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食に関する本 その5:「増補 江戸前鮨仕入覚え書き」(長山一夫)
増補江戸前鮨仕入覚え書き ちょっと間が空きましたが、このシリーズまだ生きてます。もうしばらく続く予定です。

 先日紹介した『豆腐百珍』について、ある方から「美味しんぼ」にも出ていたという情報をいただきました。ありがとうございます。私は「美味しんぼ」全然読んでないのですが、取材も相当しっかりされているようですね。
 取材のしっかりした食の本ということで思い出したのが、今回紹介する『増補 江戸前鮨 仕入覚え書き』(長山一夫 2004 アシェット婦人画報社)です。私は江戸前鮨はド素人ですが、この本の情報は質・量ともにすごいと思いました。

 一言で言うと、40年以上の経験を持つすし職人が、仕入と調理の経験に食材産地での現地調査の情報を加えて書いた鮨の本、ということになりますが、旬のネタ紹介+グルメリポートみたいな気楽なものを想像すると全然違います。
 実は本書の内容(ただし「増補」前のもの)はオンラインで読めるので、そちらで内容と書きぶりをご覧いただくのがよいと思いますね。こちらのHPの「目次」ボタンから入っていけます。

 …いかがでしょう。情報満載で読み応えじゅうぶん、しかも本音というかぶっちゃけモードで書かれた内容もあり、江戸前鮨の常識の見直しを迫る点も多いように思います。行き過ぎた「活け」偏重――それによって熟成による魚本来の旨味が味わえないだけでなく、養殖魚の弱点を糊塗し、無駄に魚の値を上げることで産地の業者や流通業者、消費地の料理店をいたずらに喜ばせることになる――への再三の批判は印象深い。
 それと、旨い魚の描写が官能的ですね。単に食材にほれ込んでいるのとは違う、肉食獣が獲物に対して抱く(かもしれない)愛情というか、最高においしく食べてやることが最高の愛し方なんだというか、とにかく著者の食材に対する特別な感情が感じられて、不思議な迫力があります。

 すしはもともと穀物のデンプンの発酵によって生成される酸で魚や肉を長期保存する保存食。ところがなまじそういう勉強をしてしまうと、古態を残す近江の鮒ずし(熟れずし)や北日本の日本海側に分布するいずし、西日本各地の押しずしなどを有難がる反面、酢飯にナマの魚を乗せただけの握りずしなんて、あんなもん超インスタントの似非ずしやん、と軽く見てしまいがちなのです。しかし圧倒的に握り主体であとは巻き物少々とせいぜい稲荷くらいしかない回転寿司チェーンが全国を席捲し、「食べ放題ツアー」にはシャリ玉を捨てて上の魚だけ食べまくる客が殺到するという今日、日本のすし文化はどこへ行くのでしょうか…まぁその辺はケセラセラ、Tomorrow is another day と軽く流して、と(^o^;)。

すしの本 『すしの本』(篠田統(しのだ・おさむ) 1966 柴田書店; 2002 岩波書店(岩波現代文庫))は食物史の観点からすjしを概観するならまずは読むべき基本書。岩波現代文庫に収められて入手しやすくなったのは大変ありがたい。



すしの話 文字主体の『すしの本』ではちょっとカタいなぁという向きには、同じ著者による美麗カラー写真多数・新書判の『すしの話』(篠田統 1978 駸々堂出版(駸々堂ユニコンカラー双書))があったんですが、出版元が2000年に倒産したため現在では入手困難。同じシリーズの『ごはんの話』『豆腐の話』も篠田氏の好著だったが、残念至極。>



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