リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く:3.サロメ
 本ブログへの書き込みが1か月半ほど空いてしまいました。これには訳がありまして、DECCA SOUND MONO YEARS 1944-1956 という全53枚のボックスセットを1日1枚以上聞いて感想をアップするという、いささか無謀なプロジェクトを Facebook の方でやっていたせいなのです。このプロジェクト、最初のうちは聞いた感想をちょろっと短く書いただけでしたが、自分が持っているCDやLPとほとんどダブらないという理由でこのセットを買っただけあって、聞き進むにつれて知らない作曲家や知らない作品や知らない演奏家が次々と出てきて、結局はけっこうな調べ物をするはめになりました。そのせっかく調べて書いたものが Facebook の中に埋もれてしまうのも悔しいので、いずれ改めてこちらのブログに転載するつもりです。

 さて、本題です。本ブログ上で粛々と(笑)進められている「リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く」プロジェクト。ドイツ・グラモフォンから発売されたボックスセット RICHARD STRAUSS COMPLETE OPERAS に収められたリヒャルトのオペラ全15作を作曲順に聞いて行こうというこのプロジェクト(ベースノートはこちら)が第1作「グントラム」でスタートしたのが昨年の3月のこと。そして昨年の11月に第2作の「火の危機(火の消えた街)」を聞きました。この2作はリヒャルトのオペラの中で上演されたり聞かれたりすることがあまり多くないもので、歌詞の対訳が入手できず(ボックスセットのブックレットにはそれぞれのオペラの「あらすじ」しか載っていない)、さらにどういう作品かを調べたりするのに手間取り、間が空いてしまいました。第3作の「サロメ」以降はよく知られた作品も多く歌詞対訳の入手も易しいため、プロジェクトの加速が期待されるのですが、今回も前回から半年近く空いてしまった・・・いけませんね。今後改善に努めます。

 それでは今回聞いた「サロメ」のプロフィールをCDのブックレットによって紹介しましょう。

サロメ Salome Op,54
オスカー・ワイルドの同名の劇による一幕の楽劇 Musikdrama
台本:オスカー・ワイルド Oscar Wilde
   ヘトヴィヒ・ラハマン Hedwig Lachmann のドイツ語訳による
作曲年:1903-1905年
初演:1905年12月9日 ドレスデン宮廷劇場 エルンスト・フォン・シュフ指揮
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リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く:2.火の危機(火の消えた街)
 本ブログ上で「リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く」というプロジェクトが進行中、というか、長ーい中断をはさんで時々思い出したようにぽっつらぽっつらと進んでおります(まだ2回目ですが)。リヒャルトのオペラ全15作を作曲順に聞いていくというこのプロジェクト、ベースノートはこちらで、第1回の「グントラム」はこちらです。で、今回は第2回「火の危機(火の消えた街) Feuersnot」なのですが、ベースノートのアップが今年の3月3日、第1回の「グントラム」のアップが3月7日、そして第2回の今回が11月ですよ。この半年に1作、1年で2作というペースだと、15作品聞くのにはなんと7年半かかるという長期プロジェクトになる計算・・・。これからそんなにブログ続けてられるのか?という自分へのツッコミも含めて、もうちょっとペース上げたいところではあります。
 しかし前回の「グントラム」と今回の「火の危機」の2作品については少々事情がありまして、まず両方ともマイナーな作品であるために歌詞対訳が手に入らなかったことに加えて、「グントラム」については録音がまさかの改訂・短縮版だった上、リヒャルトのワグネリアンからの転向に関する関連資料を探したり英語読んだりしたために時間がかかったし、今回の「火の危機」についても、実は関連資料を探したり英語読んだりしなければならないトピックがあったのです。「サロメ」とか「エレクトラ」といった世間一般に知れ渡っている作品ならおそらくこんなことしなくて済むだろうから、ペース上がると思います。

<写真は「火の危機」のCD。紙ジャケットは他の作品と同じく簡潔なものですが、CDの方にはドイツ・グラモフォンの黄色いマークの下にオレンジ色の帯状の部分があり、白抜きの字で Deutschlandradio Kultur と表示してあります。ドイツ・グラモフォンの自前の録音ではなくRIAS(Rundfunk im Amerikanischen Sektor:アメリカ軍占領地区放送局の略称。東西ドイツ併合後は Deutschlandradio に改組)が1978年に録音したものを使用しているためこの表示があります。>
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リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く:1.グントラム
グントラムCD と解説書  先日購入したリヒャルト・シュトラウスのオペラ全集。手始めに彼の最初のオペラ「グントラム」を聞きました。ところがこの「グントラム」、本件のベースノートに書いた通り libretto(台本)が容易に入手できません。しかもこのオペラ、ただ聞いてみた感じでは正直それほど大した作品ではないように感じるのですが、少なくともリヒャルト・シュトラウス自身にとってはなかなか重要な意味を持つ作品のようで、関連資料を読むのにも時間がかかったという・・・まあ読んだ資料が英語だったせいもありますが。

<写真はCDセットの解説書と「グントラム」のCD。CDそのものは紙のジャケットに1枚ずつぽんと入っているだけで、ジャケットにも大した情報は載っていません。まあ1枚あたり300円ですからあまり贅沢は言えない。CD番号が19と20になっているのは、この全集の配列がベースノートに書いた通り「オペラのタイトル中の初出の名詞のアルファベット順」になっているせいです。>

 とりあえず作品の大まかなプロフィールをまとめておきましょう。

グントラム 作品25
全三幕のオペラ
台本:リヒャルト・シュトラウス(作曲者自身)
作曲年:1892(または1888)-1893(初版)
    1934-1939(改訂版)
初演:1894年5月10日 ヴァイマール宮廷歌劇場 作曲者自身の指揮(初版)
   1940年10月29日 ヴァイマール パウル・ジクスト指揮(改訂版)

 上記はCDセット付属の解説書とIMSLPのデータによっています。ここで気になるのはIMSLPのデータで1934年から1939年にかけて改訂が行われたとされている点ですが、改訂の具体的な内容についてはIMSLPにも情報はなく、CDセットの解説書に至っては改訂されたという記述そのものがありません。幸いIMSLPには1903年出版、すなわち改訂前の初稿に基づくスコア(Adolf Fürstner, Berlin)がアップされているので、これを眺めながらCDを聞いてみました。言うまでもなく初見でシュトラウスのスコアを読み取ってCDとの差異を細かく拾い出すなんてことは到底私の手には負えませんが、それでもこのCDの演奏が初版のスコアどおりでないことははっきりわかりました。
 たとえば第一幕では湖に身を投げようとしてグントラムに救われたフライヒルトとグントラムがその直後に交わす会話、第二幕では序曲の後半からそれに続く道化師とロベルトとの会話(スコアではここにリュートが使われている)、グントラムが自らの宗教的心情を切々と訴えて満座を感動させる場面、誤ってロベルトを殺してしまったグントラムが捕えられた後のフライヒルトのモノローグの後半、第三幕では修道僧の聖歌の後半とそれに続くグントラムのモノローグ、結社の規則に従うよう説得するフリートホルトとグントラムの会話のかなりの部分、それに続くフライヒルトに別れを告げるグントラムのモノローグの前半など、舞台上のアクションが少なく歌ばかり延々と続いているであろう箇所を中心に、それぞれ数十小節以上に及ぶ大規模なカットがいくつも加えられていて、第二幕などは目の子ですが半分近くまで刈り込まれているのではないかと思われるほどです。
 また一部のオーケストレーションが変更されている(最もはっきりわかるのは第三幕冒頭の修道僧の聖歌の伴奏のうちティンパニのロール以外の削除)ことも確認できました。歌劇の上演においては特定のナンバーなど一部がカットされることはままありますが、本CDで行われているカットは全体で優に数百小節に及ぶと思われる大規模なものですし、オーケストレーションの変更も作曲者以外にはなかなかやりにくいことであろうと思われます。今のところ私はこの大規模なカットと一部のオーケストレーション変更が1934年から1939年にかけて行われた改訂の内容だと断定できる資料は持っていませんが、少なくとも今回聞いた演奏が1894年初演・1903年出版の初版どおりの演奏ではないことは確かです。この辺の事情はCDまたは解説書にクレジットしておくべきなんじゃないでしょうかね、Deutsche Grammophonさん!

 ・・・しかし初版のスコアと演奏を見比べながら聞く作業はおそろしく疲れました。「あッ今飛んだ!どこどこ、次どこッ!?」って、予告もなくしかも何回もですからねぇ。飛んだことはすぐわかりますが、問題は飛んだ先を見つけることで、かろうじて聞き取った歌詞やオーケストラの特徴的な音型をもとにPC上に映したIMSLPのPDFファイルのスコアをマウスをぐりぐりしながら探す(もったいないのでプリントアウトはしていない)のですが、半日もこれやってると気力・体力とも消耗します。第三幕の最後の方は集中が切れ、一番最後のカットの飛んだ先なんてもうどうでもよくなっちゃって、あらかじめPC上のスコアをCDの最終トラックの始まる所(各トラックの冒頭の歌詞は解説書でわかるので)まで送っといて、音を聞きながら「あ、やっと来た来た♪」なんて具合で・・・はぁ・・・
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| リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集を聞く | 16:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集CD
オペラ全集ボックス  実は先日ちょっと大きな買い物をしました。リヒャルト・シュトラウスのオペラ全集のCDです。写真のようにごろっとしたボックスケースに全168ページの解説(英・独・仏)と紙ジャケット入りのCDが33枚(うち1枚はオーケストラ伴奏による歌曲集)のセットで、これが何と1万円をほんの少し切るお値段(新品ですよ)。CD1枚当たり約300円です。「ダナエの愛 Die Liebe der Danae」(クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル 1952年のザルツブルク音楽祭のライブ録音)と「無口な女 Die schweigsame Frau」(カール・ベーム指揮ウィーン・フィル 1959年のザルツブルク音楽祭のライブ録音)だけはモノラル、それ以外は全てステレオで、ドイツ・グラモフォンとデッカ(一部ドイツ放送、ソニー・ミュージック、ワーナー・クラシック・ミュージック)が擁する原盤からのチョイスです。CDには1から33まで通し番号が振ってあるので、その順に収録曲と指揮者などを紹介しますと;

1.  Arabella アラベラ 作品79
   ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイエルン国立管弦楽団(1963ライブ)
2.  Ariadne auf Naxos ナクソス島のアリアドネ 作品60
   ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデン(2000)
3.  Capriccio カプリチオ 作品85
   カール・ベーム指揮バイエルン放送交響楽団(1971)
4.  Daphne ダフネ 作品82
   カール・ベーム指揮ウィーン交響楽団(1964ライブ)
5.  Elaktra エレクトラ 作品58
   ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1967)
6.  Feuersnot 火の危機(火の消えた町) 作品50
   エーリヒ・ラインスドルフ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団(1978ライブ)
7.  Die Frau ohne Schatten 影のない女 作品65
   ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1989、1991)
8.  Die schweigsame Frau 無口な女 作品80
   カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1959ライブ)
9.  Friedenstag 平和の日(講和記念日) 作品81
   ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1999)
10. Guntram グントラム 作品25
   イヴ・ケラー指揮ハンガリー国立管弦楽団(1984)
11. Die ägyptische Helena エジプトのヘレナ 作品75(1928年版)
   アンタル・ドラティ指揮デトロイト交響楽団(1979)
12. Intermezzo インテルメッツォ 作品72
   ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン放送交響楽団(1980)
13. Die Liebe der Danae ダナエの愛 作品83
   クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1952ライブ)
14. Der Rosenkavalier ばらの騎士 作品59
   ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1968)
15. Salome サロメ 作品54
   ジュゼッペ・シノーポリ指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団(1990)
附録 オーケストラ伴奏による歌曲集(「四つの最後の歌」他全10曲)
   ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
   クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1982)

  演奏者の顔ぶれや録音年代を見わたしてみると、一見して1、2世代前の大物たちの録音を揃えたなという感じがします。しかしベームは2つともライブ(しかもまだ元気な頃の)だし、カイルベルトのライブも楽しみだし、そうかドラティって歌劇の指揮もしてたんだといった発見もあり、減価償却の終わった有名どころの指揮者の録音をお手軽に並べただけの企画モノという感じはあまりしません。

 ところで、このオペラの配列順は一体どういうものでしょうか。作品番号からわかるとおり明らかに作曲順ではありませんし、タイトルのABC順かというとそうでもないところがあって、実はけっこう悩んでしまいました。シュトラウスのオペラを聞くという目的からすると全く本質的でない問題のようにも見えますが、ひょっとしたら「寿司は玉(ぎょく)から」的な、ツウのお勧めの聞き順の提案なのではないか、とか思ったりしてですね(笑)。
 いろいろ悩んだ結果、この配列は「タイトル中に最初に出てくる名詞のABC順」ではないか、と結論するに至りました。ドイツ語を学んだ方はご存じのとおり、ドイツ語では文中の名詞は必ず大文字で書き始めます。このCDセットのタイトルは全部大文字で書かれているのでぱっと見ではわかりにくかったのですが、上のようにタイトルの初めと名詞だけを大文字で書いて、その大文字だけを拾って見ていくと「タイトル中の初出の名詞のABC順」になっているらしいのがわかります(タイトルの頭の Die や Der も大文字で始まってますが、これらは冠詞で名詞ではないので無視してくださいね)。なーんだ、「ツウはアラベラから」とかじゃないんだ・・・
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