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「カントリー・ロード / Take me home, country roads 」の歌詞再び

 以前「カントリー・ロード」の日本語歌詞は原曲「Take me home, country roads」とかなり違うよ、という記事を書いたときに、原曲の歌詞をざっくり訳しておいたのですが、いくらなんでもちょっとざっくり過ぎたのと、その後「やっぱりあれは違うよなぁ」と思うようになった点がいくつかあって、気になって仕方ありません。小心者なもんで〜(^^;)
 もともとポップスの歌詞はダブルミーニング、つまり表の意味と裏の意味が二重に重なっているものが多く、この曲もウェストバージニア州や mountain momma(後述)を女性に喩えているせいもあって、なかなか一筋縄ではいきません。また外国語の歌詞一般に言えることとして、現地の人なら説明不要ですっとわかることが異国人である我々にはわからない、ということも多いように思います。そんなわけでまだまだ心もとないのですが、前の記事のざっくり訳の訂正も兼ねて、今回はくどくどと注を入れていこうと思います。

Almost heaven, West Virginia

 まずこの Almost heaven が曲者(くせもの)で、もちろん「ウェストバージニアは天国みたいによい所」という意味もありますが、Wikipedia にもあるとおりこの州はアパラチア山脈中にあり、山岳州(The Mountain State)と呼ばれているということですから、標高が高い分天国に近い、という含意もあるのではないかと思われます。現地を知る人なら「ああそうだね、うまいこと言うね」と思うのかも知れません。
 ちなみにウェストバージニアについて Wikipedia を参考にもう少し触れておくと、アパラチア山脈にあるということで海には面していません。州の住民のうち1.1%のみが外国生まれで、50州の統計値の中では最低ということですから、どちらかというと保守的な土地柄ではないでしょうか。また主要な資源は石炭ですが、1人当たりの収入が3番目に低い州ということですから、経済的な豊かさを享受しているわけではないようですね。
 また歴史的にはお隣のバージニア州から分かれたのですが、バージニアという州名は the Virgin Queen 処女王と呼ばれたイングランド女王エリザベス1世に由来しており、州名自体が女性(Virgin)を暗示しています。こういった事情が後の歌詞でじわじわと効いてくるのです。

Blue Ridge Mountains, Shenandoah River

 ブルーリッジ山脈、シェナンドー川。いずれも固有名詞です。ただし Wikipedia によると、ブルーリッジ山脈はアパラチア山脈の一部ではあるがウェストバージニア州までは延びておらず、シェナンドー川もごくわずかな部分がウェストバージニア州をかすめる程度だそうです。おやおや・・・

Life is old there, older than the trees
Younger than the mountains, growin' like a breeze

 私はここは「そこ(ウェストバージニア)での人々の暮らし [life] は昔から変わらない古い [old] スタイルだ」という意味と、「ウェストバージニア州が生きてきた年齢 [life] は木々よりも上で、しかし山々よりは若い」というダブルミーニングと取りました。続く (Life is) growing like a breeze は、breeze を動詞に使った breeze into a place or a position (= enter into it in a very casual or relaxed manner) や breeze through something (=cope with it easily) 等から類推して、「人々の暮らし / ウェストバージニア州の年齢は、今日も易々と安穏に積み重ねられている」という意味合いであろうかと思います。多事多忙な大都会とは対照的に、昔ながらの肩の力の抜けた、保守的な暮らしぶりである、ということでしょう。

Country roads, take me home
To the place I belon'

 take me home 「私を家 / 故郷まで連れて行け」はよいとして、to the place I belong の to も二重の意味・役割に使われている感じがします。つまり(take me)to the place と続いて目的地を表す前置詞のニュアンスも持ちながら、belong と組み合わさって帰属先を表す前置詞(I belong to the place を the plece I belong to と倒置して先行詞 home の修飾節としたときに、前置詞を文末に置くのを嫌って the place の前に出したと見る)の役割を果たす、という両義に感じられます。

West Virginia, mountain momma
Take me home, country roads

 mountain momma がたとえば Blue Ridge Moountains のようにキャピタライズされていれば固有名詞のマンマ山でよいと思いますが、そうではないのでここは「母なる山」でしょう。mountain は単数形ですが必ずしも独立峰でなく連山、山地でも可。ウェストバージニア州が山岳州(The Mountain State)と呼ばれていることを思い合わせると、ここの West Virginia と mountain momma は同格で、同じ対象の言い換えとも思われます。「ウェストバージニア、母なる山地よ」とでもいったところでしょうか。

All my mem'ries gather' round her
Miner's lady, stranger to blue water

 私の全ての記憶の集まる先である「彼女」は、生身の女性とウェストバージニア州 / 母なる山のダブルミーニング。2行目以下の主語もその「彼女」で、(She is)miner's lady, (she is)stranger to blue water と考えます。stranger to blue water とは「青い海に不案内な者」で、ウェストバージニア州が海に面していないのでこう言っています。

Dark and dusty, painted on the sky
Misty taste the moonshine, teardrop in my eye

 やや難解ですが、1行目の文の主語も「彼女」(she is dark and dusty, she is painted on the sky)と考えると、ここではウェストバージニア州の代表的な資源である石炭の鉱山のことを言っているように思われます。「(坑内は)暗くて(粉塵で)ほこりっぽく、(鉱山は)空にペンキで描かれている(書き割りのように見える)」といった意味合いでしょうか。
 次の moonshine は「月の光」と「密造酒」のダブルミーニングで、「涙のために月が霞んで見える」のと「うすらぼんやりした味の(安い))密造酒を飲んでいると情けなくて涙が出る」の両義かと思います。ウェストバージニア州の1人当たり収入が全米で3番目に低いというのがここで効いてます。

Country roads, take me home
To the place I belon'
West Virginia, mountain momma
Take me home, country roads

 1番と同じリフレインですが、2番の歌詞がウェストバージニアのあまりよくないところを歌ったものなので、気持ち的には1番のリフレインより若干サガってるかな。

I hear her voice, in the mornin' hour she calls me

 この「彼女」も生身の女性とウェストバージニア / 母なる山とのダブルミーニング。しかし「朝、彼女が電話をかけてきて」はよいとして、母なる山が自分を呼ぶ声を聞くとはどういうことでしょうか。私はラジオの朝の番組でたまたまウェストバージニア州のニュースでもやったんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。普通に in the morning ではなく in the morning hour いう言い方もちょっとひっかかります。

The radio reminds me of my home far away

 ここで「ラジオが遠く離れた故郷を思い出させる」と言ってるので、私は何かそういう番組が流れてきたのではないかなと思ったのです。

And drivin' down the road I get a feelin'
That I should have been home yesterday, yesterday

 「車をずっと走らせていると、(実際にはいなかったのだが)昨日のうちに故郷にいるべきではなかったのかという気がしてくる」のです。

Country roads, take me home
To the place I belon'
West Virginia, mountain momma
Take me home, country roads

 このリフレインはたぶん2番よりも1番よりもテンション上がってるでしょう。ちなみにジョン・デンバーの音源ではこのリフレインが繰り返されるうちに、バックコーラスの歌詞が take me home down, country roads となり、 down という字が加わります。「故郷めざして、ずっと」という感じでしょうか。気持ちのベクトルの矢印が長ーくピンポイントで故郷に向かって、車も一路故郷へ向けて走ってますね、きっと。


 というわけで、日本語の「カントリー・ロード」の歌詞がどこか無理して自分を抑えて、内心は帰りたいのだけどどうしても故郷には帰らない、と頑なになっている(こちらの歌詞は転載いたしませんので、各自でご確認ください)のに対して、英語の歌詞は上で見たとおり「そりゃぁいいところばかりじゃないけど、俺やっぱり故郷に帰るよ」という内容なのです。なんで日本語の歌詞はこんなに違っちゃうのかなぁ。

 私が買ったアルバム「スタジオジブリの歌」でも「日本語訳詞/鈴木麻美子 補作/宮崎駿」となってますが、この日本語歌詞は明らかに「訳」じゃない。それとも一度は「訳」したけど「補作」が(「訳」としては)めちゃめちゃにしちゃったのかな?

 いずれにしてもこれが「訳」なんて「嘘・大げさ・紛らわしい」でJAROもんですよ。「作詞」です。創作です、完全に。「日本語訳詞」ではなく「作詞」と表示すべきです。


 ちなみに英語で聞くなら、小野リサさんが歌ってるやつがほわぁんとしてて好きです、私は。

| 聞いて何か感じた曲、CD等 | 23:32 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
ふむふむふむ。。。ほーほさん。深読みですなぁ。。。私はもっと単純に考えてましたですよ。この歌を歌っているのは、元炭鉱で働いていたおっちゃんか青年。Mountainはラテン語系で言うと、La montagnuで女性。炭鉱にいたものにとっては恋人みたいな存在だったのでせう。おまけに、ラジオは、自分とこの方言じゃない話し方で、それを聞いてなおさら、自分はここの人間じゃないということを実感。Blue waterってカリフォルニアのことじゃないのかなぁ。そんなにかっこよくねえですよ、俺は、ってな感じで、ばい煙が黒く空に舞い上がるあのほこりっぽい町に帰りたくて、いてもたってもいられなくなり、車を故郷へ走らせる。もっと早く帰るべきだった、あそこに早く帰るべきだったっていう、帰るんだっていううれしい気持ちと昔を思い出す懐かしくて甘酸っぱい気持ち。みたいに、思ってましたよ。
小野リサさん。人気ありますね。私の知り合いの方々も何人か彼女の歌声に惹かれています。
| とらのすけ | 2011/09/16 8:28 PM |
おお〜、興味深いご指摘の数々ありがとうございます。Mountain はラテン系の語ですから名詞自体が女性だったのですね。ゲルマン系では山は男性ですが、語が違います(Berg)。
ラジオと dialect の関係は目からうろこです。我々にはよくわかりませんが、確かに南部なまりとか英語にも方言がありますね。
さらに Bluewater という場所がカリフォルニアにあるのも目からうろこでした。これもダブルミーニングか。東のウェストバージニアから西のはずれのカリフォルニアまで来れば、そりゃ訛りも違うだろうし、里心もつくでしょう。この歌ほんとにいろいろなものが重なってるのだなと実感しました。
| ほーほ | 2011/09/18 9:56 AM |
今度地元の小ライヴでこの曲を歌うため
歌詞を覚える一貫として和訳も探していたら
こちらに辿り着きました。
とても興味深く、そして、すっと心に入ってくる翻訳に感激しました。
| 伊勢佐木鋼鉄会.2 | 2015/12/21 6:00 PM |
コメントありがとうございます。好意的に受け入れていただき、恐れ入ります。ぜひとらのすけ氏のコメントもご参考になさってください。とらのすけ氏は英国人と結婚して英国で生活し、その後オーストラリアの日本人がご本人含め二人しか住んでないとか言うカウンティに住んでいて、私などとは英語力がまるで違いますので (^^;
| ほーほ | 2015/12/21 11:18 PM |
この歌、好きだったんですが、ジブリアニメで変質されてしまい、ただの懐古主義的な歌になっちゃいました。残念です。

この歌、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかな。
語学力の問題じゃないと思います。

気持ちの上では、こんな感じで行け行けな感じ。
「田舎道よ!俺を故郷に連れて行け。
俺のいるべきところだ。
西バージニアだ。いい女たちのいるところだ。」

ブルーリッジ山脈も、西バージニアに属すると属さないとか
あまり関係がないと思います。
「ブルーリッジ山脈が見える。シャナドア川もある。」
見えればいいんですよ。行政的な線引きはあまり関係ないかと。
allmost heaven は天国という宗教的な意味より、
ほとんど雲の上だぜ。 って感じ。

この歌は、みんなが酒を飲みあい元気よく歌える歌だと思いますよ。

| gomuboatの釣り人 | 2017/03/04 7:53 PM |
gomuboatの釣り人さま、コメントありがとうございます。

> この歌は、みんなが酒を飲みあい元気よく歌える歌だと思いますよ。

うん、そうですね。ダブルミーニングとか何とか読めばそうも読めるけど、そんなこと考えなくたって全然かまわないなあ、と、今は私も思います。このときはいろいろと掘り返すことに興味を覚えていたのです。ちょっと肩に力も入っているようですね。
この記事を書いてから6年半ほど経ちましたが、今は今でまた違うことを掘り返して楽しんでおります。もう少し肩の力も抜けているかなあ。
また機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
| ほーほ | 2017/03/04 11:52 PM |
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