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定期演奏会を指揮することになりました
 新年早々ではありますが、実はこのたび私の所属する東京サロンオーケストラの次回の定期演奏会を指揮することになりました。これまでも老人センターや病院、学校などでの比較的小さいコンサートの指揮兼司会は私や他の団員が交替で務めてきましたが、定期演奏会は年に一回のメインイベントですし、交響曲を中心とした重量級のプログラムでもあるので、これまではプロの指揮者にお願いしてきたのです。約半年間の練習も含めて定期演奏会を指揮するというのは、それ以外の演奏会とは違う責任の重さを感じます。

東京サロンオーケストラ第36回定期演奏会
日時:2008年5月17日(土)午後2時開演(たぶん…)
場所:板橋区立文化会館(東武東上線「大山」駅より徒歩3分)
曲目:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲(ワーグナー)
   組曲「仮面舞踏会」(ハチャトゥリアン)
   交響曲第6番「田園」(ベートーヴェン)

 どの曲もコントラバス奏者としては演奏したことがあるし、交響曲など大きな曲も練習指揮(下振り)はやったことがありますが、定期演奏会の本番指揮者というのは今回が初めてなので、気合を入れて勉強し直すことにしました。
 この3曲のうち「マイスタージンガー」はこれまでに何回も演奏したことがあり、先月も土浦交響楽団の定期演奏会でやったばかりなのでとりあえず置いといて(実はこれが落とし穴だったりして…おお、こわ)、「仮面舞踏会」と「田園」から対処することにしました。
「仮面舞踏会」への対応
 実は直前にアップした「ハチャトゥリアン「仮面舞踏会」の原作を読んでみた」がこの曲に対する対処の第一弾(2007/12/22読了)。曲に対するイメージ作りに大変役立ちました。
 また手持ちのスコア(全音楽譜出版社版)はA5版で指揮に使ったり書き込んだりするには小さいのでA4版(見開きA3)に拡大コピー(2007/12/30)し、糊付けして少々アブナッカシイながら(不器用なんす…)スコアの形にしました(2008/1/9終了)。

「田園」への対策
 ベートーヴェンの交響曲の中でもとりわけ好きな曲ですが、おそらくお客様もよくご存知の超有名曲だけに怖いのも事実。またオケのメンバーもそれぞれ自分のイメージを持っていますから、そのままでは各人各様の音楽が並列的に鳴るだけで「サロンの田園」にまとまりません。そこで自分のイメージはひとまず措いて、曲を一度突き放して、いわば「他人の目」で見直してみることにしました。実はこの曲については「他人の目」で見るためのよい資料をいくつか持っているのです。

Score-CriticalCommentary資料1 スコアとCritical Commentary
 今回の演奏にはジョナサン・デル・マー校訂のベーレンライター版を使います。この版はいわゆる「原典版」で、それ自体網羅的・批判的な校訂を経た良質なテクストですが、私がこの版の一番の特長と思うのは、詳細なCritical Commentaryがスコアと同時に、しかも入手しやすい形で刊行されていることです(お値段だけはもっと何とかしてほしかったけど…)。このCritical Commentaryを参照することによって、慣用版(ブライトコプフ(旧)版)と異なったテクストを採用した理由を知ることができ、ベーレンライター版のテクストそのものをさらに批判的に見直すこともできます。


KubotaScore資料2 久保田悠氏書き込みのスコア
 土浦交響楽団は2002年12月1日の第46回定期演奏会で「田園」を演奏しました。そのとき指揮者の久保田悠氏はベーレンライター版の小型スコアしかお持ちでなく、私の持っていた指揮者用大型スコアと引き換えにご自分の書き込みの入った小型スコアを譲ってくださったのです。このスコアにはアナリーゼや楽節構造、転調のような曲の分析結果からパートの入りの指示のように現場で役立つもの、さらにはテクストの変更の可能性に至るまで多くの実践的な書き込みがあり、プロの指揮者の手の内を知ることができる貴重な資料です。


Weingartner資料3 "On the Performance of Beethoven's Symphonies" (Felix Weingartner, 1906,1928)
 往年の名指揮者ワインガルトナーによるベートーヴェンの各交響曲を演奏する際の実践的なアドヴァイス。内容はベートーヴェンのメトロノーム指定に対する変更、ダイナミクスの追加、アゴーギグ、作曲当時の金管楽器の制約(自然倍音のみのため低音側で使える音が少ない)ゆえの書法への補充などが主なもの。最終稿が書かれたのが1928年と古いのですが、彼が提案した改変の多くがその後の世代の演奏家にも採用されて定型化したので、私くらいまでの世代のクラシック音楽ファンには違和感なく受け入れられてきました。いっぽう新即物主義や古楽運動の進展にともなって現在ではこうした改変は排除される傾向にあり、私自身も今ではワインガルトナーの提案の多くはその歴史的使命を終えたと感じます。しかし金管の低音域の補充に関する提案のいくつかは効果を確かめた上で採用してもいいかも、と思っています(2007/12/30読了)。

Del_Mar資料4 "Conducting Beethoven Vol.1 The Symphonies" (Norman Del Mar, 1992)
 ベーレンライター版の校訂者ジョナサン・デル・マーの父で指揮者だったノーマン・デル・マーによる「Conducting ほにゃらら」シリーズの一冊。これもワインガルトナーのものと同様にベートーヴェンの各交響曲を指揮する上でのアドヴァイスですが、内容ははるかに現代的ですし、またジョナサンの父親だけあってテクストに関する言及も見られます。第三楽章まで読了したところですが、実はそのアドヴァイスの多くが資料2の久保田氏書き込みと重なっています。久保田さんさすがぁ〜。


 というわけで、これから折に触れて新米定演指揮者の奮戦記を書いていきたいと思いますが、まずは1月19日(土)の初練習めざしてノーマン・デル・マーの資料4の読み込みと、それぞれの曲の楽節構造の分析とアナリーゼをできるだけ進めないといけません。あーでも今度の月曜日(祝)にはいわき交響楽団さんの練習に出るからそれまでにショスタコーヴィチ5番の音取りもしなくちゃ…あーそういえば会社行って仕事もしなくちゃ、か(それ一番後回しかよ(汗))

DelMarCD 上記"Conducting Beethoven"の著者ノーマン・デル・マーが指揮をした録音で私が持っているたぶん唯一のCDは、ソロがルッジェロ・リッチ、オケがシンフォニア・オブ・ロンドンで入れたブラームスのヴァイオリン協奏曲(Biddulph LAW 002)。実はこのCD、第一楽章のカデンツァをリッチの自作も含めてなんと16種類収録!トラック順をプログラムすればその日の気分でカデンツァを差し替えて聞けるという、知る人ぞ知るなんともブラームスオタクなCD。ちなみに特にプログラムしないで聞いていくと、デフォルトは最も一般的に聞かれるヨアヒムのではなく、ティンパニと弦楽アンサンブル付き(!)のブゾーニのカデンツァです。いや〜これは一本取られましたなあーっはっはっはっはっは〜♪
| 定演指揮者奮戦記! | 00:43 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
わぁお!
定期演奏会指揮者デビュゥおめでとうございます〜〜!
それだけ資料をお持ちなら、ほんと、心強いですね。

会社もがんばってね???
| OKAR | 2008/01/11 9:05 AM |
「田園」に限らず、みんなが知ってる超有名曲はやっぱり怖いです。自分が演奏する立場だったとしたら、やっぱりどんな指揮者で演奏するときも何か一言二言言いたいことがあると思うんですよね。しかし演奏者ならまだ評論家でいられるかも知れませんが、指揮者は演奏者を巻き込む行為者でなければならないので、資料は理論武装の材料であると同時に、そこから自分の音楽を見つけるインスピレーションの源でもあるのです。

ちなみに、デビュゥはまだですから。5月までお待ちくださいね。

会社はですね、これから3月まで一年中で一番忙しいんですよ、これが…はぁ〜

| ほーほ | 2008/01/11 9:57 PM |
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