたら「うわ、どうした!?」とびっくりしちゃうほど、人が少なくて静かだったのですよ)。
 その原因の一つは故宮博物院展と同じ9月15日まで、法隆寺宝物館2階の第6室で開催されている「甦った飛鳥・奈良染織の美―初公開の法隆寺裂(ほうりゅうじぎれ)―」という特別展示のせいと思われます(右写真は特別展示のパンフレット)。以前の法隆寺宝物館では糞掃衣(ふんぞうえ:ぼろ裂を集めて縫い綴った僧衣)や幡(ばん:寺院の天井などから吊り下げる荘厳具(しょうごんぐ)・装飾品)などの繊維製品は展示されていましたが、それ以外の染織品(の残欠)は昭和12(1937)年頃からガラスに挟んだ状態で保存され、公開されてはいませんでした。しかしガラス自体が曇ったり繊維がよれたり紛体化するなどの問題が出ていたことから、平成22(2010)年からこれらの補修に取り組み、繊維の歪みを整えて和紙等で裏打ちし、紛体化した繊維にはエチルセルロースを含浸させて固定するなどの方法をとり、今回公開に至ったものとのことです。中には聖徳太子の死を悼んで妃の橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)が作らせた「天寿国繍帳」(622頃)の小さな断片もあり、1400年近く前のわが大和人(やまとびと)の手わざを目のあたりにして、故宮博物院の神品至宝とはまた違った感動を覚えました。実はこの特別展示のことは事前に知らなかったのですが、来てよかった。

 お客様が予想より多かったもう一つの原因と思われるのは、東博内に2か所あるホテルオークラのレストランのうちの一つが、ここ法隆寺宝物館にあること(もう一つは東洋館別棟にあり、そっちの方が倍くらい大きい)。あわよくばここでゆっくりと昼食を・・・などと思っていましたが、主にご年配のご婦人たちで順番待ちが出ている盛況ぶり。ここでの昼食はあきらめよう。

というわけで、中国と日本の貴重な文物を鑑賞した後は、せっかくここまで来たのだから昼食がてらもうちょっと足を伸ばしてみます。以下別稿
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