夏休みの(?)自由研究:コンビニのドーナツについて
 えー、今年の夏休みももう終わりで、来週からは新学期です。私は夏休みの宿題では工作がいっちばん苦手で嫌いでしたが、自由研究も何をやろうか決めるまではけっこう苦しみましたね。というわけで、私の今年の夏休みの自由研究はこれだ!お子様の自由研究がまだできてなくてピンチ!という方、パクってもいいよ(笑)。

 さて、今年に入ってからコンビニのドーナツにはまっております。コンビニ各社それぞれにいろいろな種類のドーナツを売っていますが、私がはまっているのは「オールドファッションドーナツ」という、基本的には粉と砂糖、牛乳、卵の練り粉(ドウ:dough)をリング状にして油で揚げた後、リングの半分にチョコレートをかけたもので、ふわふわももちもちもせずやや固くて重い食感の、その名のとおり昔の手作り風のドーナツです。価格はコンビニによって税込100円(本体93円)だったり税込108円(本体100円)だったりします。
 私は幼少の頃、おそらくは母の嫁入り道具であったと思われる1950年代の家庭料理書を耽読していましたが、その料理書によるとリング状のドーナツを作るには、練り粉を絞り袋に入れて台紙の上にリング上に絞り、それを台紙ごと揚げるのだそうで、揚がったドーナツは自然に台紙から外れるのだとか。この技法が発見される前のドーナツは、おそらく練り粉をスプーンですくって油の中に投入してじっくり揚げた、もったりとした垢抜けない食べ物だったのでしょう。最初にこの技法を考えてドーナツをリング状にした人は偉かったね!

 さて、私がこのオールドファッションドーナツにはまった今年の3月の段階では、コンビニ大手ではローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスの各社がこのタイプのドーナツを商っており、セブンイレブンでは取り扱っていませんでした(少なくとも私の主な立ち回り先であるつくば市・土浦市・阿見町ではそうでした)。
 ところでこの3社のドーナツはそれぞれプライベートブランドとして販売されていますが、実は外見も味もほぼ同じで、袋から出したら最後、ほぼ見分けがつきません。そこで製造者を確認してみると、何とこれらは全て日本を代表する大手パンメーカーの山崎製パンの製品だったのです。そりゃ外見も味も似るわけだ。

<写真は今年3月に近所のコンビニで販売されていたコンビニ各社のオールドファッションドーナツ。上段左がファミマ、上段右がローソン、下段がサンクスの商品。なお後述のとおり現在はこれらの形態では販売されていません。>

 チェーンストアのブライベートブランドの商品は、基本的にチェーンストア側で仕様書を書いてメーカーに製造を委託するわけですが、このドーナツの場合は山崎側がイニシアティブを取ったのだろうか、とにかく酷似しております、お互いに。もっともこの点に関してはドーナツ大手のミスタードーナツの商品を先行形態としてフォローしているのではないかという指摘もあるのですが、私はこれまで54年余の生涯で2回(3回かも?)しかミスドに行ったことがないので、今回はミスド商品は比較対象外とさせていただきます。
 もっともお互いに酷似しているとはいえ、そこはプライベートブランドで、細か〜く見ると実は全く同じではないのです。今年の3月時点での各社の製品の仕様は次のとおりでした。

ローソン「オールドファッションドーナツ(チョコ)」:税込100円 392Kcal
ファミリーマート「オールドファッションドーナツ(チョコ)」:税込108円 495Kcal
サークルKサンクス「オールドファッションドーナツ(ミルクチョコ)」:税込108円 492Kcal

 ふぅむ、税込8円の価格差が熱量の違いとなって表れておりますね。確かに唯一税込100円のローソンの商品は若干小ぶりな感じです。しかも同じ税込108円の製品でもファミマのとサンクスのとはこれまたカロリーが微妙に違っているという・・・脂肪は1gで9Kcalなので、ファミマとサンクスのカロリー差3Kcalって、たとえば揚げ油の切れ具合とかチョココーティングの滴が垂れるか垂れないか程度のことで簡単にバラつくであろう、いわば誤差の範囲ではないかとも思うのですが、そこはお互い譲れないのかな?(笑) 製造を請け負う山崎側にしても、100円用ラインと108円用ラインの2本で済むのと、392Kcal用ライン・492Kcal用ライン・495Kcal用ラインの3本必要なのとでは、設備投資額も減価償却額もものすごく違ってくるんですけど・・・。
 しかも後述するとおりこの3社のドーナツは後日包装や販売形態がそれぞれ変更されるのですが、その際にファミマの商品は何と袋に表示されている熱量が495Kcalから494Kcalに変わっているではありませんか!「なんじゃこりゃー!」ですよ。1Kcalってどないのもんやねん!(爆)

<右写真はファミマの袋裏面の新旧比較。上段が旧(今年3月時点)、下段が新(今年8月時点)。赤丸で囲ったとおりカロリーが1Kcal下がっています。よく見ると他の数値も微妙に異なっており、原材料の配合を見なおしたっぽい感じ。なるほど、たとえ数Kcalの違いでも各社ごとに譲れないわけだ。>


 
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| 飲み食い、料理 | 19:14 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
茨城地酒まつり in 花やしき 2014
 連休前の週末の夕方、閉園後の遊園地で茨城県内各地の地酒をお弁当やあんこうどぶ汁とともに楽しむという、酒好きにとってはこたえられないイベント「茨城地酒まつり in 花やしき2014」に参加しました。普段はなかなか飲む機会のない銘柄のお酒を堪能しました。

<写真は参加者に配られた物品。左から参加蔵と出品酒等を掲載したパンフレット、地酒の300ml瓶1本(銘柄はお任せ)、浅草花やしきのA4クリアファイル、布製トートバッグ、試飲用の猪口です。なおこの他に当日会場で配られる「あんこうどぶ汁」と「茨城をたべよう弁当」の引換券も配られました。>

茨城地酒まつり in 花やしき2014
日時:2014年10月10日(金) 18:30から20:30
場所:浅草花やしき(東京都台東区)
参加蔵:28

 このイベントは茨城県酒造組合が催したもので、参加蔵と出品酒を紹介したパンフレットの最初の「ご挨拶」がこのイベントの趣旨をよく説明しているので転載します。

いばらきの酒

ご挨拶

ようこそ、茨城地酒まつり in 花やしき 2014 へ

私たち茨城県酒造組合は
関東地方でもっとも多い46醸の酒蔵が
首都圏に隣接しながら、大自然に恵まれている茨城において
個性あふれる酒造りを行っております。

しかしながら、茨城の日本酒・酒蔵の認知度はもう一歩の感があり
知る人ぞ知る存在と言わざるを得ない状況であります。

そのような中、この他県に勝るとも劣らない茨城の酒を
少しでも多くの方に知っていただき、
その美味しさを味わっていただくイベントが
この「茨城地酒まつり in 花やしき」です。

本日は28醸の蔵元が
各蔵自慢の酒を手に集まっております。
ご参加の皆様には、蔵元達と語らいながら
茨城の酒に合う茨城の食を思う存分お楽しみいただき、
茨城ファンになっていただけますよう
心からお願い申し上げます。

今後とも、個性豊かで誠実な蔵元の造る茨城の酒を
どうぞよろしくお願い申し上げます。

茨城県酒造組合
 
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| 飲み食い、料理 | 11:35 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
今年のアイス〜「ムース」(ロイヤル食品工業)〜
ムース 表 一昨年のホームランバープレミアム、昨年のガリガリ君コーンポタージュ味に続く今年の夏の冷菓はコレで決まりかな?

 先日拙宅の最寄のコンビニにぶらりと立ち寄り、何気なくアイスのケースをのぞいたら、おや?やさしいピンクと白基調の、細長くて平たい見慣れぬ商品が!
 ただ見慣れないばかりでなくキャッチがそそります。曰く「給食でおなじみの」、曰く「九州発」、曰く「とけない不思議なアイスです。」と。これらの断片的な情報を総合すると、アイスのくせに「とけない」と主張するこの不思議な食品は九州地方の給食で提供されていて、現地の子供たちにはすっかりおなじみということになりますが、そもそもアイスなのにとけないだって???これはお買い上げ即断即決ぅ!

ムース 裏<上の写真と左の写真は一見同じもののようですが、よく見ると右端の部分が違います。上が表、下が裏…いや実はどちらが表でどちらが裏かよくわかりませんが、いずれにしても表裏一体の関係にある写真であります。>
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| 飲み食い、料理 | 20:09 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
『御膳本草』のろくじう再考−シリーズ六条豆腐 宿題やったぞ編

 このブログの読者の中には、今年の6月から7月にかけての六条(六條・鹿茸)豆腐についての連載をお読みくださった方もいらっしゃるでしょう。「シリーズ六条豆腐」と銘打って、本編5編(うち本土編3、沖縄編2)と補遺2編にわたって、今ではマイナーな存在になっている六条豆腐という食品を、歴史的展開と地理的広がりのタテ・ヨコ2面から追いかけてみたものでした・・・と書くと、何だかスケールの大きなロマンあふれる雄編のようですが、中味は史料と論文の切り貼りで、大したものではありません。しかも沖縄にあった2種の「るくじゅう」(紅型の型彫りの際の下敷きに使われるものと、豆腐を生のまま軽く発酵させて焼いて食べるもの)の系統・成立について、一度は仮説らしきものを立てながら、その後に見た『御膳本草』という史料の内容のためにその仮説モドキが揺らいでしまい、「これは宿題として預らせていただき」と、結局は尻切れトンボに終わっています。
 その後この問題を時間をとって考えることはありませんでしたが、何となく頭の片隅には引っ掛かっていたのです。そしてある日「お、これは!」と気づきました。上記の2種のるくじゅうと『御膳本草』所収の「ろくじう」をひっくるめて、もう一度仮説にまとめ直せるのではないかと思えてきたのです。宿題をいつまでも伸ばしてないで、早く終わらせて遊びに行きたいもんね(笑)。

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| 飲み食い、料理 | 00:42 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
コノスルのゲヴュルツトラミナー
コノスルのゲヴュルトラミナー 以前アルザスのワインが好きなことを書きましたが、そのときにも書いたとおり、アルザスのワインは飲食店にも酒屋さんにもスーパーやデパートの酒売り場にもなかなか置いてなくて、あっても値段が高いのが難点。でもね、先日ちょっといいものを見つけましたよ。チリのワイナリー コノスル Cono Sur のゲヴュルツトラミナー Gewürtztraminer です。
 ゲヴュルツトラミナーはリースリングと並んでアルザスワインによく用いられるブドウ品種で、果皮はリースリングが緑色なのに対して甲州のように赤くなり、できるワインも黄緑がかったリースリングに比べて黄色が強く香りも複雑です。またコノスルは自転車を描いたラベルの比較的低価格のワインでおなじみのワイナリーですが、この価格帯の主力品種のカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)やシャルドネ(白)に留まらず、さまざまな品種のヴァライエタルワイン(ブドウ品種別のワイン)を作っています。しかも価格がリーズナブルで、今回買ったゲヴュルツトラミナーも1本910円とアルザスワインの1/3のお値段でした。
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| 飲み食い、料理 | 10:37 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
シリーズ六条豆腐 - 補遺2 『御膳本草』

生文研年報 先日このシリーズの補遺1に書いたとおり、「るくじゅう」が塩で締め堅めたものだという記述を『大琉球料理帖』で見てしまって以来、その記述の根拠となった『御膳本草』の原文を確認したくてたまりません。幸い7月16日(月・海の日)に時間が空いたので、埼玉県比企郡にある国立女性教育会館(東武東上線「武蔵嵐山(むさしらんざん)」駅から徒歩12分)の資料室に出かけました。事前調査によると、ここに『御膳本草』の翻刻とその索引を掲載したノートルダム清心女子大学生活文化研究所年報第1輯、第2輯が収蔵されていて、しかも私のような市井の物好きの一見さんでも閲覧が容易みたいなのです。

<これを見るために2時間半も電車に揺られてここまでやってきたのだよ!ノートルダム清心女子大学生活文化研究所年報第1輯、第2輯。『御膳本草』の翻刻本文と比較校訂表が第1輯に、索引が第2輯に、それぞれ収められている。>

 国立女性教育会館についてはまた改めて書くとして、さっそく翻刻された『御膳本草』の原文を確認すると、そこにはこうありました。

四十三 一 ろくじうハ 豆腐乾(タウフカン)也豆腐の性と同し けれともしほを入りせめかためまたハこはきになるゆへ脾胃に入りて化しかたし冷食尤忌むへし別て諸病に是禁止すへし

 原文に句読を打ち漢字を当てなどして読みやすくし、合わせて現代語訳をつけると、次のようになります。

四十三 一 「ろくじう」は豆腐乾(タウフカン)也。豆腐の性と同じけれども塩を入りせめ固め、又は硬(こは)きになるゆへ、脾胃に入りて化し難し。冷食尤も忌むべし。別(わけ)て諸病に是禁止すべし。
現代語訳:「ろくじゅう」は豆腐乾(とうふかん)である。豆腐の性質と同じだが、塩を入れて固め、また硬くなるので消化がよくない。冷たいまま食べるのは最もよくない。特に何か病気にかかっているときには食べてはいけない。


御膳本草のろくじう<上掲の原文のあるページ。「ろくじう」は25裏、つまり底本の25枚目の裏に書かれているわけですが、本文の「・・・豆腐の性と同じ」と「けれともしほを入り・・・」の間にあるかぎかっこが表と裏の間を示しているので、正確には「・・・豆腐の性と同じ」までは25枚目の表に、「けれともしほを入り・・・」以下が25枚目の裏に書かれているということになります。字の右にバッテンが付いているのは、底本の中城本と校訂に用いた末吉本で異同がある字で、校訂表を見ると「入り」は末吉本では「入」、「またハ」は「又ハ」、「是禁止」は「是を禁止」となっているとのこと。いずれも内容には影響ありません。>

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| 飲み食い、料理 | 00:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
シリーズ六条豆腐 - 補遺1 『大琉球料理帖』
 沖縄のルクジューについての続報です。沖縄のルクジューには 1) 豆腐を茶色く堅くなるまで乾燥させて紅型の型紙を彫る際の下敷に使うルクジュー(以下「ルクジュー」と書きます)と 2) 豆腐を軽く発酵させた食品であるルクジュー(以下「るくじゅう」と書きます) の二種類があります。私がこの二種類のルクジューについて、

1) 本土の六條(六条豆腐:豆腐に塩をまぶし茶色くカチカチに堅くなるまで乾燥させた保存食品)の組織が密で刃物の傷が残りにくく、刃を自由に動かす障害となる繊維もない等の性質に着目した工人によって、まず紅型の下敷として沖縄に移入され、その時点で刃物の錆を防ぐため無塩化された。
2) その後、下敷としての「ルクジュー」用の豆腐を無塩のまま比較的高温多湿の気候化で乾燥させる工程で起きる発酵が、「豆腐よう」のような豆腐の発酵製品に対する嗜好を持つ人々に受け入れられ、食品として賞味されるようになった。これを図式にすると次のようになる。
本土の六條       紅型用の「ルクジュー」   食用の「るくじゅう」
有塩・乾燥・食用  →   無塩・乾燥・非食用  →   無塩・発酵・食用

という仮説を立てたことは以前ブログに書きました(詳しくはこちら)。

 ところで、食品としての「るくじゅう」について調べていた時に『御膳本草』(ごぜんほんぞう)という史料に行き当たりました。『御膳本草』は王命により中国の北京で学んで帰国した渡嘉敷親雲上通寛(とかしき・ぺーちん・つうかん:親雲上(ぺーちん)は琉球王国の氏族の称号の一つ)が1832年に著した食医学書です。聞くところによると本書には食材ごとにその性質や料理法が記されていて、その中に「るくじゅう」もあるらしい。これは見たい!と思いましたが、残念なことにこの史料は例の『古事類苑』や『群書類従』にも採られておらず、出版されたものはわずかに二つしか見当たりません。
 その一つは當間清弘編の和装本で、1964年に私家版のような形で首里で出版されたもの。原文そのままではなく読みやすくわかりやすくリライトしてあります。もう一つはノートルダム清心女子大学の生活文化研究所年報第1輯(1987)に「翻刻史料 琉球国食療書『御膳本草』(付 校訂比較表)」(横山學)として収載されたもので、これは原文をそのとおり活字にしたものと思われます。このうち當間版は沖縄県立図書館と沖縄県内の古書店にあることはわかりましたが、国立国会図書館にもないようで、1万数千円払って沖縄県内の古書店から取り寄せない限り本土で見ることは難しそう。一方のノートルダム清心女子大生文研年報なら筑波大学図書館にもある・・・のですが、残念なことに第7輯以降しかなく、しかも第1輯から持っている公共図書館・大学図書館は関東地方には少ないのです。

※しかし今回この件を調べていて感じたのですが、大学図書館って基本的に内向きで、私みたいな学外の一見さんには冷たいのね〜。もちろん大学にもよりますが、基本的に学外者へのサービスは手薄で、入館すら難しいところもあります。そこへいくとわが筑波大学図書館なんて、サンダル履きでぷらっと行ってカウンターで住所・氏名・連絡先だけ書けば閲覧し放題、学外からでも図書館内でも蔵書・資料検索し放題、コピーだって所定の用紙に資料名と当該ページを書いてボックスに入れれば(有料で)取り放題ですよ。しかもほぼ全面開架だし、私のような在野の物好きの知識欲を満たすのには非常に具合がよろしい。このことは塀も門も持たない開かれた大学の図書館として、大いに誇っていいことだと思う(これは私がOBだから特別扱いを受けているわけではなくて、学外者に対して一律にそうなのです。何か然るべき手続きをしてOB用のカードを作れば、閲覧だけでなく貸し出しを受けたり他の図書館との相互利用サービスが使えたりするようですが、私は面倒でその手続きをしてないので、いつもただの通りすがりの者として利用してます)。

 閑話休題、そんなわけで『御膳本草』を見るのは時間・手間・お金がかかりそうなので、その時には参照しませんでした。ところがその後、この『御膳本草』に基づいて料理を再現したという『大琉球料理帖』(高木凛 2009 新潮社(とんぼの本))の存在を知り、職場近くの阿見町立図書館にあることがわかったので、ある日仕事帰りに図書館に立ち寄ってぱらぱらとページをめくって見ると、・・・おおっ、何と衝撃の記述が!

『大琉球料理帖』<『大琉球料理帖』の表紙。「衝撃の記述」の衝撃があまりに強かったので、結局買っちゃいました。>

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| 飲み食い、料理 | 22:28 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
シリーズ六条豆腐 - 5(完) 尚順男爵の天下の珍味(沖縄編・下)
前回で沖縄には2種類のルクジューがあったことがわかりました。それは

1) 紅型(びんがた)の型を彫るときの下敷に使うルクジュー。製法・性状は本土の六条豆腐に酷似しているが、製造工程で塩を加えない。
2) 豆腐を切って一晩空気にさらし、軽い発酵を起こさせたものを焼いて食べる「るくじゅう」。本土の六条豆腐とは共通点がないが、私は紅型用のルクジューの製造工程から食用に分化したものと考えている。

の2種類です。
 このうち 2)の「るくじゅう」に関してさらに資料を探したところ、究極の「るくじゅう」とでも言うべき尤物(ゆうぶつ)に出会いました。それは琉球王国最後の王尚泰(しょう・たい)の四男で男爵であった尚順(しょう・じゅん 1873-1945)の著作「鷺泉随筆(一) 豆腐の礼讃」(1938年発表)に見える「イタミ六十(るくじゅう)」というものです。尚順は琉球新報、沖縄銀行の創立者でありまた貴族院議員としても活躍、さらに博学多識の趣味人、食通としても知られ、その邸宅(そこに住む当人も)は「松山御殿(まちやまうどぅん)」と呼ばれていました。なお鷺泉(ろせん)は彼の号です。

(以下引用)
 先ず豆腐で作る珍味の中では、第一豆腐を発酵させて種々の調理に用いるのが主位であるが、本朝の豆腐料理には、私の調べた範囲では此発酵味を利用して作る料理はない。然し支那と沖縄では古くから盛んに作られているのである。(中略)沖縄で此発酵した豆腐で作った調理の中に「イタミ六十」というのがあり、又此を豚の油で揚てからりとして、塩煎餅の様なものに「干六十揚」というのがある。古くは御昼の弁当によく使い、此が上手下手は随分食通の評判にもなって上手の家には此「六十揚」を所望して押しかけたものである。此は殊の外(ことのほか)食欲を増進させるので、酒の妻にも此「揚六十」は愛重されたものである。次には「イタミ六十」と申して老人などが多く嗜んだものであるが、此がうまく熟した時の味といったら、真に天下の美味と申しても差支えないのである。又茶受にも宜しく、粥と一緒に喰ったら外のものはどんな物でも欲しくない味覚を起こすのである。
 まだ一つ珍品がある。それは前記の「イタミ豆腐」を以て作る琉球料理の「チャンプル」だが、調理には普通のチャンプルを作るのとは何等変りはないが、只少し炒り過ぎると思う位がよい。此豆腐の実際理想的に熟した場合なら、これ又中山(ちゅうざん)第一、否世界第一と云ってはずかしからぬ珍味である。
 以上は豆腐の真価に対する一、二の例を述べたに過ぎないが、扨(さて)六ヶ敷(むつかしき)のものは豆腐を発酵させる加減にして此は文章で説明出来ない事もないけれども、矢張り実際で経験するのが早道と思う。(中略)後日真に礼讃者が多く出た時に又精しく書く事にしよう。
 実は此から九月頃までは此珍味を製造する好時季なるに因り殊に此稿を物した。
(『月刊琉球』昭和十三年六月)
(以上引用終了)
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| 飲み食い、料理 | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
シリーズ六条豆腐 - 4 2種類のルクジュー(沖縄編・上)
 さて、『料理物語』と『古事類苑』『豆腐集説』に見られる六条豆腐の歴史的な姿は前回総括したとおりですが、先月に紅型(びんがた)の型彫りの下敷に使われるルクジューの存在を知って調べているうちに、六条豆腐が沖縄で独自の展開を遂げていたらしいことがわかってきました。これは私にとってうれしい驚きであったので、資料を引用しながらやや詳しく見ていくことにしましょう。

 まずは紅型の型を彫る際の下敷きとして使われるルクジューについて。ネット上にもさまざまな情報がありますが、ここでは沖縄県立博物館の紀要第4号(1978年3月)に掲載された渡名喜 明氏の論文「紅型の型紙と型彫り―城間栄喜ノートをもとにして―」の記述から、ルクジューに関連する部分を紹介します。論文のサブタイトルに名前が挙がっている城間栄喜(しろま・えいき)氏は、琉球王府の紅型三宗家の一つである城間家の継承者で、琉球処分や戦争等のために途絶えそうになった紅型を復興した大恩人・大功労者。また「城間栄喜ノート」とは沖縄県立博物館が1977年度から始めた城間栄喜氏からの聞き書きの記録のことで、その内容は琉球王府時代の伝統と戦後復興後の状況の両方に通じた当事者から直接聞き取ったものであり、貴重な一次資料であると言えましょう。なお沖縄県立博物館の紀要・年報・総合調査報告書等はホームページで公開されています。今回ありがたく利用させていただきました。
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| 飲み食い、料理 | 01:59 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
シリーズ六条豆腐 - 3 『豆腐集説』と歴史上の六条豆腐総括
 前回(第2回)は『翻刻 江戸時代料理本集成』に収められた『料理物語』原文に当たって、その製法が今日まで伝わっているのと違っていることを発見したことを書きました。
 さて、この『翻刻 江戸時代料理本集成』のある棚をつらつら眺めていると、『とうふの本』(阿部孤柳・辻重光 昭和49 柴田書店)という本が目につきました。取り出してパラパラめくってみると、中に次のように書かれているのを発見しました。

六浄(條)豆腐(鹿茸豆腐) 『豆腐集説』(四八ページ参照)によると、六浄豆腐の製法には二種があり、一法は水に塩を入れて煮た中に豆腐を適当の大きさに切って入れた後、煮て串にさして乾燥させたもので、これは『料理物語』に書かれている古い方法だという。別の方法は、切った豆腐の周りに塩を塗って晴天の日に干し、その後稲藁で編んで吊して乾燥させる方法で、『和漢三才図会』『料理指南抄』などに出ている方法である。薄く削って精進だし汁を造るのに用いられたが、味がよいので削ったものを酒の肴などにすることもあった。
 昔はその名が示すように京都の六條あたりで造っていたらしいが、現在では需要が殆どないので造らなくなり、わずかに片倉貞美氏(山形県西村山郡西川町岩根沢三八二)が家伝として製造している。これは豆腐に塩を塗って干し、五個を一連として藁で編んで吊ったものである。(pp.55-56)

 おっと、これは参った。私が今見たばかりの『料理物語』や、『古事類苑』にも引かれていた『和漢三才図会』等を織り交ぜて、古法から現在の製法までコンパクトにうまくまとまっているではありませんか。Nothing new under the sun とはよく言ったもので、やはり何事にも先達はいるものです。
 ちなみに上の引用文の見出しの(鹿茸豆腐)の「鹿茸(ろくじょう)」とは、鹿の袋角(生えかわったばかりのまだ柔らかい角)を切って乾燥させたもので、漢方薬の材料の一つ。『古事類苑』に引かれた『雍州府志』の記事には「(鹿茸豆腐とは)其の始めの形色鹿茸に似る。故に之を名とす」と言ってます。また「京都の六條あたりで造っていたらしいが」という記述は、やはり『古事類苑』に引く『書言字考節用集』の「蓋し京師(京都の別称)六條邊りの人始めて制する所、故に名づく」や、『雍州府志』の「一説に六條邊りの人始めて之を製す。六條と鹿茸、倭語相同じ。故に彼此互いに之を称す」という記事あたりを参考にしたものでしょう。このうち『雍州府志』という史料は1682年から1686年にかけて刊行された当時の京都の地誌で、『古事類苑』に引かれている記事はその「六 土産」(「みやげ」じゃなくて文字通り「土地の産物」)の部にあるものなので、六條が発祥の地かどうかはともかく、当時の京都で六条豆腐を作っていたことは間違いないでしょう。また「片倉貞美氏」とは例の「六浄豆腐」製造元「六浄本舗」の当時のご当主でありましょう。
 いやー、何だかこれで六条豆腐の歴史は一気にかたづいた感じになってしまいました。
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| 飲み食い、料理 | 06:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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