昼の休憩前の最後のお届けをセットしていると
傍らの木からシジュウカラの声が聞こえてきた。
ああ、いるなと思いながら作業を続けていると
こんどはコツコツコツコツという
ノックのような音が聞こえてきた。
何だろうと葉陰をすかして見てみると
シジュウカラが自分の止まっている枝を
小さなくちばしで叩いている。
枝をつかんだ両足を少し広げて
足と足との間を4、5回叩くと
頭を上げて周囲を見回し
また叩き始める。
その音には思いがけない重みがあり
脳震盪でも起こしゃしないかと気遣われるほど
叩く姿にも力がこもっている。
その姿にはただの遊びやいたずらではない
真剣さと熱が感じられた。
こちらから向こうが見えているのだから
向こうからもこちらが見えているはずだし
私の作業の音も向こうへ聞こえているはずだけれども
それでもシジュウカラはこちらを憚る様子もなく
一心に枝を叩き続けているし
私もそれ以上はシジュウカラの様子をうかがわず
お届けする品物のセットを続けている。
お互いに邪魔もしないし遠慮もしないと
言わず語らずのうちに申し合わせができている。
それはシジュウカラと私の頭上に
私たち持たざる者どもを厳酷に統(す)べる
かの戒律が確然と掲げられているからなのだ。
曰く「働かざる者 食うべからず」。
おいシジュウカラ
うまい昼飯を食おうな!